新登場、スズキスペーシアギアは軽の市場を塗り替える?!

ジムニー風?SUVテイストのエクステリアデザインが特徴

今や世界的なブームとなったSUVですが、そのテイストを大人気の軽ハイトワゴンに盛り込んだ「ありそうでなかった」一台が、スペーシアに追加されたスペーシアギアです。ベースとなったスペーシアとの違いをまず見ていきましょう。もっともインパクトがあるのはやはりフロントマスクでしょう。スペーシアギアの角型ヘッドライトがジムニーのような愛嬌のある丸形に変更され、フロントグリルもジムニー風にブラックアウトされた横長タイプのデザインになっています。それにあわせて、フロントバンパーもガンメタリックのプロテクター形状のインパクトがあるものに変更することでSUVらしい力強さが感じられます。それ以外にもルーフレールが標準装備、アルミホイールはあえてブラック塗装のスチールホイール風のものを採用し、各部にブラックのパーツを追加することでタフなイメージを演出しています。

アウトドアテイストたっぷりのインテリア

画像出典:https://www.suzuki.co.jp/

インテリアも基本は標準車と共通ですが、さまざまな工夫が施されています。まずブラック地にオレンジのステッチが入ったシートですが、このシートは、はっ水加工仕様となっており、見た目だけでなく機能面でアウトドア用途にマッチしたものとなっています。インテリアのベースはブラックですが、メーターリングやエアコン吹き出し口にオレンジ色がアクセントとして使われており、カスタムのクールなインテリアとは一味違う、遊び心を感じさせるものとなっています。また、標準車の特徴でもあるスーツケース風の助手席アッパーボックスもミリタリーテイストのジェリ缶風デザインに変更されているなど、小技も効かせています。細かな点ですが、助手席シートバックポケットが二段のメッシュ仕様となっていたり、運転席側後席にはトレーと12Vのアクセサリーソケットを用意していたりと、アウトドアでのさまざまな使われ方を研究した様子がうかがわれます。

スペーシアの高い実用性はそのまま

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エクステリアとインテリアにはかなり手が入れられていますが、その一方で機能面では基本的に標準車と同じです。最低地上高は標準車と同じ150㎜のままで、タイヤのサイズも14インチと標準車と同じです。さらに車高を上げると走行性能への影響も大きくなるので、悪路の走破性は求めず、あくまで雰囲気を重視した仕上がりとなっています。

もしオフロードを走りたいのであれば、同じスズキ車には15インチの大径タイヤを採用し、最低地上高も180㎜を確保したハスラーがラインナップされています。さらにはジムニーという本格的なクロスカントリー車もあるので、用途に応じて最適なクルマを選んでください、ということなのでしょう。

逆に言えば、使い勝手の良さは一切犠牲になっていないので、その方がありがたい、という方も多いのではないでしょうか。もともとスペーシアの室内の使い勝手の良さには定評がありました。単にスペースが広いというだけではなく、簡単に後席が畳めて自転車をそのまま載せられますし、さらにロードバイクであれば前輪を外すことで2台プラス荷物を楽に積み込むことができます。助手席シートを前に倒せば、クラス最大の室内長2155㎜を最大限に活用してサーフボードやスキー板のような長尺物も楽々載せられます。ユニークなのはシートの背面と荷室フロアにも汚れを簡単に拭きとれる加工が施されている点で、濡れたサーフボードやスキー板なども躊躇せずに積み込めるのはアウトドア好きにはありがたいでしょう。前席のヘッドレストを外して倒すと後席座面とフルフラットな状態となり、軽い仮眠から流行の車中泊まで対応可能です。

ジムニーがスペーシアギアの人気をアシスト?

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早くも話題のスペーシアギアですが、先にデビューした新型ジムニーのアシストも大きいのではないでしょうか。2018年7月になんと20年ぶりにモデルチェンジを行った新型ジムニーは、自動車専門誌にとどまらずアウトドア専門誌や一般誌などでも大きく取り上げられるほどの人気ぶりでした。人気の理由は軽自動車規格ながら本格的なクロスカントリービークルという点にありますが、本格派であるが故に、ジムニーを実際に購入するとなると意外にハードルが高いのも事実です。ボディタイプは3ドアのみで、室内もエンジン縦置きレイアウトの影響で、最新の軽自動車を見慣れた目からすれば正直「狭い」と感じられます。ターボ+4WDという組み合わせのため燃費も16.2km/リッター(WLTCモード)と軽自動車としてはひと昔前のレベルです。従来型よりは洗練されたとはいえ、ラダーフレーム付きのボディは乗用車ほど快適な乗り心地は望めません。「ジムニーのようなクルマは欲しいけれど、実用性を考えるとちょっと…」、と考えていた層が共通のイメージをもつスペーシアギアに飛びついた可能性は高いのではないでしょうか。

それを裏付けるように、ハスラーでも同様の現象が起こっていたのです。2014年に登場し、新感覚の軽SUVとしてスズキ自身も想定外となる大ヒットを記録したハスラーですが、さすがに近年は人気も落ち着き、販売台数では前年割れが続いていました。しかし、新型ジムニーがデビューした2018年7月以降にハスラーの販売台数が好転、8月は前年同月比108.5%、9月は106.2%、10月は109.6%、11月は101.9%、12月にはなんと121.9%まで盛り返しています。
モデル末期の車種で販売台数が上向くことは非常にレアなケースです。タイミングから考えてジムニーに興味があってディーラーに行った方が最終的に実用性でハスラーを選んだというパターンが増えた、と考えるのが自然でしょう。

スペーシアギアの登場で王者N-BOXの背中が見えてきた?

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スペーシアは2017年12月のモデルチェンジで販売台数を伸ばし、2018年の新車販売台数は王者ホンダN-BOXに次ぐ第2位となりました。しかし台数で見るとN-BOXの241,870台に対し、152,104台と、実に10万台近い大差をつけられています。さらに月別で見ると2018年10月に、N-BOX20,513台に対し、スペーシアは11,813台とダブルカウントに近い差がついた月もありました。それがスペーシアギア登場以降となる2019年1月はN-BOX19,192台に対しスペーシアは14,350台、2019年2月はN-BOX20,391台、スペーシアは15,825台と徐々に販売台数を伸ばしていることが分かります。スズキではスペーシアギアの販売比率を1割~2割と見込んでいたそうですが、登場後の販売台数を見ると、実際はそれ以上だったと思われます。スペーシアギアの登場がスペーシア全体の販売台数を押し上げる起爆剤となったことは間違いないでしょう。

スペーシアギアは新たなユーザー層にアピール

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もともとスペーシアやN-BOX、タントといった軽ハイトワゴンは子育て世代の女性をメインユーザーとして想定していました。とくに標準車は、CMなどでも後席で立ったまま子供が着替えられる、大型のベビーカーが簡単に載せられるといった点をアピールしていることからも明らかです。一方で、カスタム系はちょっとコワモテのドレスアップ仕様で、軽自動車の保有割合の多い地方都市の独身男性がメインユーザーとなっているようです。軽ハイトワゴンの広さや経済性は魅力的だけれど、標準車ではファミリーカーのイメージが強いし、とはいえカスタムではちょっとヤンキーっぽい、そう考えて購入対象にすることをためらっていた方は少なくなかったようです。スペーシアギアは、アウトドアテイストたっぷりのアクティブビークルというスタンスで登場し、軽ハイトワゴンの新たなユーザーを開拓しました。

これまでアウトドア好きの方が趣味のために選んでいた軽自動車としては、スズキエブリイやダイハツアトレーなどの軽貨物車などが挙げられます。コンパクトで小回りも効く上、たくさんの荷物が積めて維持費も安いことが理由でしたが、あくまで軽貨物車なので乗り心地の面や動力性能、安全性能といった面ではどうしても軽乗用車には劣ります。従来の軽貨物車に不満があったユーザーには、SUV風の雰囲気を持ちながら荷物も積めて乗り心地も良いスペーシアギアは非常に魅力的に思えたのではないでしょうか。

価格を見るとスペーシアギアは標準車とカスタムのほぼ中間で、とくにこれまでカスタムにしか搭載されていなかったターボも自然吸気車の8万円高で用意されるのもポイントが高いでしょう。他車ではスペーシアギアに追随するように、近々モデルチェンジする三菱e-Kスペースにも同社のデリカD5を縮小したようなSUV風のモデルがラインナップされるというスクープもありました。今後、他社でもSUV風モデルが各社にラインナップされ、カスタムに続く軽ハイトワゴン第三の柱となっていく可能性は高いでしょう。しかしスズキはジムニーやハスラーによっては他社よりもアウトドアに強い軽自動車というイメージが定着しているのは強みとなるでしょう。N-BOX一強でやや手詰まり感のあったここ数年の軽自動車市場ですが、スペーシアギアの登場で、その勢力図が大きく変わってくるかもしれません。

 

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