時代の流れとともに移りゆくBMW MINIのエンジン

1994年BMWがローバーを買収し、MINIに関する権利を取得してMINIの開発を行っていました。ローバーの経営が悪化したためにローバーを切り離し、開発の終わっていたMINIなどのブランド名を引き続き保有し、生産していくことになります。BMW MINIは輸入車ランキングでも常にトップに入るほど人気があるクルマです。そんなかわいらしく、スタイリッシュなMINIの内部を覗いていこうと思います。中でも重要なエンジンについて見ていきたいと思います。

高く評価されたBMW MINI初代のエンジン

BMW MINIの初代は2001年から発売され、エンジンはBMWとクライスラーが共同出資して設立したトライテック社が製造しています。このエンジンは通称ペンタゴンと呼ばれ、1.6L・4気筒SOHCエンジンで、その特徴としてカムシャフトの本数が挙げられます。現在主流となっているDOHCエンジンでは吸排気バルブが独立した2本のバルブを使うのに対して、SOHCエンジンでは1本のカムシャフトで吸排気を共用しています。カムシャフトが1本であるため摩擦などの抵抗が減り、DOHCエンジンよりも燃費が良くなりやすく、部品点数も抑えることができ小型・軽量で安価に製造することができます。しかし、1本のカムシャフトでは高回転型のエンジンを作りにくいなどの特徴もあります。また、クーパーSにはスーパーチャージャーとインタークーラーが装備されています。スーパーチャージャーとは、機械式過給機を指し、ターボチャージャー(排気タービン式過給機)と区別され、中低速時の出力に優れています。そんな初代BMW MINIのエンジンは高く評価され、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを2003に、テン・ベスト・エンジンを2005年に受賞しています。

第2世代MINIのエンジン「Prince」

第2世代にあたるMINIは2006年にクーパー、クーパーSがイギリスとドイツで発売開始され、日本での発売は2007年でした。この第2世代MINIに搭載されたエンジンは「Prince」のコードネームで呼ばれ、クーパーにはバルブトロニック技術を採用した直列4気筒DOHC1.6Lエンジンが搭載されました。同技術はBMWが商標を持ち、現在のBMWガソリンエンジンの多くに採用されています。一方、クーパーSには通常のバルブ機構を備えた1.6L直噴ツインスクロールターボエンジンが搭載されています。ツインスクロールターボは1500~2500ccのエンジンに多く搭載され、BMW 1シリーズにも採用されています。

時代の変化によって進化する技術

ターボ、いわゆるターボチャージャーは過給機とも言い、エンジンから出た排気ガスを利用してエンジンの排気量以上のパワーを出すことができます。このパワーアップの目安は排気量×1.5とも言われています。過給の考え方は古くからありましたが、ターボの実用化を最初に果たしたのがBMWでした。それが1973年にフランクフルトモーターショーで発表されたBMW2002ターボで、ターボチャージャーを装着することで約30%もの出力アップを果たしました。この当時はパワーアップ手段としてのターボが注目されていましたが、時代の変化と共に燃費性能との両立が求められていきます。そんな時代のニーズによって誕生したのがツインスクロールターボです。

ターボの欠点を補うツインスクロールターボ

ターボチャージャーでは排気ガスを利用するため、機械的機構を通して動力を得るスーパーチャージャーで生じるような機械損失はなく、わずかな排気抵抗が生じるのみです。しかし、排気ガスでタービンを回す力が低回転域では弱く、過給機によるパワーを得るには時間がかかってしまいます。これをターボラグと言い、それを改善するための技術がツインスクロールターボです。ツインスクロールターボでは排気ガスの流路を2つに分割し、低回転域では1つの流路を使い高回転域では2つの流路を使うことで低回転域でのパワーを向上させ、高回転域での排気干渉を低減させることができます。また、「Prince」エンジンは2007~2014年までインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーにおいて1.4L~1.8Lの部門での賞を独占しました。

第3世代MINIの3気筒エンジン

第3世代BMW MINIは2013年にオックスフォード工場で初公開され、その2日後に東京モーターショーで披露されました。BMW MINIとしては初めての3気筒エンジンが搭載されています。かつてイタリアで製造されたイノチェンティ・ミニがダイハツ工業提供の直列3気筒エンジンを搭載しましたが、BMWとしてのMINIでは初の3気筒エンジンとなります。3気筒エンジンと言えば軽自動車というイメージでしたが、最近では3気筒エンジンを採用するクルマが増えてきています。BMWでも1.5Lの3気筒化が進んでいます。

3気筒エンジンのメリット・デメリット

そんな、3気筒エンジンのメリット・デメリットとはどのようなものでしょうか。まず、直列型エンジンではシリンダー(気筒)が直列に並び、シリンダーの中をピストンが上下動し、ピストン下のクランクシャフトを回すことで動力を得ています。このときに1気筒あたりの排気量は400cc~600ccが適正な範囲で、それ以下でも以上でも非効率になると言われています。このため排気量を増やしてパワーを上げるには気筒数を増やすことになります。しかし、気筒数を増やすほど部品点数が増えコストも重量も増えてしまうというデメリットがあります。一方で、同一総排気量のもとでは、直列3気筒は直列4気筒に比べてシリンダー(気筒)が少なくなるので、1気筒あたりの排気量が大きくなります。その結果、1回あたりの爆発が大きくなり、低回転域でのトルク(タイヤを回転させる力)が得やすくなり、エンジン内部での抵抗も減少し、燃費が向上します。また、パーツが少なく抑えられるので、軽量化も図ることができます。しかし、爆発回数が少なくなることで、騒音や振動が発生しやすくなります。エンジンは気筒数が多ければいいというものでもなく、そのクルマの特性に合ったものを適切に配置してあげることが必要です。

時代の流れの後押しをうけた3気筒エンジン

3気筒エンジンはダウンサイジング(小排気量化)の波に乗った形で勢力を拡大していき、気筒数減少のメリットを享受しつつ、ターボチャージャーによるパワーアップも実現しています。そして、直噴化とバルブトロニック技術によるエンジン制御により3気筒特有の振動と音を抑え、エンジンマウントによりさらに振動を抑えることを可能にしました。エンジンマウントはエンジンを搭載するときの車両との連結部分の部品で、防振、制振、支持機能の3つの役割を果たしています。また、アイドリングストップ機構の普及も3気筒エンジンの弱点をカバーすることに一役買っています。このように、技術と時代の流れが合致して3気筒エンジンのBMW MINIが誕生しました。

時代にマッチしたBMW MINI

画像引用:https://www.mini.jp

ただ単に性能が良いだけでは、モノは売れなくなりました。そんな中でもBMW MINIは売れ続けています。その証拠に日本自動車輸入組合が発表した2018年度外国メーカー車新車登録台数ではBMW MINIが3年連続でトップです。時代を敏感に感じ取り時代のニーズを把握し努力を積み重ねているからこそ、世界で愛され続ける製品を作ることができるのだと思います。これからもBMW MINIをどのように進化させていくのか楽しみでなりません。

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