いよいよ新型4シリーズ登場!BMWのクーペはいかに進化したか?

新型の2ドアクーペ、4シリーズがいよいよ日本でもリリースされました。3シリーズから独立して「4」が車名に与えられてから二代目となる新型4シリーズですが、SUVやミニバンが主流となった市場においても、その美しいスタイリングによる独特の存在感でクルマ好きの間での注目度は高いようです。これまでの3シリーズクーペ及び4シリーズのヒストリーを振り返りながらBMWクーペの進化について解説していきます。

初代3シリーズクーペの登場は1992年

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3シリーズ初のクーペボディが登場したのは3シリーズとしては3代目となるE36のときでした。デビューは4ドアセダンに遅れること2年の1992年です。

初代(E21)は2ドア仕様のみでしたし、2代目(E30)にも2ドアボディは用意されていましたが、これらはいずれも4ドアのセダンから単純にリアドアを省略した2ドアセダンでした。

E36で登場したクーペボディも一見すると4ドアセダンからリアドアを省いただけのように見えますが、ルーフラインが異なり、流麗な印象を受けます。実はボディパネルはほとんどクーペのための専用設計となっています。 フロントウインドウの角度をセダンよりも寝かせることで車高は45mmも低くなっていました。

クーペについてはベースとなったセダンのイメージを引き継ぎながらもより低く精悍な印象に仕上げるというBMWの手法は、この初代3シリーズクーペの時点で完成していたと言えるでしょう。

この初代クーペにはドアを開くと少しだけ窓が下がるという機構が採用されていました。 2ドアのクルマは4ドアよりもドアが長く、重くなることに加えてBMWはボディの気密性が高かったことからドアの開閉に力が必用になります。そこでドアの開閉時に窓を少し下げてやることで内外の圧力差を小さくするのが目的でした。この機構は好評で他メーカーの2ドアクーペでも採用する例が相次ぎました。

国内モデルでは希少な5MTモデル、318isがラインナップされ、マニュアル派の運転好きの方から注目を集めました。もっともベーシックな直列4気筒1.8Lのエンジン(後期型は1.9Lにバージョンアップ)は出力こそ140PSとパワフルとまでは言えないもののBMWのエンジンらしくスムーズな吹き上がりで5MTとのマッチングも最高でした。直列6気筒モデルに比べてエンジンが軽くしかもフロントミッドシップに搭載されていたことから、ワインディングロードではまるでライトウェイトスポーツのような身のこなしを魅せました。

このE36のクーペが支持を得て以降、2000年に登場したE46、2006年に登場したE92も引き続き3シリーズのボディバリエーションの1つとしてクーペが定着していったのです。

「4シリーズ」として新たに誕生、バリエーションも拡大した現行型

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2013年登場の現行型(F32)で、ついに3シリーズから独立してBMWのクーペを表す偶数名称の「4シリーズ」が与えられました。新たなシリーズ名の誕生と同時にバリエーションが増えたことでも話題となりました。

まず2014年にカブリオレがデビューします。こちらは従来からあった3シリーズカブリオレの後継車にあたり、幌ではなくリトラクタブル式のメタルトップが採用されています。メタルトップルーフは耐候性に優れ静粛性が高い反面、幌に比べて収納のためのスペースを取ることやルーフをコンパクトにするためにフロントウインドウが長く、思ったほど開放感がないといったデメリットがありました。4シリーズカブリオレではルーフを3分割して畳むという凝った機構を取り入れることでこの問題を解決しています。時速18km/h以下であれば走行中でも操作可能、開閉にかかる時間はわずか20秒となっています。メタルトップルーフのネックといえるトランクも220L〜370Lと、余裕とまでは言えないものの4人で一泊旅行に行ける程度の容量は確保しています。

全く新しいバリエーションが「グランクーペ」です。これはクーペ同様に低いフォルムながらリアドアを備えた新しいスタイルの4ドアクーペです。ユニークなのはリアウインドウとトランクリッドが一体となって跳ね上がるハッチバック式を採用している点です。流麗なフォルムを崩さずに実用性も確保するグッドアイデアと言えるのではないでしょうか。これにより荷室容量は通常時480L、最大時1300Lと3シリーズツーリング(先代は495L/最大時1500L)にはさすがに及ばないもののいざとなればワゴン並の積載量を確保しているのは驚きです。

とはいえ、やはり4シリーズといえばイメージリーダーとなるのは伝統の2ドアクーペです。プラットフォームはセダンと共有でホイールベースは2,810mmと同一ですが、全長は15mm長く、全高は65mmも低くなっています。さらに全幅はこれまでの3シリーズクーペがセダンと同じだったのと異なり、25mm幅広くなっておりロー&ワイドが強調され、そのシルエットの美しさに磨きがかかりました。

新型4シリーズの特徴は大型化した縦型グリル…だけじゃない!

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2020年6月、BMWが新型4シリーズをインターネット上で発表した時、誰もがその大型化されたキドニーグリルに驚かされました。もちろん、その前年の2019年10月にフランクフルトモーターショー2019に出品された4シリーズクーペのコンセプトカー、「コンセプト4」で同様のフロントグリルデザインはアナウンスされていました。しかしそれはあくまでコンセプトカーでショー用のデザインと多くの方が思っていたところに、ほぼそのままのフロントデザインでリリースされたことが驚きにつながったのでしょう。

BMWではこの新型4シリーズの大型化したキドニーグリルを戦前のBMW車からインスパイアされたものと説明しています。他のプレミアムカーも2000年代に入りインパクトを狙いグリルを大型化する傾向がありますが、ややもすると下品な印象になりがちです。それに比べて新型4シリーズのフロントマスクは非常に大胆なデザインでありながらもクラシカルで繊細な印象があるのはそういった歴史的なバックグラウンドがあるからかもしれません。

大型化したキドニーグリルに注目が集まりがちですが、全体のプロポーションはよりダイナミックでセダンの3シリーズとの差別化に成功しています。とくにクーペデザインのハイライトとも言うべきなだらかなルーフラインと絞り込まれたコンパクトなキャビン、その下の力強いリアフェンダーのふくらみの組み合わせは見るものを振り返らせる魅力にあふれています。これなら確かに3シリーズのバリエーションというよりも別の車種と言ったほうが正確ですね。

ちなみにボディサイズは3シリーズが全長4,715×全幅1,825×全高1,440mm、ホイールベースは2,850mmなのに対し、新型4シリーズでは全長4,755×全幅1,850×全高1,395mm、ホイールベースは2,850mmと旧型と比較してもさらに長く、幅広く、そしてぐっと低くなり大型のフロントグリルと併せてインパクトのあるルックスを手に入れました。

もちろん新型4シリーズの魅力はデザインだけではありません。搭載されるエンジンは2Lの直列4気筒ガソリンターボ(184PS/300Nm)、そしてBMWファン待望の3L直列6気筒ガソリンターボ(387PS/500Nm)となっています。

新型4シリーズがクーペ人気を復活させる?

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ドイツでは10月から新型4シリーズのデリバリーが始まりましたが、日本市場でも2020年10月16日に販売を開始しました。

最近、世界的なSUVブームでそちらにばかり注目が集まりがちです。アウトドアでの使い勝手も良く、荷物も大量に搭載できてファッショナブルと、人気があるのも分かります。しかしそんな市場にも少しずつ変化が見られます。それはSUVの中でも低く流麗なルーフラインを持つクーペSUVの台頭です。もともとはBMWのX6が登場して想定外に市場からの反応があったことから各社が追随したものですが、実用性だけではなく、人とはちょっと違ったスタイリッシュなクルマに乗りたい、というニーズは確実に存在します。

新型4シリーズはそのエレガントなデザインだけでも市場の欲求に答えられるだけのポテンシャルを秘めています。さらにアグレッシブなハイパフォーマンスバージョンのM4の登場も控えています。2ドアクーペの人気が復活するとしたら、新型4シリーズはその起爆剤となり得るのではないでしょうか。今後の動向に注目していきたいですね。

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