いよいよ登場!NEW 1シリーズはFFになってどう進化したか

BMWの1シリーズがFF(前輪駆動)になって生まれ変わりました。居住空間や使い勝手、気になる走りはFF化によりどう変わったのかを解説します。あわせて日本では発売されていないバリエーション、1シリーズセダンについても紹介していきます。

特異な存在だった先代1シリーズ

画像引用:https://www.bmw.com.cn/

これまでの1シリーズは、FR(後輪駆動)方式を採用した、非常に特異なパッケージングの2BOXカーでした。このクラスのスタンダードとされているVWゴルフと比較してみるとそれがよく分かります。全長×全幅×全高はゴルフが4,265㎜×1,800㎜×1,480㎜に対し旧1シリーズは4,340㎜×1,765㎜×1,440㎜と若干の差はありますがほぼ同じサイズと言って良いでしょう。もっとも異なるのは前輪からハンドルまでの距離でゴルフは約890㎜なのに対し、旧1シリーズは1,050㎜もあります。これは旧1シリーズのエンジン搭載場所が旧3シリーズと共通化されており、3Lの直列6気筒エンジンも搭載可能な長さとなっていることによるものです。

さらにエンジンを縦にレイアウトし、その後ろにトランスミッションがくるFR方式を採用していることから全長に対しエンジンルームの占める割合が高くなっているのです。当然、その分は居住空間が割を食うことになり、後席と荷室に割り当てられるスペースは狭くなってしまいます。

少しでも後席のスペースを捻出するため、シートクッションを薄くして座る位置を下げることによりヘッドルームを稼ぐなどの工夫を行っていますが、後輪を駆動するためのプロペラシャフトを通すためのフロアトンネルが足元に大きく張り出しているので正直狭い印象は拭えませんでした。いったんリアシートに座ってしまえば座り心地自体は快適だったものの、FF車のライバルに比べると広さの点で見劣りしてしまうのは仕方がないでしょう。

大幅に居住空間を改善した新型1シリーズ

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駆動方式にFFを採用することで新型1シリーズの居住空間は大幅に改善されました。居住空間の広さに影響するホイールベースが20㎜短縮されているにもかかわらずとくにリアシートでは膝回りが33㎜、頭上回りが19㎜、肘回りで13㎜拡大している上、センタートンネルが低くなっているので数値以上に広くなった印象を受けます。

全幅が拡大されたことから、室内幅も前席で1400㎜から1442㎜まで広くなりました。その上、先代1シリーズではトランスミッション部分が室内に食い込んでいたため右ハンドル仕様では左脚のももが圧迫されるような感じもありましたが、新型ではセンターコンソール部分がタイトになったので、余裕が生まれています。

ヘッドルームの余裕も充分で、オプションのスライド式パノラマサンルーフ仕様を選んでも後席のヘッドルームは19㎜拡大しています。

荷室も容量が360Lから380Lに拡大されており、さらに後席シートバックを倒せば最大1200Lにまで拡大します。また先代1シリーズのような荷室横部分の張り出しが少なく、スクエアで使いやすい形状となったので使いやすい印象を受けます。

なお、後席シートバックは標準では60:40でオプションを選ぶと40:20:40の3分割となります。
助手席を倒して長物を搭載した時に、後席に2人乗れるか1人しか乗れないかは結構大きな違いとなるので、選んでおいたほうが良いオプションの1つです。

とはいえ実用一辺倒ではなく、リアウィンドウを寝かせたデザインを採用することで、クーペ的でスポーティな印象を持たせることに成功しています。

コンパクトでスポーティなBMWは欲しいけれど後席にゲストを乗せる機会が多いから…と迷っていた方もこれなら安心ですね。

もちろん、単に広くなっただけではなく安全性能も大幅に向上しました。厳しい審査で知られる安全性試験、Euro NCAPで最高評価となる5つ星を早々と獲得しています。新型1シリーズの購入を検討している方にとってまさに朗報と言えるのではないでしょうか。

FFになっても「駆け抜ける歓び」は健在!

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1シリーズがFFになると聞いて、多くのBMWファンが心配したのは新型になっても「駆け抜ける歓び」は健在なのか、ということではないでしょうか。これまでBMWで導入されたFF車はX1や2シリーズアクティブツアラーといったSUVやミニバンでしたし、先代1シリーズが走りの良さで定評があっただけにそういった心配ももっともでしょう。

しかし、BMWはMINIで20年以上、FFでのスポーティモデルの在り方を研究し続けてきました。BMW MINIの走りについてFFなので物足らない、といった評価をみることはまずありません。何しろ最高出力306PS/5000rpm、最大トルク450N・m:1750-4500rpmを発生させるエンジンを搭載したJCWといったハイパフォーマンスモデルまで成立させているほどですから。

それでもFFだとステアリングフィールが・・・と不安に思うユーザーに向けてBMWでは「駆け抜ける歓び」を実現するためにさまざまな走りのための電子デバイスを開発し、新型1シリーズに搭載しています。ARB(アクチュエーター連続ホイールスリップ制限機構)もその1つです。FF車は前輪が操舵と駆動を兼ねることから直進性が高く、もちろんそれはメリットではあるのですが、コーナリングの際には曲がりにくい(アンダーステア)特性があります。ARBの働きを単純化して説明すると、コーナリング中に内側のタイヤにかかる駆動力を弱め、外側を強めるよう調整することでスムーズなコーナリングを実現します。もちろん実際のARBの働きはもっと複雑で繊細なもので、BMWではEV車「i3s」のセンシング技術をフィードバックすることで実現できたと説明しています。

これまでも1シリーズは居住空間の面でハンデがありながら、そのスポーティな運動性能でライバルと差別化を図ってきました。初代及び2代目を合わせ、約15年の間に全世界で240万台以上を販売してきた実績はその証でしょう。もしFF化により居住空間を拡大できても、これまでの1シリーズのアイデンティティであったスポーティな走りが実現できなければ、ユーザーの期待を裏切ってしまうことになります。一方で平凡なFF2ボックスになると、いかにBMWのブランド名をもってしても実力派ぞろいのこのクラスでは埋没してしまう危険性をはらんでいます。

このように1シリーズのFFへの採用は非常にリスキーな挑戦にも思えましたが、新型1シリーズの出来栄えを見る限り、ファンの心配は杞憂に終わったようです。

ハイパフォーマンスバージョンもスタンバイ

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新型1シリーズのトップグレードとして設定されているのはもちろんハイパフォーマンスバージョンの「M」です。

そのM135i xDriveには2L直噴ターボエンジンが搭載されますが、その出力/最大トルクは306ps/450N・mと現在BMWにラインナップされている2Lエンジンとしては最高のパフォーマンスを発揮する仕様となっています。

この大出力を受け止めるために駆動方式には4WDが、トランスミッションには8速のステップ式ATが採用されました。最高速度は250km/hですが、これはリミッターが効いているためで、リミッターを解除すれば270km/hにまで到達すると言われています。0-100km/h加速もわずか4.8秒!とスポーツカー並みのタイムを叩き出します。

もちろん単にエンジンが強力なだけではなく、BMWらしい奥深い操縦性も健在です。225/40R18というワイドなタイヤで強力なパワーを受け止め、各種電子デバイスを駆使しシャープなハンドリングを実現しており、BMWならではのスポーティさが感じられる仕上がりとなっています。

BMWが手掛けるFFのスポーツモデルというとBMW MINIを思い起こす方も多いかもしれませんが、試乗した専門家によるインプレッションを読むとMINIのいわゆるゴーカートフィーリングとはかなり味つけは異なるようです。ある程度のロールは許しながら、それでもノーズは軽快に方向を変えていくというBMW流で、「BMWはやはりFR」という固定観念が今や過去のものとなったことを実感させられます。

1シリーズにはセダンもある?

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日本では1シリーズといえば初代から5ドアハッチバックのみがデリバリーされていましたが、海外ではそれ以外のバリエーションもリリースされているのをご存知でしょうか。

今回紹介するのは、お隣の中国で販売されている4ドアのセダンです。サイズは全長×全幅×全高=4456×1803×1446㎜となっており、3シリーズ(4715×1825×1430㎜)と比べると一回りコンパクトで、とくに約30㎝も短いボディは日本の都市でも取り回しが良さそうです。サイズ的には先々代の3シリーズ(E90型)が4525×1815×1425㎜と近く、E90型も取り回しの良さが日本でも評判でした。

室内空間を確保するために車高は3シリーズよりも高くなっていますが、エクステリアデザインは寸詰まり感もなく良くまとまっており、エントリーモデルであることを感じさせません。それでいてトランク部分を高くしたハイデッキデザインを採用したことによりトランク容量は425Lを確保と、高い実用性も兼ね備えています。

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新型1シリーズとプラットフォームを共通化した4ドアクーペスタイルの2シリーズが国内市場に投入されることは決定しました。そちらと若干キャラクターが被る部分もあるためか1シリーズセダンは今のところ日本への導入予定はないようです。

世界的なSUVブームで4ドアセダンはやや影が薄くなっている感は否めませんが、セダンはやはりクルマの基本。軽量で走りもよく、荷室を別にすることで居住空間の静粛性や快適性を高められるなど多くのメリットがあり、セダンならではの長所も少なくありません。3シリーズのセダンは好きだけれどちょっとボディが大きいかな、と感じる方にこの1シリーズセダンは魅力的に感じられるのではないでしょうか。

国産車でもこのサイズのセダンは年々少なくなっている上、シニア向けといったイメージのクルマが多いので、若々しいイメージの1シリーズセダンはニーズがあるように思えるのですが、皆さまはどう思われますか?

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