モンテカルロからダカールへ!MINIに受け継がれるラリーの伝統!

おしゃれで都会的なMINIにレース、それも悪路を走るラリーのイメージが結びつかない方も少なくないでしょう。しかし、実はクラシックMINIの時代から現在のMINIに至るまでラリーでも大活躍しているのです。今回はクラシックMINIの名声を一気に高めることになったラリー・モンテカルロでの活躍と世界で最も過酷と言われるダカールラリーで輝かしい戦績を挙げているMINIのチャレンジについて解説していきます。

MINIの名声を高めたラリー・モンテカルロでの活躍

画像引用:https://www.mini.com

1959年に誕生したクラシックMINIは当時としては革新的な前輪駆動を採用した実用的なコンパクトカーとして大ヒットとなりました。そのクラシックMINIにレース用車両としての可能性を見出したのが、現在もMINIにJCW(ジョン・クーパー・ワークス)として名前を残すジョン・クーパーでした。彼がチューニングを手掛けたクラシックMINIの高性能バージョン、MINIクーパーは1961年に市販化され、さまざまなレースでも活躍しました。中でもクラシックMINIのポテンシャルを最大限に発揮し、名声を高めたのがラリー・モンテカルロでの活躍です。

ラリー・モンテカルロはF1のモナコグランプリでも有名な地中海のリゾート都市モナコをスタート・ゴールとする伝統あるラリー競技です。その始まりは1911年と言われ、ラリー競技のもとになった大会で、現在はWRC(世界ラリー選手権)の開幕戦として開催されています。

モナコをスタート・ゴールとしていますが、コースの大半はアルプスの山岳地帯であり、スノーコンディションのドラマティックなレース展開が1世紀以上も人々を魅了し続けています。

当時クラシックMINIを生産していたBMCでは1960年からワークス体制を組んで参戦しました。当初はベーシックなMk-1でしたが1962年からは車両がMINIクーパーになり、好成績を収めるようになりました。

そして1963年によりパワフルなエンジンと大型のディスクブレーキを搭載したクーパーSがデビュー、1964年のラリー・モンテカルロに投入されます。

ラリー・モンテカルロでのポルシェとの死闘

画像引用:https://www.mini.com

1964年にラリー・モンテカルロに参戦したクーパーSは、並み居る競合を押さえデビュー戦にも関わらず1位でゴールし、周囲を驚かせました。続く1965年も優勝し、前年の勝利がフロックでないことを証明しました。1966年には連勝記録が途切れますが、実際には1位でゴールしていました。しかしレース終了後に主催者からヘッドライトが規定に違反しているという物言いがつき、失格処分となってしまいました。これは主催者が地元のフランス車を優勝させるためのいいがかりだったというのが真実のようです。繰り上げで優勝したシトロエンDSのドライバー、パウリ・トイヴォネン(後の有名なWRCドライバー、ヘンリ・トイヴォネンの父親です)は優勝が決まったにもかかわらず沈痛な表情だったことがそれを物語っているのではないでしょうか。しかしこの事件が逆にラリーでのクラシックMINIへの人気を高めることになったのです。

そして、そんなスキャンダルを実力で吹き飛ばすかのように、翌1967年のレースでは再びウィナーの座に返り咲きました。

この1967年のレースで3位に甘んじたのが、ポルシェ911でした。当時、ポルシェは911で数々のラリーに挑戦し、輝かしい戦績を収めていたのですがラリー・モンテカルロでは1965年の大会でも2位と、いずれも総合優勝のクーパーSに歯が立ちませんでした。

ちなみに、1965年当時のポルシェ911の日本での価格は435万円でした。大学卒の初任給が2万4千円程度だったので現在の価値に換算すると何と3000万円超のスーパーカーです。ドイツ国内ではその半分程度だったそうですが、それでも普通の人の感覚では雲の上の存在だったでしょう。

そんなスーパースポーツカーが、ワークスチューンされていたとはいえ英国の小さな大衆車に、こてんぱんにされてしまうというのは、見る側にとってはさぞかし痛快な出来事だったでしょう(ポルシェには気の毒ですが)。

さすがにポルシェもこの状況をだまって見ているわけではなく、1968年の大会では1-2フィニッシュを飾り雪辱を果たしました。MINIは3位~5位に甘んじることになり、この大会を最後にBMCワークスはラリー・モンテカルロから撤退しました。

それでもクーパーSのラリー・モンテカルロでの活躍は人々に強烈な印象を残しました。ルーフラックにたくさんの補助灯というラリー・モンテカルロ仕様はクラシックMINIのカスタムの定番となっています。ちなみにルーフラックは当時義務づけられていたスペアタイヤを搭載するためのもので、ルーフラックの正面に取り付けられているプレートはラリーの参加車両を識別するためのものです。

日本でもラリー・モンテカルロ仕様のMINIは人気で、有名なプラモデルメーカーのタミヤが1/24スケールのプラモデルと1/10のラジコンカーでラリー・モンテカルロ仕様のMINIをリリースしていたので、作ったことがある、という方もいらっしゃるかもしれませんね。

BMW MINIは世界一過酷と呼ばれるレースに参戦

画像引用:https://www.bmwgroup.com

雪のラリー・モンテカルロから一転、MINIがラリー復活への舞台として選んだのは世界で一番過酷と呼ばれるダカールラリーでした。

ダカールラリー、かつてはフランスのパリを起点にアフリカのダカールをゴールにしていたことからパリダカールラリー、通称「パリダカ」と呼ばれており、日本ではこちらのほうがおなじみかもしれません。

日本人ドライバーの篠塚建次郎選手が三菱パジェロを駆って優勝するという快挙を成し遂げたこともあり、高倉健主演の映画(「海へーSee you」:1988年東宝)の題材や日清カップヌードルのCMにもレースの画像が使われるなど、日本での知名度も高いレースです。

砂漠を始めとする難易度の高いコースを1日で800㎞以上走行するなど、確かに世界一過酷なレースという呼び名も決して誇張ではないでしょう。それだけではなく、レース中の死亡事故もたびたび発生していますし、政治的及び経済的に不安定な地域を通過することからコース上での強盗やさらには競技車両の盗難(!)、サポートクルーがテロに巻き込まれるなど、その強烈なエピソードが数多く残されています。

コースは基本的に毎年変更されていますが、レースの舞台はアフリカ大陸での政情不安などの影響もあり、2009年以降は南米に変更して開催されています。2019年大会は1月6日から17日にかけてペルーのリマをスタート・ゴールとして開催されました。41回を数える長いダカールラリーの歴史中でも初となる1国内のみをコースとしています。ただしペルー国内のみのコースといっても、ご存知のとおり南北に長い国だけあって、総走行距離は約5600kmに及び、さらにその内の約70%を砂漠や砂丘が占めるといったハードなものとなっていました。

2020年の大会の舞台は初となる中東のサウジアラビア、1月5日~17日に全12ステージのスケジュールでコース総延長距離は9000kmとアナウンスされています。

ダカールラリーでMINIが連覇を達成!

画像引用:https://www.mini.com

ダカールラリーにMINIが初参戦したのは2011年でした。2010年にデビューした初のSUVモデルであるMINIクロスオーバー(海外名:カントリーマン)を早速投入してのチャレンジでしたが、結果はリタイヤに終わります。

2012年にはその雪辱を果たすべく、何と一気に5台ものマシンを投入してきました。見た目こそベースとなったMINIクロスオーバー(初代)の面影を残していますが、BMW X3用の直列6気筒ターボディーゼルをフルチューンした3L仕様のものを搭載し、最高出力は315PSを誇るという強力なマシンでした。そして目論見どおり、MINIは参戦2年目にもかかわらず見事に優勝を勝ち取ったのです。さらに翌年の2013年大会でも優勝を飾り2連覇を達成します。

そして2014年大会ではついに3連覇を果たしただけではなく1位~3位をすべてMINIが独占、さらにエントリーした11台すべてが完走を果たします。かつて、ダカールラリーはその過酷さから完走率が50%以下の大会も決して珍しくはなく、中には出走488台中完走67台(1986年大会)という大会があったほどなので、「すべての完走者が勝者である」という共通認識が、現在でもレース参加者にはあると言われています。そんなレースでの11台のMINIすべてがリタイヤすることなく完走したという事実は優勝と同じぐらい価値あるものだったのではないでしょうか。MINIは2015年大会でも優勝、なんと4連覇という記録を打ち立てました。

残念ながら2016年から2018年にはプジョーに優勝を奪われます。プジョーの勝因として挙げられているのがなんと二輪駆動車の投入でした。砂漠や悪路の多いダカールラリーでは二輪駆動車は不利なのでは?と思われるかもしれませんが、二輪駆動車は四輪駆動車に比べて部品点数が少ないので車重を軽量化することができることに加え、レギュレーション上の優遇装置があるのです。二輪駆動車は四輪駆動車よりも悪路での走破性を高められる130㎜も太いタイヤを装着することができる上、車内からタイヤの空気圧を調節する機能を装着することも可能となっています。

砂漠でスタックしにくい軽量なボディに強力なエンジン、その力をしっかりと荒れた路面に伝える太いタイヤをプジョーは武器にしたのです。

MINIもプジョーに対抗し2018年大会からは四輪駆動車のクロスオーバーに加えてJCW(ジョン・クーパー・ワークス)バギーを投入しました。丸形2灯のヘッドライト、フロントフェンダーのふくらみやブラックアウトされたピラーとMINIのエッセンスをふんだんに取り入れたユニークなデザインは「MINI Design」の協力によるものです。もちろん、中身は強力なスチールフレームをベースにカーボンファイバー製のボディをかぶせたもので完全なレース用のプロトタイプモデルですが、角度によってはちゃんとMINIに見えるところが面白いですね。

もちろん2020年大会にもミニX-raidチームとして改良型JCWで参加が決定しています。ドライバーにはWRCでも名をはせたカルロス・サインツとダカールラリー通算13勝というベテラン、ステファン・ペテランセルという強力なコンビを起用、残念ながら2015年以降遠ざかっていた総合優勝を狙います。

2020年大会は1月5日スタートの予定です。果たして雪辱はなるか―新コース、サウジアラビアを舞台にしたMINIの活躍、期待したいですね。

関連記事

月別アーカイブ

ページ上部へ戻る