バイクにもクルーズコントロールの時代到来 BMWモトラッドの描く未来

晴れた日に海岸線を颯爽に飛ばしたり、ワインディングロードを集団でツーリングしたりとバイクでの楽しみは非常に多いと思います。一方で、長時間のツーリングで疲労しているときや高速道路で渋滞しているときなどのシーンでは、ヒヤリハットを起こした経験があるというライダーの方も多いのではないでしょうか。

実は、これを解消してくれるかもしれない最新機能がBMWモトラッドから発表されました。それは、「アクティブ・クルーズ・コントロール」という名前で、普段からクルマを運転しているという人なら耳にしたことがあるかもしれません。

この最新機能がBMWモトラッドのバイクに導入されるということで、どのような機能になっているのか。そして、BMWモトラッドが力を入れている安全性能についても紹介していきたいと思います。

事故に遭遇することも多いバイク

最新機能である「アクティブ・クルーズ・コントロール」を紹介する前に、まずはバイクの事故と傾向について見ていきましょう。

図1.都内・全国の交通事故死者数構成率
画像引用:https://www.keishicho.metro.tokyo.jp

BMWモトラッドが「アクティブ・クルーズ・コントロール」を導入する理由の1つとして、バイクによる事故を減らすことが挙げられます。図1は、警視庁が発表している「都内・全国の交通事故死者数構成率」に関する円グラフです。交通事故における死者数の割合として、都内は21.1%、全国は15.9%と他のものと比較すると低いように見えます。しかし、重要なのは各母数の大きさです。

歩行者と四輪車が半数以上を占めているのは、日本において四輪車を利用している人が多いこと。そして、死者が出る事故には歩行者が絡んだケースが多いという理由が挙げられます。一方で、ライダースーツを着ておらず安全性能が高い訳ではない自転車と二輪車を比較してみると、大きな差はありません。

つまり、二輪車はライダースーツを着て、二輪車そのものの安全性能が高まっていても死者が出るような大きな事故に遭遇する機会が高いということなのです。では、なぜバイクでは重大な事故に遭遇する機会が高くなるのでしょうか。

そこには、いくつかの理由がありますが、理由として最も挙げられるのは安全装備をしっかりと着用していないということです。

左図2. ヘルメット形状別着用者の割合 右図3. あごひもの結束状況
画像引用:https://www.keishicho.metro.tokyo.jp

左図は、ヘルメットの形状別の割合を示しています。バイクのヘルメットにはいくつかの形状が存在しますが、一番しっかりと頭部を保護してくれるフルフェイス型ヘルメットの着用率は33.8%となっています。一番多いのは、ジェット型ヘルメットで35.8%、なんと半キャップ型ヘルメットの着用率も30.1%と高い割合です。

理由としては、日常の買い物やちょっとした用事ではフルフェイス型ヘルメットを着用するのが面倒だという人も多く、どうしても排気量の大きいバイクに乗っているときしか着用しないという人もいるようです。

また、右図はあごひもの結束状況についてのグラフですが、70.1%が適正に結束しているということで最も高い割合を占めています。ただし、ゆるく結束、そもそも結束していないという人も3割いるということで、油断は禁物です。

一方で、より深刻なのが胸部プロテクターの着用率です。

図4. 年別プロテクター着用率
画像引用:https://www.keishicho.metro.tokyo.jp

図4は、年別の胸部プロテクター着用率を示しているグラフです。見てすぐ分かるように、令和元年の時点で8.4%と着用率は非常に低いです。平成19年時点で4.0%だったことを考慮すると倍加してはいるのですが、それでも増加率は低いことが分かります。

図5.胸部プロテクターを着用しない理由
画像引用:https://www.keishicho.metro.tokyo.jp

では、なぜ胸部プロテクターを着用しないのか。その理由を示しているのが図5になります。なんと半数が面倒だからという理由だけで着用をしていません。他にも、値段が高いことやプロテクターそのものを知らないというライダーもいるようです。では、胸部プロテクターやヘルメットは本当に必要なのでしょうか。

図6. 致命傷部位
画像引用:https://www.keishicho.metro.tokyo.jp

警視庁による図6を見ると、バイクによる事故で致命傷となる部位の半数以上が、頭部と胸部を原因としたものと分かります。したがって、安全装備をしっかりと装備していないライダーが多くいることが、重大・死亡事故の割合を引き上げている一要因となっていることからも、胸部プロテクターやヘルメットは必要だと分かります。

バイクに乗るときにはヘルメットと胸部プロテクターをしっかりと装備することで、事故にあったときのリスクの軽減ができることを覚えておきましょう。

BMWモトラッドのACCでバイクがより安全に

画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

バイク事故の理由を確認しましたが、安全装備以外にもバイク特有の事故リスクがあります。それは、四輪車と比べてスピードが出やすく、クルマのそばをすり抜けられるほど小型であるという点です。

実際にバイクを運転しているという人の中には、渋滞時や赤信号での停車時に四輪車の間をすり抜けたことがあるという人もいるのではないでしょうか。また、四輪車よりもスピードが出やすいために、ついつい前のクルマやバイクとの車間距離が短くなってしまうという人もいるでしょう。

実は、四輪車よりもスピードが出て自由が利くというメリットは、事故の原因にもつながりかねません。また、四輪車では安全装備で事故を未然に防ぐことができる一方で、バイクにはこういった事故につながる行動を未然に防ぐ安全装備を搭載しているものは少ないのです。

そこで、2020年6月にBMWモトラッドが満を持して発表したのが「アクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」です。アクティブ・クルーズ・コントロールとは、アクセルをコントロールすることでドライバーが設定した車速を一定に保つ機能のことで、最近ではアクセルだけでなくブレーキも自動でコントロールし、車間距離も保ってくれるアクティブ・クルーズ・コントロールも登場しています。

今回、BMWモトラッドが発表したアクティブ・クルーズ・コントロールは、ボッシュと共同で開発したものになります。どちらも四輪車におけるアシスタントシステムの知見を豊富に持つ企業で、バイクにおけるアクティブ・クルーズ・コントロールも最新機能を盛り込んだものとなっています。

手元のスイッチで車間距離を設定
画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

ライダーが設定した速度を保ちながらも、前車との車間距離を測定。車間距離が縮まると設定された距離になるよう速度を調整してくれます。この車間距離自体は、手元のスイッチで3段階に設定することができるため、走行しながらも状況に応じたものに変更することが可能です。また、ダイナミッククルーズコントロールを使用する場合は、この機能をオフにすることもできます。

ただし、車体前部のレーダーセンサーによって測定を行うも、移動中の車両のみに反応するようになっています。そのため、静止車両がある場合はライダー自身が介入してコントロールする必要があります。また、カーブする場合は傾斜角を検知し、自動でアクセルとブレーキのダイナミクスを制限してくれます。

上部に設定している車間距離が表示されている
画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

このような機能設定はTFTインストゥルメンタルパネルから操作が可能となっており、制御状態が常に表示されています。現時点では欧州仕様になっていますが、日本に導入される際はデフォルトの速度設定なども最適化されていることが予想されます。

まとめ

BMWモトラッドによって発表された「アクティブ・クルーズ・コントロール」は、バイクに搭載される安全装備としては高機能なものとなります。まだ、日本での導入は決定していませんが、これからの発表に期待することができます。とはいえ、バイクを運転する際にはしっかりと安全装備を普段から装着するなどの意識づけも大切です。ぜひ、今回のアクティブ・クルーズ・コントロールを楽しみに待ちながら、安全にバイクのある生活を楽しみましょう。

関連記事

ページ上部へ戻る