BMW モトラッドがTikTokにアカウント開設 バイクメーカー初の試み

スマートフォンの利用が当たり前になった現在、インターネットは情報の収集だけでなく生活の一部として無くてはならないものになりました。もちろんどの企業もホームページを構えるようになり、BMWをはじめとしたグローバル自動車メーカーは国ごとに工夫を凝らしたコンテンツを充実させるなど、見ているだけで面白くなるような内容になっています。そして、今やホームページだけではなくSNSマーケティングの一部としてYouTubeやInstagram、Twitterといった人気のSNSでは企業公式アカウントとしてユニークに情報を発信している企業も少なくありません。なかでも、注目を集めているのが2020年4月20日にTikTokの公式アカウント開設を発表したBMWモトラッドです。

加速する“バイク離れ”とリターンライダー

バイクメーカーで初となTikTok公式アカウント開設をしたと発表したBMWモトラッドですが、なぜTikTokに進出したのでしょうか。BMWモトラッドは以前からTwitterやInstagram、YouTubeなどのSNSで公式アカウントを開設し、様々な情報を発信してきました。例えば、新しく販売されるバイクの情報やイベント情報を中心にしながら公式ホームページでは発信しにくいライトな情報も載せることでBMWモトラッドのファンからも人気があります。

このようにSNSを使用して既存のファンをさらに魅了するようなコンテンツを発信することで、購買や企業イメージ向上につながっている一方、依然とした課題も残っていました。それこそがBMWモトラッドをはじめとしたバイクメーカー全体が抱える“若者のバイク離れ”という現象です。テレビやネットメディアを中心に“クルマ離れ”という言葉を耳にしたことのある人も多いと思いますが、同様にバイクメーカーも“バイク離れ”に危機感を抱いています。

図1:一般社団法人 日本自動車工業会「2019年度 二輪車市場動向調査」より抜粋(http://www.jama.or.jp/lib/invest_analysis/pdf/2019Motorcycle.pdf)

上図1は、平成9年度から平成19年度までの二輪車購入者の年代別グラフとなっており、10代~70代(無回答含む)購入者の増減の推移が確認できます。グラフを見てすぐに分かるのが若年層といわれる10代~30代における購入者の少なさです。一方で全年代を通して40代以上、とりわけ50代が中心となってバイクを購入していることが分かります。これは第一次バイクブームといわれる1970年代、レーサーレプリカブームが訪れた1980年代を経験してきた世代が定年退職などを期に再びバイクに乗る、いわゆる“リターンライダー”と呼ばれる人たちが増加してきたことが影響しています。

このことから2010年以降を第三次バイクブームと呼ぶ人たちも増えてきており、各メーカーもリターンライダーに向けたブランド展開に力をいれているのです。このリターンライダーの影響は販売台数だけではなく、二輪免許にも大きな影響を及ぼしています。

図2:警察庁交通局運転免許課「運転免許統計 令和元年版」より抜粋(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo/r01/r01_main.pdf)

上図2のグラフは大型二輪と普通二輪免許の取得における指定教習所卒業者数を年別に表したものです。現在では大型二輪と普通二輪免許を取得する際は、いわゆる“一発試験”と呼ばれる免許証試験場のみでの取得が難しいため、指定教習所で実技試験を免除して取得することが一般的になっています。そのため、若い世代でバイクを購入する人が減少していれば指定教習所卒業者数も減少するはずですが、図2では多少の減少はみられるものの大きな変化はありません。これは前述したリターンライダーと呼ばれる人たちが再び教習所へ通い、免許を取得しなおしていることが影響しているのです。

とくに、1970年代~1980年代は規制緩和などの免許制度の改正が相次いだ年でもあり、免許制度が安定している現在に再取得というケースも増えています。また、免許を持っていても運転のブランクがあるために教習所へ通いなおす人や大型二輪免許の取得を目指す人などが増えているため、若い世代のバイク購入者数が減少しながらも指定教習所卒業者数は大きな減少がみられないのです。

若い世代への認知を高める

画像引用:(https://www.tiktok.com/@bmwmotorrad?

リターンライダーの影響で第三次バイクブームが到来しているとも言われている一方で、若い世代のバイク離れを止めなければ明るい未来はない。そう危惧しているバイクメーカーは多く、新たなバイクシーンを開拓しようと日々努力を続けています。その中で冒頭にあったとおりBMWモトラッドはTikTokというプラットフォームに目をつけ、ここから若い世代へのブランディングを図っていこうとしているのです。そもそもTikTokって何?という人に向けて簡単に説明すると、数十秒という短い動画を多くの人と共有して楽しむというアプリであり、10代を中心に世界的なブームとなっているのです。

BMWモトラッドは、TikTokのアクティブユーザーであるZ世代(16歳~24歳)に向けて他のSNSとは異なるアプローチで新たなファン獲得を目指しています。例えば、BMWの公式チャンネルを見てみると分かるようにTwitterやFacebookなどは公式ホームページに準じた情報を発信していますが、TikTokではバイクの面白さそのものが伝わるようなコンテンツ制作を目指しています。このような各SNSの特性を活かしたプロモーション戦略は重要であり、バイクメーカーでは初となるTikTok進出を果たしたBMWモトラッドがどれだけ若い世代へ効果的にバイクの魅力を伝えることができるか各方面から注目を集めているのです。

また、このTikTokによるプロモーションのユーザーリアクションを集計することで、若い世代がもつ価値化などを探ることもBMWモトラッドは重要視しています。リターンライダーと呼ばれている50代を中心とした世代に対するプロモーション戦略というものにはある程度の知見がある一方で、若い世代に対するブランド認知や売れるバイクの設計などには情報が不足しているという一面があります。とくにZ世代を中心とする若い世代はデジタルネイティブであり、直接的に機械を整備し乗り回すというある種アナログなコンテンツに触れる機会が少ないのです。そのため、従来通りのプロモーション戦略が通用せずに購入者数減少へとつながっているため、今回のTikTokによるブランディングで少しでも若い世代がバイクに熱中することにつながるようなモノを手にしたいとBMWモトラッドは考えています。

TikTokをキッカケに新たな仲間をつくる

画像引用:https://www.bmw-motorrad.jp

ここまでTikTokに進出したBMWモトラッドの戦略などについて触れてきましたが、もう一つBMWモトラッドがTikTok公式アカウントを開設した狙いがあります。それこそが、TikTokを通してファンが新たなファンを生み出すという“つながり”への期待です。40代以上のバイクファンの中には職場やサークルなどで若い世代と交流する機会がある人も多いのではないでしょうか。そのような場面においてTikTokでBMWモトラッドの動画を勧めたり、あるいは見たことがある若者へバイクの面白さを伝えたりする役割をファンに期待しているのです。また、多くのBMWモトラッドファンもTikTokの動画を見ることで、新たな面白さや魅力を発見する良い機会にもなるかもしれません。

このように単純なSNSマーケティングの一つに見えるBMWモトラッドのTikTok進出ですが、実はその裏にはバイク業界全体への危機感や、若者へ魅力を伝えたいという切実な思いがあります。すでにバイクの魅力に取りつかれているという人もBMWモトラッドのTikTokをチェックして、ぜひ周りの若い世代の人たちにバイクの面白さや魅力を伝えるなど、新たなコンテンツを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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