異端から王道へ!いよいよ新型登場のMINIクロスオーバーを徹底解説

2010年に登場した初代MINIクロスオーバーは従来のMINIファンからは驚きをもって迎えられました。「タフでカッコいい」、「いや、こんなクルマはMINIじゃない」と賛否両論に分かれましたが、現在ではBMW MINIの中でも主要な位置を占めているのはみなさんご存知のとおりでしょう。そして実はMINIクロスオーバーの登場こそ、現在にいたるBMW MINI隆盛の転換点となったと言えるのです。2020年にはいよいよ大掛かりな改良も予定されているMINIクロスオーバーについて、登場から現在までを振り返り解説していきます。

「こんなクルマはMINIじゃない?」初代MINIクロスオーバーは「MINI初」づくし

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初代MINIクロス―オーバーは2010年に2代目BMW MINIのバリエーションとして登場しましたが、2代目BMW MINIが初代のイメージをそのまま引き継いだのに対し、何から何までMINIとしては異例ずくめのモデルでした。

まずサイズが全長4,105㎜×全幅1,790㎜×全高1,550㎜と2代目MINIに比べて全長で365㎜、全高で120㎜、そして全幅では105㎜大きくなり、MINIとしてはクラシックMINI時代を含めて初の3ナンバーサイズとなりました。

初代MINIも登場の際はクラシックMINIよりもずいぶん大きくなったと言われていましたが、さらにサイズアップしたMINIクロスオーバーには、「これでは全然『MINI』」じゃない」といった声も少なくありませんでした。

また、リアドアを備えた5ドアになったことや、駆動方式にはこれまたMINI初となるALL4と呼ばれる4WD仕様まで用意されていたことも、MINI=スポーティで都会派のハッチバックというイメージを持っていた方には違和感が少なからずあったようです。

しかし、そういった外野の声をよそに初代MINIクロスオーバーは世界的に大ヒットを記録しました。MINIは欲しいけれど3ドアだと不便、家族が増えたので広い後席とたくさん荷物が積めるラゲッジスペースが欲しい、そんなニーズにクロスオーバーはうまくマッチしたのです。

サイズは大きくなりましたが独特のフロントグリルや垂直気味のフロントウインドウ、2トーンのルーフなど、ちゃんとMINIの仲間に見えるようにデザイン面での工夫を凝らされていたのも大きいでしょう。

なお、「クロスオーバー」は日本のみの名称で海外では「カントリーマン」が正式名称です。もともとクラシックMINIのステーションワゴンバージョンにちなんだネーミングですが、日本ではすでにカントリーマンが商標登録されていたことから「クロスオーバー」に落ち着いたようです。

もっともクラシックMINIのカントリーマンはステーションワゴンだったので、BMWMINIのラインナップでいえば、「クラブマン」に近いでしょう。もともと2008年のパリサロンで発表されたコンセプトモデルも「クロスオーバー」というネーミングでしたし、このSUVスタイルには「カントリーマン」より似つかわしいのではないでしょうか。

ユニークなクーペバージョン、「ペースマン」も登場

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2代目MINIにはクロスオーバーを含めなんと7種類ものボディバリエーションが用意されていましたが、その中でもとくにユニークな存在だったのが2013年登場のペースマンです。ペースマンはMINIのバリエーションの中でも非常に尖った存在であり、MINI全体のイメージを引っ張っていく車種という意味合いを込めて名づけられたとのことです。

クロスオーバーをベースに3ドア化したものですが、単純にドアの数を減らしただけではありません。ルーフをなだらかに傾斜させたクーペスタイルに変更、逆にサイドウインドウはリアに向けてなだらかに上昇するラインを描き、優美なサイドビューを演出しています。室内に目を移すと、乗員は4人乗りのみとなり、リアシートは大型のセパレート仕様となっています。全体的に実用性を重視したクロスオーバーよりも豪華でラグジュアリーな設定となっており、新車価格も同グレードでは10万円ほど高く設定されていました。

MINIクロスオーバーのデビューから2年遅れで市場に投入され、すでに高まっていたクロスオーバー―人気に隠れてしまったままモデルチェンジすることなく生産中止となってしまいましたが、もしペースマンのほうが先にデビューしていたなら状況は変わっていたかもしれません。しかし、スタイリッシュでラグジュアリーなクーペデザインを採用したペースマンがMINI全体のイメージアップに果たした役割は決して小さくないでしょう。

エコからサーキットまで満足させるラインナップの2代目(現行型)

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2017年にフルモデルチェンジを行い2代目に進化した現行型MINIクロスオーバー、デザインは初代からのキープコンセプトですがサイズは大幅にアップしています。全長は195㎜長く、全幅は30㎜広くなり、それに合わせてホイールベースも75㎜拡大されたことで室内空間はさらに広くなりました。X1及び2シリーズアクティブツアラーと同じUMLアーキテクチャーと呼ばれる新型のプラットフォームを採用したことから乗り味、走行性能は格段に向上しています。

初代ではモデル後半でディーゼルモデルの販売が9割を占めていたことから、当初はディーゼルエンジンをメインにしていましたが、現在ではガソリンエンジン車もすべてグレードで選択できるようになりました。またMINIにとっては初となるプラグインハイブリッドモデル、「クーパー SE ALL4」も追加されて話題を呼びました。ユニークなのはその四輪駆動システムで、前輪は通常のクロスオーバー同様エンジンで駆動しますが、後輪はリアフロア下にあるモーターで駆動します。発進する時は後輪のモーターで力強くボディを押し出し、速度が乗ったところでエンジンにバトンタッチ、前輪が駆動を始めます。このモーターでぐっと前に押し出される感覚には独特の気持ち良さがあります。それでいて燃費は17.3km/Lと、大径タイヤを履くSUVと考えれば優秀と言えるでしょう。

そのプラグインハイブリッドの対極とも言えるのが「ジョンクーパーワークス(JCW)」です。2019年10月の一部改良でエンジンはさらに強化され、強化されたクランクシャフトや専用のピストンに換装、改良型ターボチャージャーの採用などで最高出力は実に75PSアップの306 PSを叩き出します。そのハイパワー&ビッグトルクを路面に余すことなく伝えるのはローンチコントロール機能を備えた8速スポーツATで最高速度は250km/hに達し、0-100km/hの加速タイムは5.1秒とスポーツカー並みです。

もちろんエンジンのパワーアップに対応してラジエーターは2つ装備され、リザーバータンクも大型化されるなど冷却性能も向上するなどサーキット走行も見据えた改良が施されています。それでいてクロスオーバーのもつ実用性は一切犠牲になっておらず、充実した装備でMINIクロスオーバーの最高級モデルとしての顔も併せ持ちます。

エコ派とサーキット派、両極端な2つのグレードが用意されたクロスオーバー、ベースとなるUMLアーキテクチャーのポテンシャルの高さを理解いただけるのではないでしょうか。

いよいよ登場!新型の目玉はアダプティブ・マトリックスビームLEDライト

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クロスオーバーの登場から3年が経過したこともあり海外の専門誌では一部改良モデルのスクープ写真が出回ってきています。

スクープ写真ではボディ前後には唐草模様のカモフラージュがされておりディテールまでは不明ですが、逆にカモフラージュされていない基本のボディについては現行型からの変更はないと考えられます。

テールランプにはすでに3ドアモデルなどに導入済みのユニオンジャックを模したものが採用されることは確実で、フロントのエアダムやグリルもさらに迫力を増した形状に変更されることもスクープ写真から読み取れます。

新型最大の、文字通り「目玉」はMINI初となるアダプティブLEDライトです。アダプティブ・マトリックスビームLEDライトはすでにBMW車には装備例がありますが、一言で言えば明るく小燃費なLEDにインテリジェント機能を追加したものです。

ステアリングを回す動きに反応してヘッドライトの角度を自動制御し、コーナーの先の視界が広がることで、暗い道でも路面の状況を素早く認識してくれるので、夜間走行の安全性を格段に高める装備です。そういった機能面もさることながらルックスの上でもよりシャープなイメージになるのもポイントでしょう。

気になるデビューのスケジュールですが、2020年前半から夏頃に初公開され、秋のパリモーターショーでワールドプレミアが行われるという流れが有力なようです。

MINIクロスオーバーがMINIの世界を広げた!

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初代MINIクロスオーバーの功績の1つとして、全く新しいMINI像をユーザーに提示したことが挙げられます。MINIはいずれもイメージ的にはクラシックMINIを下敷きにしています。3ドアはもちろん、クラブマンは「エステート」や「カントリーマン」に重なりますし、クーペについてはクラシックMINIをベースにした「マイダス・ゴールド」といったイメージソースがあります。

MINIクロスオーバーにはこのイメージソースにあたるクラシックMINIが存在しません。さらに、もっともMINIから縁遠いと考えられていたSUVのイメージを取り入れるのには相当勇気が必要だったのではないでしょうか。逆に、SUVイメージのクロスオーバーだったからこそ、5ドア化や大幅なサイズアップもユーザーからはMINIのスタイルを活かしながらもタフで使えるクルマだということですんなりと受け入れられました。

現行型のMINIはサイズアップして全幅が1,727㎜と日本国内では3ナンバーサイズになり、5ドア車も追加されましたが、先にMINIクロスオーバーがデビューして「大きなMINI」に見慣れていたことから、ユーザー側でもさほど違和感はなかったのでしょう。

自動車のサイズが大きくなっているのは世界的な傾向で、とくに安全性の面からも避けられない部分もありますが、MINIクロスオーバーが登場せずにMINIをサイズアップして5ドア車を追加していたなら、ユーザーからの反応もまた違っていたのではないでしょうか。

いまや世界での新車販売台数は年間36万台を超えるというMINIですが、中でもMINIクロスオーバーは20%増(2019年1月~9月)と大きく伸びています。

かつては「異端」と思われていたMINIクロスオーバーですが、今やMINIブランドを支える重要なモデルへと成長、また今年登場する新型にも期待が高まります。

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