新たな伝説を刻む一台 BMW Motorradの50周年記念モデル「R nineT /5」

BMW Motorradがオートバイを初めて製造した1923年から脈々と受け継がれているのが、“水平対向ボクサーエンジン”と呼ばれるエンジン機構です。この画期的な発明によってBMW Motorradのオートバイはあらゆるレースで好成績を収めており、世界中で多くのファンを獲得した立役者とも言える存在でした。しかし、1960年代になると日本メーカーが数多く台頭してくるようになってきました。このとき、日本勢が得意としていたのはエンジンの高出力化。すなわち、多気筒エンジンやDOHC、水冷式を使用したオートバイでした。

1960年代後半には当時の経営陣がBMW Motorradのオートバイを撤退させるという議論を行うほど、日本製のバイクがシェアを奪うなどオートバイを取り巻く環境が大きく変わる潮目にありました。そのとき、BMW Motorradが出した結論はオートバイを存続させること。つまり水平対向ボクサーエンジンを残しつつも、新しい路線を開拓する一台をつくるということでした。このとき制作されたオートバイこそ「R75/5」と呼ばれるもので、新世代BMW Motorradの幕開けを飾った一台です。それから50周年目を迎えた今、BMW Motorradは「R nine T/5」というアニバーサリーモデルを復刻させることを発表しました。

ファンが支え続けた50年

画像引用:https://www.bmw-motorrad.jp

50周年を迎えた「/5」シリーズは、BMW Motorradの中でも最も歴史のあるシリーズの1つです。では、なぜ水平対向ボクサーエンジンというアイデンティティを残しながらも、高出力なエンジンを備えたオートバイと肩を並べてこられたのでしょうか?

実は、その大きなカギを握っていたのがBMW Motorradのオートバイを愛する世界中のファンたちの存在でした。前述したように、1960年代後半から日本勢が台頭し始めることでBMW Motorradは強い危機感を覚えます。これまでのように、水平対向ボクサーエンジンだけでは対抗できなくなると考え、新しいエンジンを搭載した“Kシリーズ”の開発に着手したのです。「/5」シリーズは空冷式の水平対向ボクサーエンジンを搭載しており、“Rシリーズ”と呼ばれています。そして、その次世代を担うことが期待されたのが”Kシリーズ“であり、BMW Motorrad初の水冷式エンジンの登場でもありました。

実際に市場に投入されたのは1983年の「K100」であり、その年月から分かるように非常に完成度の高いモデルでした。このときのライバル車が、「ホンダ CB750」や「カワサキ Z1」など現在でも名車として人気の高いものが多く、どれもハイパフォーマンス性を追求したモデルでした。「K100」はこれらライバル車に対して、そのデザイン性と水冷4気筒DOHCという性能で一躍トップの座に返り咲きました。そして、それと同時に“Rシリーズ”の時代は終わるはずでした。

しかし、当初の予想と反して“Rシリーズ”の売れ行きが落ちることはなく、新たなモデルを発表するたびに注文が入り続けるような状況が続いたのです。これにBMW Motorradは“Rシリーズ”の継続を決定し、無事に50周年を迎えることができました。

このように、一度はなくなりかけていましたが、ファンの熱烈な支持によってBMW Motorradを代表するまでになった、いわば伝説的なモデルでもあるのが「/5」シリーズなのです。

細緻にまでこだわった高いクオリティが魅力

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「/5」というモデルは「R75/5」「R60/5」「R50/5」の3つに分けることができ、この“/5”という名前がつく以前のモデルとでは設計思想が異なります。とくに、「/5」シリーズ以後は近代的なオートバイとしての設計がなされており、ストローク(エンジン部分の構造の1つ)やコンロッド(一般的に、エンジン部分のコネクティングロッドを指した言葉)を四輪車モデルと共通化するなど高品質なモデルを大量生産できるようにと合理化が推し進められたモデルでもあります。それぞれ排気量が異なっており、「R50/5」「R60/5」「R75/5」の順番で32馬力・40馬力・50馬力となっており、498cc・599cc・746ccと数字と比例して排気量も大きくなっています。

今回の50周年記念モデルでは当時のように3タイプ用意されてはいないものの、現行モデルの中でもハイスペックな「R nineT Pure」と同スペックという性能を有しています。とくに、エンジンは4ストロークDOHC水平対向2気筒エンジンを搭載しており、その排気量は1169ccにも到達するなど当時の「/5」シリーズからは想像もつかないような大排気量に仕上がっています。もちろん、水平対向ボクサーエンジンならではのエンジンサウンドは「R nineT/5」でも継承されており、公式ホームページでも聞くことが可能です。

パワーと音質だけではなく、しっかりと電子制御システムが搭載されており、最高出力110PS/7750rpm、最大トルク116N・m/6000rpmを発揮できるだけの走行ポテンシャルを引き出せるように設計。低回転域から力のある走りを体感することができます。また、BMW Motorradがこだわっている走行性能と安全性能の両立を実現するために、独自のABS機構、ASC(オートマチック・スタビリティ・コントロール)とヒートグリップが標準装備として用意されています。

「/5」シリーズへ最大の敬意がこめられているからこその現代的な装備によるオマージュ。そして、それを体現しているのが最大の魅力でもあるデザインです。

目を奪われる懐かしくも新しいデザイン

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「/5」シリーズが評価されているのはBMW Motorradの技術の結晶というべきモデルであるという点だけではなく、類まれなるデザインセンスによるボディデザインを持っていたからという点を忘れてはいけません。「/5」以前のRシリーズがデザイン的にも高い評価を受けていましたが、この「/5」ではエンジンの大幅改良と排気量の増加によってデザインを変更する余地が大きく生まれたモデルでもあります。1960年代後半の古き良き時代を思い起こさせるフロントフォークや繊細なスポーク、ハブのデザイン。「R nineT/5」では、これらのアイデンティティを損なうことなく、現代へと見事に蘇らせることに成功しています。

見た瞬間に目を奪われるのが、タンク周りの塗装ではないでしょうか。これらはすべて手作業で塗られており、50周年記念モデルのために特別にスモーク効果を施し、当時を思い起こさせる二重のライン取りも見事に再現されています。また、テレスコピックフォークのサスペンションダストブーツやスポーク部分に至るまで、現在の部品を流用することなくオリジナルとなっており、1960~1970年代の雰囲気を醸し出してくれています。一方で、レザーシートはオリジナルロゴや白のパイピングが施されている特別仕様。クロム仕上げのモールに呼応するように、ミラーもクロムメッキ仕上げとなっています。

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リミテッド・エディション・バッヂ

そして、エンブレムには50周年記念モデルであることを誇らしげにするような、リミテッド・エディション・バッヂがあしらわれています。まさに、これらのデザイン性は販売当時のライフスタイル、ヒッピー文化が花開いていく中での自由性や気高さ、個性を感じることのできるものとなっています。

50年を超えて紡がれていく名車

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水平対向ボクサーエンジンというとBMW Motorradの代名詞でもありますが、現在ではよりモダンなオートバイが開発されていくなど、徐々に貴重な存在となりつつあります。その中で「R nineT/5」を発売したことで、これから先の50年にも「/5」という伝説的なモデルがあったことを伝えることができます。そして何よりも、「R nineT/5」に多くのライダーが乗ることで、オールドバイクの価値が改めて見直される時代もやってくることでしょう。自由の象徴としてのオートバイを体現しているかのような「R nineT/5」。このフィーリングを味わいどこまでも走り抜けたくなる、とっておきの一台です。

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