最新型はここまで来た!歴代3シリーズで知るBMWインテリアの進化

現代のクルマは単に速くて快適なだけではなく、安全性や環境性能などさまざまな要求が課せられ、そのハードルは年々高くなっています。とくにインテリアについては、直接人が触れ合う部分であり、かつてのようにハンドルと計器類のみといったシンプルなものから、現在ではAIを活用した高度なものへと進化を遂げています。

今回は3シリーズの歴史を紐解きながらBMWインテリアの進化について解説していきます。

ハンドルは操舵を受け持つだけではなくなった

画像引用:https://www.bmw.co.jp

初代BMW3シリーズとなるE21(1975年-1983年)ですが、現在の眼で見るとインテリアはとてもシンプルです。ハンドルも細く繊細で、ホーンボタン以外のスイッチは見当たりません。ハンドル自体、簡単な作業で取り外すこともできたので、社外品に交換することも一般的でした。当時、モモやナルディといった海外ブランドの銘品に交換した方も多いのではないでしょうか。

状況が変わってくるのは3代目のE36(1990年-2000年)からです。E36のモデル途中からハンドルにSRSエアバッグが装備されることになって、一般のユーザーがハンドルを交換することは難しくなりました。SRSエアバッグが装備されるようになった当初はエアバッグ自体がかなり大きく、ハンドリングにも影響を与えると言われたほどでしたが、すぐに小型化がすすみ4代目E46(1998年-2007年)の頃には目立たない大きさになりました。

若いユーザーの方には信じられないかもしれませんが、2代目E30(1982年-1994年)の頃はパワーステアリングがオプション扱いのクルマも珍しくありませんでした。今よりもはるかにタイヤが細かったことや、3シリーズのように前輪が駆動を受け持たないFR方式のクルマも多く、パワーステアリングなしでも十分操作できたからです。パワーステアリングなしのダイレクトな操舵感を好む方も、この頃は少なくありませんでした。1980年代当時の中古車雑誌には、パワーステアリング、パワーウインドウ、そしてエアコンの3種類が装備されていれば「フル装備」と表示されていたほどです。

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パワーステアリングが当たり前になってハンドル自体の重量を気にしなくても良くなったことに加えてエアバッグも小型化されたことから、ハンドルに各種スイッチを置くスペースが生まれました。ハンドルから手を離さずに操作が可能なので、ひんぱんに使用するスイッチについてはハンドルに置くことが一般的になっていきます。5代目E90(2005年-2012年)の時代にはオーディオコントロールが、6代目F30(2012年-2019年)の時代にはアクティブ・クルーズ・コントロールのスイッチが追加されました。

新型3シリーズ(G20:2019年-)では基本的にはF30のレイアウトを踏襲し、ハンドルの右側にオーディオ関係やハンズフリー通話のスイッチが、左側にはクルーズ・コントロールなど走行関係のスイッチがまとめて置かれています。

今、話題の自動運転(ハンズフリー)は左側にある「MODE」スイッチで起動します。新型3シリーズのデビュー当時はまだハンズフリー走行が国内で認可されていなかったため、ディーラーで「このスイッチは何?」と疑問に思った方も多いとか(当然、押しても何も反応しません)。

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なお、ハンズフリーについては有償のアップデートプログラムも用意されています。デビューと同時に新型3シリーズを購入した方も最新のハンズフリー走行が使用可能になるので購入されたディーラーに一度相談されてみてはいかがでしょうか。

センターコンソールは変わった?いえ、思想は変わりません。

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初代3シリーズのセンターコンソールは空気吹き出し口、カーオーディオ、空調の操作パネルが整然とならぶ、見た目の豪華さやデザイン優先で人間工学を無視したようなデザインとは対極にあるシンプルなレイアウトでした。

新型3シリーズでは大型の液晶ディスプレイが目立つ位置に置かれたことで印象は大きく変わり、新世代のクルマであることを強烈にアピールしています。もし、初代3シリーズのオーナーがタイムスリップして新型3シリーズのコックピットに座ったなら、車ではなくSF映画の宇宙船のようだと感じるのではないでしょうか。

オーディオや空調の物理的なスイッチもこれまでどおり整然と並べられていますが、実際にそれらに触れる機会は少なくなるかもしれません。AIを活用したBMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントの導入により、スマート家電のように「OK,BMW」と話しかけるだけでクルマの設定やインフォメーションへのアクセスが可能となったからです。なお、この呼びかけ方は自由に設定できるので、「OK,BMW」がちょっと気恥ずかしい方も心配は無用です。

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この音声認識機能は非常に優秀で、例えば運転中に「ちょっと暑いな」とつぶやけば、即座に「エアコンの温度を何度下げますか」と応答してきます。もちろん、ナビの目的地設定も可能なので、走行中、いったんクルマを路肩に停めてからナビの画面をタッチして検索するような手間は不要になります。さらに、このシステムには学習機能が備えられているので、BMWのサーバーとつながることでどんどん成長していき、オーナーの通常の使用パターンから先回りして提案することまでできるそうです。

またBMWリモートサービスにより、ドアのロック/アンロックやヘッドライトの点灯、さらに3Dビュー用カメラによる上部からの静止画を見ることまで可能になりました。どんな場所に駐車したか、駐車した場所の周囲に何があるのかが画像で確認できるので、例えば郊外のアウトレットなど、広い駐車場で「どこにクルマを停めたっけ?」と、迷うこともなくなるでしょう。

このように、近年のAIの発達もあり、初代から最新型までの40年間における進化は驚くべきものがあります。しかし、それでも変わらない部分、そして変えるべきではない部分もしっかり残っています。それはセンターコンソール部分をドライバー側に向けて設置するレイアウトです。

またディスプレイ画面も運転席に座った状態でドライバーに向けられています。意外に思えるかもしれませんが、ディスプレイ画面は正面を向いて置かれているクルマがほとんどで、BMW以外ではあまり見かけません。

新型3シリーズでは短縮操作スイッチを使うことでスイッチの数をいたずらに増やすことなくすっきりとしたレイアウトに仕上げ、運転中に操作しやすいセンターコンソールを実現しています。誤操作を防止する細かな工夫がなされていますし、もちろん脇見運転の防止にもなることから安全面でも有効です。

目新しさやデザイン優先ではなく、あくまで運転するドライバーが中心、それがBMWのフィロソフィーなのでしょう。

日本でアナログから液晶へ、進化するメーターパネル

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新型3シリーズでドラスティックな進化を遂げたのがメーターパネルです。

80年代にはすでに国産車を中心にデジタル式のメーターも登場し、一時期はこれぞハイテク!ともてはやされた時期もありました。しかし、グラフィックがやや子どもっぽかったり、チープな印象だったりと、主流となることはありませんでした。当時最新だったデジタル表示のスピードメーターとバーグラフ式のタコメーターの組み合わせを見て、思わず「懐かしい!」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一方、BMWでは何よりも走行中の視認性を重視し、アナログ式大型のスピードメーターとタコメーターが並べる時代が長く続きました。

そして新型3シリーズではついにフルデジタルメーターパネルが採用されました。大型のスピードメーターとタコメーターが並べられるレイアウト自体は同じですが12.3インチの大画面で、タコメーターが反時計回りになったグラフィックも新鮮です。タコメーターが反時計回りになったのは単にデザインの新奇性を狙ったものではなく、中央に走行情報をグラフィック表示するためです。ここにナビのマップも表示されることから、前方から視線を移動させることなくナビゲーション情報を読み取ることが可能になりました。

さらにフロントウインドウに速度などの情報を表示するヘッドアップディスプレイも、投影面の拡大とグラフィックの改良によって、非常に見やすくなっています。これまでいわば一等地に置かれていたスピードメーターとタコメーターですが、必ずしもメーターパネル内に配置しなくても良い、そんな時代がいずれは来るのかもしれません。

アナログのスピードメーターとタコメーターが懐かしく思えることもありますが、より見やすく正確な表示をするという観点から考えればこの変化は必然なのでしょう。

ナビも進化する

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今や当然の装備となったナビですが、意外にも3シリーズでナビが標準装備されるようになったのは四代目E46からです。もともと道路網の整備が進み、ナビなしでもそれほど不便ではなかったドイツでは日本ほどカーナビが普及しておらず、後づけのポータブルナビ、それも地図表示ではなく矢印表示のみのシンプルなものが主流だったことも影響しているのでしょう。

この当時は2DINタイプのオーディオスペースに本体を収納し、別づけのディスプレイをダッシュボード上に設置していたため、一体感がなくやや後づけ感のある仕上がりでした。

ダッシュボード内にディスプレイをきれいに収める方式になったのは5代目E90の後期型(2008年~)からです。当時としてはワイドな8.8インチのワイドディスプレイのナビが標準装備となり、BMW i-Driveとの機能連携も図られました。

ディスプレイがさらに大型化するのに対応し、6代目F20ではインパネになだらかな傾斜をつけ、水平基調のデザインにすることで前面視界の圧迫感を軽減させ、やや低い位置にディスプレイを立てて置く方式に変更しました。この方式はクルマのインテリアデザインにおけるトレンドとなり、アウディA4やマツダ・アテンザなど、数多くのフォロワーを生みました。

新型3シリーズでは先代の思想をさらに推し進めた上、7シリーズに導入されたBMWオペレーティングシステム7.0を採用した「BMWライブコックピット」が全車に標準装備されました。タッチパネル方式にも対応した10.25インチのワイドタイプのコントロールディスプレイが装備され、ナビだけでなく、様々な機能へのアクセスも可能です。

さらにユニークなのはこのディスプレイにはカメラを使って動きを読み取る機能が設けられている点です。ディスプレイの前でジェスチャーを行うことで、電話への応答や音量の調整といった特定の機能を行うことが可能と、まるでトム・クルーズ主演のSF映画、「マイノリティ・レポート」を思わせるような未来感あふれる機能となっています。

BMWインテリアの進化はとまらない!

クルマのインテリアに取り入れられる技術は時代と共に変化し、とくに近年は新しいテクノロジーが次々に誕生しています。その中でBMWはドライバーに運転の楽しさを感じられるクルマづくりを目指し、常に新しい技術を取り入れて革新的なインテリアを生み出してきました。

自動運転に関するテクノロジーが発展することでクルマのインテリアに求められる機能もどんどん変化しています。

BMWは新時代に求められる機能を追求する一方で、ドライバーが中心という普遍的な価値を大事にしながら、これからもクルマのインテリアを進化させていくのでしょう。

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