「BMW Z4」と新型スープラ 兄弟車の個性に迫る

「トヨタ自動車の新型『スープラ』と共通プラットフォームを持った開発を行う」という大号令を聞いた瞬間に、多くのカーマニアやBMWのファンが驚きや動揺を隠せなかったのではないでしょうか。本当に成し遂げられるのかと多くの人が考えていた間にも、BMWの開発拠点であるミュンヘンでは第三世代となる新型「BMW Z4」の開発が着々と進められていました。この開発の背景には両社の思惑があるところですが、何よりもドイツにおけるトヨタ自動車の開発拠点“Toyota Motorsport GmbH(トヨタ・モータースポーツ)”がケルンに位置していたことが寄与しているとも言われています。

モータースポーツファンならば、“TMG(トヨタ・モータースポーツの略称)”と聞くと「ル・マン24時間レース」での活躍に思いをはせるかもしれません。現在でも、トヨタ自動車のモータースポーツの最前線として“TOYOTA GAZOO Racing”を皮切りに、最先端の開発・製造拠点としての機能も有しています。
そんな”TMG”に目をつけたのが第三世代の新型「BMW Z4」開発への舵取りを迫られていたBMWでした。

第二世代の「BMW Z4」は2009年に販売されると、独自の高いデザイン性と直列6気筒のエンジンを積んだスポーティーさを兼ね備えた初代を超える人気となりました。
とくに、リトラクタブルハードトップ式ルーフを採用したことにより“クーペカブリオレ”と呼ばれるボディデザインに大きく変更しました。これにより、ロードスターモデルの操舵性とクーペモデルのラグジュアリーさを兼ね備えた第二世代「BMW Z4」は高い人気を誇り、次世代モデルの開発に世界中が期待していました。そこで、開発費の削減と技術の共有を大きな理由とし、新型「BMW Z4」と新型「トヨタ スープラ」は兄弟車として世界中の注目を集めながら誕生しました。

新型「BMW Z4」と新型「トヨタ スープラ」の違いに着目

画像引用:https://www.bmw.co.jp

兄弟車というと、見た目だけでなくマシンスペックにおいても多くの点で共通しているものと思っている人も多いのではないでしょうか。もちろん、今回の「BMW Z4」と「トヨタ スープラ」も多くの点で共通化されているものもありますが、実際のクルマを見てみると明らかに別の車種と分かるほど特徴が異なっているのです。まずは、その外観を見て分かるように、両者ともに個性のある別種のスタイリングとなっています。共通しているのは“ロングノーズ・ショートデッキ”と呼ばれる伝統的なボディスタイルのみと言っても過言ではありません。

新型「BMW Z4」と新型「トヨタ スープラ」を共通プラットフォームとして開発した理由の1つに、両車両がともに伝統的にFR車であるということが挙げられます。BMWではクルマ造りの信念ともいえる部分で、フロントエンジンと後輪駆動を持つFR車というレイアウト方式を長年に亘り採用し続けています。これは、BMWの本国であるドイツの地理的特性上、ワインディングロード(カーブコーナーが多い道)を日常的に快走できるという部分が重要視されていました。

現在では多くのクルマがコストパフォーマンスなどの面からFF方式を採用していますが、FR車はカーブコーナーでの走行においてはFF車を上回る操舵性をドライバーに提供してくれるのです。そのため、新型「BMW Z4」でもFR方式を採用することで走行性能を重視するというスタンスは崩さずに、伝統的で美しいボディスタイルとなりました。新型「トヨタ スープラ」ではルーフ部分においてハードトップを採用することで、コスト削減と剛性強化に貢献しています。

一方で新型「BMW Z4」は、あえて“ソフトトップ”を採用することにより、オープンカーとしてもクーペとしても楽しむことのできる一台に仕上げてきています。もちろん、オープン機構にすることで重量バランスが崩れることを懸念する人もいるかもしれませんが、BMWは走行性能への影響を最小限にとどめるよう設計することで新型「トヨタ スープラ」や前世代モデルとの差別化に成功しました。

大きな違いはインテリアにも

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ボディデザインが見る人を魅了するためのものなら、インテリアデザインはドライバーや同乗者を虜にするための重要な部分と言えるでしょう。とくに、日常的な使用においてはインテリアデザインが秀逸であればあるほど、愛着がわくだけでなく使い勝手という点で評価に繋がるからです。

外観と同様にインテリアデザインを見てみると、両車両の目指している着地点が大きく異なっているということを容易に認識できるのではないでしょうか。新型「トヨタ スープラ」が水平にメーターや操作機器を並べ、運転だけに集中できるような環境が整えられているのに対して、新型「BMW Z4」は外観と同調するように三次元的な動きのあるデザインになっています。走ることを主目的とした新型「トヨタ スープラ」、走りと優美さの両立を目指す新型「BMW Z4」の大きな違いが外観とインテリアの両方に顕著に表れているのです。

共通のエンジンはBMW製

外観とインテリアで大きな差別化がなされていた両車両ですが、エンジンは共通プラットフォームという部分が大きく寄与し“BMW製 3.0L直列6気筒ターボエンジン”が採用されています。前モデルの「トヨタ A80スープラ」が6気筒エンジンを採用していたこともあり、トヨタは独自の新型6気筒エンジンを開発するよりもBMW製のエンジンを流用することを選択しました。クルマにおけるエンジンというものが人間の心臓に例えられるように、一種のアイデンティティを持つパーツの一つとされてきました。

そこに、BMW製のエンジンを流用するという選択をしたトヨタの決断は重いものであったと言える一方で、BMWの技術力の高さが証明されたとも言えます。もちろん、両車両の特性に合うようにチューニングが施されているため、一概に同じ性能を発揮するとは言えませんが、基本的なスペックから乖離することもないために両車両の持つエンジンスペックは同等と評価できます。

速さだけではない、安定した走行性能

同じBMW製の6気筒ターボエンジンを積んでいる両車両ですが、その走行性能にも大きな味つけの違いが表れています。新型「トヨタ スープラ」は、ハードトップを採用した恩恵で高剛性の良さを存分に味わえるような走りとなっています。とくに、FR車らしい走り方を楽しむという点では新型「トヨタ スープラ」は前モデルに近く、峠を攻めながら走りたいというニーズを満たしてくれる味つけと言えます。もちろん、サーキットにおける走行も想定されているために、走行時の着座姿勢やホールド感は新型「BMW Z4」以上に感じられるようになっています。

一方で新型「BMW Z4」は、あらゆる場面において走りを楽しむことのできる味つけと言えるでしょう。FR車特有のカーブコーナーにおける“ピーキーな走り”というものを感じることはなく、ドライバーも安心して走ることができるという点を重要視しているようです。これは、BMWがFR車を安全に楽しんで走らせることを追求してきた、1つの集大成とも言える技術が反映されていると言っても過言ではありません。

BMWが提示するクルマの在り方

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新型「BMW Z4」と新型「トヨタ スープラ」の両車両は、共通プラットフォームを持っていますが全く異なるクルマの在り方を提示してきました。現代においても徹底した走りを追求したトヨタと走行性能と優美さの融合を追求したBMW。とくに、新型「BMW Z4」はBMWの高い技術力が応用されたエンジンとFR車における安定した走行性能を詰め込んだ一台となっています。新型「トヨタ スープラ」が気になっている人も、FR車に抵抗感がある人も、新型「BMW Z4」に乗って、BMWが提示する最新のクルマの在り方に触れてみてはいかがでしょうか。

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