欧州トップクラスの自動車メーカーとして、常に新たな取り組みを続けるBMW。その進化が表れているのは車体だけはありません。近頃「SDGs」という言葉を耳にしますが、より豊かな社会を形成するためBMWではこのSDGsを強く意識しており、社会に多大な貢献をしているのです。
今回は欧州メーカーの代表例として、SDGsへ向けたBMWの取り組みについて簡単にご紹介したいと思います。
17の持続可能な開発目標「SDGs」
まずSDGsについてですが、これは「Sustainable Development Goals」の略で「持続可能な開発目標」を意味します。全17項目の開発目標から成っており、2015年に国連総会によって詳細が定められました。具体的には環境、貧困、経済、平和といった現代社会が抱える課題を解決し、豊かな社会を長期的に持続させることを目指しています。
BMWグループは世界的な自動車メーカーとして、かねてよりSDGsを意識した取り組みを精力的に行ってきました。とりわけ重要視しているのは、住み続けられる街づくりを目指す「SDG11」、持続可能な生産と消費を目指す「SDG12」、気候変動への対策を取る「SDG13」の3つです。それぞれの活動事例をいくつか紹介しましょう。
SDG11. 持続可能な都市とコミュニティを目指して
BMWグループの掲げる目標の1つは、大都市圏のモビリティ(交通環境)を「クルマ」に適した環境から「人」に適した環境へ作り変えることです。都市交通をより快適なものにするため、SDGsが定められるよりも先に「アーバンモビリティ・コンピテンスセンター」(Center of Urban Mobility Competence)を設立し、新たなサービスの開発を行ってきました。
事業の一例として、電気自動車をシェアする「ドライブナウ」(Drive Now)や「リーチナウ」(Reach Now)といったサービスを展開するほか、シリコンバレーに登録オフィスを持つ投資ファンド「BMW i Ventures」を通じて、有望なモビリティ開発事業を行う新興企業にも投資を行っています。
SDG12. 責任ある消費と生産
自動車メーカーとして、BMWグループは消費と生産も重要視しています。CO2排出量の削減はもちろん、生産する車両1台あたりの資源消費量(エネルギー、水、廃棄物など)を継続的に抑えることを目指し、2020年までに45%を削減する方針です。この数字を達成するため、BMWグループでは再生可能エネルギーを積極的に導入しており、2006年から2018年にかけての12年間ですでに38%の削減に成功しています。
これらの取り組みはグループ内だけに留まりません。BMWグループはほかの中小企業にノウハウを提供する会社「デジタルエナジー・ソリューションズ」(Digital Energy Solutions)を2015年に設立し、業界全体で再生可能エネルギーの導入を促進することを目指しています。そのノウハウとはどういったものなのか、現在稼働している中国と南アフリカの工場について、簡単に紹介しましょう。
瀋陽工場(中国)の太陽光発電
BMWは中国市場の拠点として、「華晨汽車」(かしんきしゃ)との合併会社である「BMW ブリリアンス・オートモーティブ」(Brilliance Automotive Limited)を設立しており、遼寧省 瀋陽市にて太陽光発電をエネルギー源とする瀋陽工場を稼働させています。この太陽光発電システムでは最大6.2MWpを発電し、現在の運転電力の55%を賄っています。これにより瀋陽工場では、システム導入前と比較して2,300トン以上のCO2削減に成功しました。これは電気料金を19万ユーロ(約2,000万円)以上も節約している計算になります。
このプロジェクトは2段階を想定しており、現在は第2フェーズが進行中。瀋陽工場では最終的に、これまでの倍にあたる最大15MWpの発電が可能になる予定です。単純な計算で、瀋陽工場の運転がすべて太陽光発電によって賄われることになります。自動車工場が施設丸ごと太陽光で稼働するのですから、どれほど凄いことなのかお分かりいただけるでしょう。
ロスリン工場(南アフリカ)のバイオガス発電
BMWグループでは太陽光発電のほかに、メタンガスから電力を得るバイオガス発電の導入にも力を入れています。その代表例が南アフリカ共和国に拠点を構える「BMW ロスリン工場」です。1973年創業とBMWグループの中でも古い歴史を持つロスリン工場ですが、ここでは2015年よりバイオガス発電システムを導入しました。システムの運用にあたっては、南アフリカでバイオガスエネルギー事業を手掛ける会社「バイオ2ワット」(Bio2watt Ltd)が提携しています。
メタンガスの発生に必要なのはバクテリアと水です。ロスリン工場ではバクテリア源として、南アフリカで飼育される牛の排泄物や、地域の飲食店から廃棄される生ごみを使用しています。水資源は汚水ダムの排水を使用しており、メタンガスの発生過程で出てくる廃棄物は農場で有機肥料として再利用しています。すなわち、資源を有効活用することで環境負荷を限りなく減らしているのです。
ロスリン工場では2018年、バイオガス発電によって施設の31%の電力を供給することができました。これにより約22,000トンものCO2削減を果たしており、電力料金を200万ユーロ(約2億3,000万円)以上の節約に成功したとの報告がされています。今後の方針として、ロスリン工場も2020年までにバイオガス発電によって100%賄うことを目指しています。
SDG13. 気候変動への対策
気候変動への対策として、BMWグループでは温室効果ガスの削減と都市部の大気質の改善に取り組んでいます。ガソリンモデルの効率化はもちろん、電気自動車(以下 EV)とプラグインハイブリッド(以下 PHV)の普及に注力しており、2018年には世界中で14万台以上もエコカーを納入しました。今後すべてのモデルにおいてEVとプラグインハイブリッドモデルを用意する方針であり、モビリティの「電動化」に向けて着々と歩みを進めています。
トルコの都市バスへ技術提供
EVとPHVについて研究・開発を行うサブブランド「BMW i」では排出の少ないモビリティ開発を考え、公共交通機関へも技術提供を行っています。具体的には、i3に使われる電気モーターや高電圧バッテリーを路線バスへ供給することで、環境負荷の軽減に取り組んでいるのです。
例えばトルコの「カルサン社」(KARSAN)では、「JEST ELECTRIC」という小型バスにi3の電動パワートレインを採用しています。乗車定員が22~25人というこのモデルは路線バスとしては比較的小型ですが、55分間で80%の充電が可能で、最大290N・m(29.6kgf・m)という優れたトルクを発揮します。
EV用充電ステーションの建設
EVの普及を進めるにあたり、BMWグループは競合であるダイムラーAG、フォードモーターカンパニー、フォルクスワーゲングループと合併会社「IONITY」(イオニティ)を設立しました。当面の目標として、欧州において合計400基のEV用充電ステーションの建設を目指しています。
IONITYは充電ステーションを、ドイツ、ノルウェー、オーストリアなど高速道路と主要な交通ルートに沿って配置させる予定です。ドライバーが不便しないように、充電ステーションは最低でも120km程度の間隔を空けて建設する方針で、最大350kWの充電容量を考えています。
SDGsに向けて精力的に取り組むBMW
自動車メーカーですので、必然的に「SDG11~13」への取り組みが主要なものとなりますが、細かいものを挙げれば、ほかにもBMWグループでは数々の事業を行っています。例えば、4,600万人以上に食べ物を提供するプラットフォーム「Feeding America」に資金を提供するなどして、貧困や飢餓をなくすための「SDG2」にも貢献しています。2018年開催のキャンペーンでは、これによって100万食分の食事を飢餓に苦しむ人々へ届けることができました。
このように、BMWグループは世界的な自動車メーカーとしてSDGsの取り組みに責任を持ち、非常に精力的な活動を行っています。こういった社会的な取り組みにも目を向けてみると、BMWというブランドにストーリーが感じられますよね。