BMWの持つクオリティは世界中の人を魅了しており、多くのファンが国境を超えて称賛しています。これに関してはみなさん共通の認識かと思いますが、そのいっぽうで「国によって販売方針はどう違うのか」気になりませんか? 中には「アメリカでは、日本よりもBMWが安い」という噂を耳にした方も少なくないと思います。そこで今回は、海外のモデルと比較しながら、日本のBMWがどれほど“すばらしいのか”をご紹介していきましょう。
上位5カ国で販売価格を比較
単刀直入にいうと、日本のBMWは“極めて適切な価格”に設定されています。まずは、各国の販売価格を比較し、その事実をご覧いただきましょう。以下に、日本で人気のモデルを対象として、ベースグレードの価格を各国の公式ページから引用してみました。
主要5カ国における現地販売価格の違い
モデル名 | 販売価格 | ||||
日本 | ドイツ | アメリカ | 中国 | インド | |
1シリーズ | 320万円 | 335万円 | × | 348万円 | × |
X1 | 423万円 | 421万円 | 384万円 | 415万円 | 598万円 |
X2 | 439万円 | 443万円 | 400万円 | 423万円 | × |
3シリーズ セダン | 452万円 | 492万円 | 443万円 | 465万円 | 677万円 |
3シリーズ ツーリング | 456万円 | 456万円 | × | × | × |
5シリーズ セダン | 649万円 | 636万円 | 587万円 | 630万円 | 915万円 |
X3 | 657万円 | 585万円 | 451万円 | 585万円 | 952万円 |
X4 | 767万円 | 651万円 | 555万円 | 684万円 | 1,030万円 |
X5 | 920万円 | 900万円 | 668万円 | 1,140万円 | 1,180万円 |
7シリーズ セダン | 1,096万円 | 1,153万円 | 951万円 | 1,212万円 | 2,081万円 |
比較してみたのは、クルマの販売台数が多い上位5カ国で、ここ数年の平均レートから日本円へ換算しています。まずアメリカですが、たしかに設定されている価格帯は日本より廉価です。しかし、アメリカでは用意される基本装備が日本よりも少ないため、最低価格で購入した場合、非常に簡素なつくりになってしまう特徴があります。日本仕様と同じくらいに装備を充実させたら、この数字で見る程の差はないでしょう。
続いてインドですが、こちらはアメリカとは対称的に高額に設定されています。現地法人である「BMW India」の設立が2006年、生産工場の稼働開始が2007年と歴史が浅く、市場が発展途中であることが理由なのでしょう。いっぽう同じアジア圏でも、中国の場合は市場が十分大きいことから、日本よりも車種により若干低めに設定されています。とはいえ装備に関してはアメリカと同様、日本のほうが充実していることは言うまでもありません。
そして最後に、BMWの本国であるドイツと比較してみます“1ユーロ=130円”で換算しているのですが、一目見て日本と同じ価格帯だと分かります。すなわち、“日本の価格設定は、主要国の中でもっともドイツに近い”と言えるのです。
もちろん、物価や制度などの違いから売買感覚は国ごとに異なるため、販売価格だけでは一概に言えません。しかし、これを踏まえても、日本は良心的に設定されていると考えられるでしょう。“日本では輸入車が割高に売られている”という噂をする人もいますが、むしろ“もっとも適切な価格で売られている”といっても過言ではありません。
日本市場はBMWから大注目されている?
統計によると、クルマの販売台数は「中国>アメリカ>日本」の順番に並んでおり、クルマ市場の大きいトップ3と考えて遜色ありません。とくに中国はここ数年で急激に拡大し、今や日本の6倍ものクルマが購入されています。
ところがBMWでは、中国よりも日本のほうが重要な市場として捉えています。これは第3位を誇る市場規模もさることながら、“目の肥えたユーザーが多い”ことが最大の要因と言えるでしょう。ドイツと同じくクルマ大国である日本は、国産メーカーがシェアの過半数を占めるという、世界的に見て珍しい国です。それも、世界クラスのクルマメーカーが身近にありふれており、“クルマの質”に対して非常に敏感な国民なのです。
また、ユーザーだけでなく日本には優秀なエンジニアも多くいます。当然ながら、日本で販売すれば、大勢の日本人エンジニアが評価・研究対象とするはずです。優秀なエンジニアならではの一般ユーザーとは違った辛口な評価は、BMWにとってこれ以上ないほど参考になるでしょう。いずれにせよ、日本で活発に販売することのメリットは計りしれません。
こういった事情から、BMWは日本市場へ非常に力を入れているのです。販売価格に関しても、試行錯誤を繰り返した上で設定しているのでしょう。では次に、具体的に“どういった点に力が入れられているのか?”について解説していきたいと思います。
日本仕様のすばらしい点
ラインナップの豊富さ
先ほど5カ国の価格を比較しましたが、「×」となっているモデルがいくつかあったことにお気づきでしょうか? これはそのままの意味で、“その国では取り扱っていない”ことを指します。言い換えると、それだけラインナップから削られているということ。実は、コンパクトモデルの「1シリーズ」やワゴンモデルの「3シリーズ ツーリング」は、他国では珍しいモデルなのです。
というのも、国によって売れる車種は異なりますから、本国で売っているラインナップをそのまま他国で売ることはほとんどありません。例えば、メルセデスべンツの「X-Class」はサイズなどの理由から、日本では販売されていない車種です。同様にトヨタなどの国産メーカーでも、海外限定のモデルがいくつかあります。
しかし、BMWの場合は、展開されるモデルラインナップがドイツと日本でほとんど同じというから驚きです。日本で売るということは、右ハンドルへと仕様変更する必要があります。それゆえ手間がかかるのですが、左ハンドルで販売できるアメリカや中国よりも、日本のほうがラインナップが充実しているのです。
ただし、グレードの設定に関しては、細かい点がドイツと異なります。まず挙げられるのは、やはりディーゼルモデルの設定でしょう。ドイツ国内ではディーゼルモデルが過半数を占めていますが、日本ではそこまでの人気はありません。もちろん、日本仕様車にもディーゼルモデルは用意されているのですが、ドイツほど豊富ではないのです。
ところが、ディーゼルモデルが削られている分、日本では特別仕様のエンジンラインナップが用意されていたりもします。ガソリンモデルを充実させることでラインナップの豊富さを保ち、日本ユーザーを退屈させないようにしているのです。他にも、日本の立体駐車場の狭さを考慮して、全高がやや低く設計されているSUVもあり、日本に最適化した設定を用意しています。ここまで手を入れている国は、おそらく日本の他にはないでしょう。
充実したサービス
日本仕様のすばらしい点として、サービスの充実具合についても紹介したいと思います。BMW では、日本法人を設立した1981年より独自のサービスプランを提供しており、そのクオリティを日に日に向上させてきました。その裏には、「輸入車は壊れやすい」「直すのに時間がかかる」といった概念を払拭するため、地道な努力を積み重ねた背景があるのです。
例えば「エマージェンシー・サービス」。これは1988年からBMWが業界初の取り組みとして始めたもので、内容としては様々なトラブルのアドバイス、レッカーや出張修理の手配、事故時の交通・宿泊施設の確保など、多岐に渡ります。BMW正規ディーラーが販売した車種を対象に、24時間年中無休で電話受付しており、ユーザーに対しての真摯な姿勢が伝わってきます。
また、購入時に追加料金を支払うことで受けられる、「サービス・インクルーシブ・プラス」もユーザーとしては安心できます。これはオイルやフルード、フィルターなど、消耗品を定期的に点検してもらえるサービスです。クルマに詳しくないオーナーにとっては、ディーラーできちんと点検してもらえることが何よりも安心です。
ほかにも、「特別な低金利サービス」や「上質な中古車サービス」など、BMWでは独自のサービスを幅広く展開しています。これらを80年代から行っているのですから、どれほど力を入れているのかよく分かるでしょう。
充実した日本のBMW
海外の販売方針については、普段なかなか目を通さない部分かと思います。ゆえに、比べる機会もそうありませんが、こうやって見ると日本のBMWはかなり充実していることに気が付きます。本国ドイツがかなり力を入れて取り組んでいるので、私たち日本人としてもうれしい限りです。
そう考えると、BMWは輸入車ブランドではありますが、なんだか自国メーカーのように誇らしく思えませんか?