MモデルがBMW Motorradに初登場 バイクにおける「M」の実力とは

BMWにおける最上の証ともいえるのが“Mモデル”。四輪車においては、多くの名車を輩出してきました。サーキットで培われてきたノウハウが各所で活きた車体づくりによって、市販車では他の追随を許さない程の高い完成度を誇っています。

一方で、BMWの黎明期から四輪車と共に大黒柱として支えてきたのがバイクです。現在では、BMW Motorradから多くのモデルが販売されていますが、“Mモデル”の名を冠したバイクは存在しませんでした。しかし、2020年9月に発表されたのが「M1000 RR」。BMW Motorrad初となる“Mモデル”の登場に、多くのバイクファンが騒然としたことでしょう。そんな流星のごとく現れた「M1000 RR」を今回は詳しく見ていきたいと思います。

最強の「M」を追求する一台

画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

BMW Motorrad初となるMモデル「M1000 RR」が発表され、多くのファンが驚いたのではないでしょうか。それもそのはず、これまでMモデルが発売される可能性は低いと目されていたように、BMW Motorradでは2018年末までMパフォーマンス・パーツやMオプション装備品だけが販売されてきたからです。

中には、Mオプション装備品をつけたらMモデルと大差ないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、Mモデルの神髄は設計の段階から緻密に計算されているところにあり、従来のMオプション装備品だけでは体現し得なかった高いパフォーマンスを実現しているところで大きく異なってくるのです。

「M RRは、BMW Motorrad初のMモデルです。現行のS 1000 RRをベースとしたM 1000 RRは、徹頭徹尾、カスタマー・スポーツからWSBKまでのモーター・スポーツの要件に対応できるような製品内容となっています。これは、2021年以降、はっきりとラップ・タイムとして計測できるようになるでしょう」とBMW Motorrad SおよびKモデル・シリーズ責任者のルディ・シュナイダー氏が述べているように、M1000RRはS1000RRをベース車としており、WSBK(スーパーバイク世界選手権)などのレースに参加することも念頭に置いて設計されています。

では、具体的にどのようにハイパフォーマンスモデルとして、レースに使えるまでにS1000 RRから変化を遂げているのか。一つ一つ確認していきましょう。

新型エンジンはダイナミクスに

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M1000 RRに搭載されているのは、水冷式4気筒直列エンジン。レーシング・スポーツエンジンとして設計されているため、可変バルブ・タイミングとバルブ・リフトには“BMW ShiftCam”が採用されています。R1250 GS Adventureにおいて初めて採用されたものであり、5,000rpmを境にして低負荷用のカムと高負荷用のカムに切り替わるという仕組み。充填効率が高まることで燃費向上だけでなく、どの回転域でもトルクパワーが増すという恩恵を受けることができるのです。

最高出力212PS/14,500rpm、最大トルク113Nm/11,000rpm。なんと、最高回転数は15,100rpmとレーシング・スポーツエンジンに相応しいスペックになっています。これを支えているのが、マーレ社製の2リング鍛造ピストン。ピストンリングは、軽量化を図って2本になっており、S1000 RRと比較すると1個あたり12gも軽くなっています。

ほかにもコンロッドをチタンへと変更するなど、エンジン内部の各パーツ細部の軽量化・効率化を追求することで、S1000 RRの207PSを212PSにまで引き上げています。まさに、レースで戦うためのモデルとして設計にかけられた情熱には脱帽ものです。

待望のウイングレットを装着

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MotoGPやWSBKでもはや見慣れた光景となっているのが、ウイングレット付のバイクが走り抜ける姿。ドゥカティ「パニガーレV4R」やホンダ「CBR1000RR-R」などにも装着されています。

もともとは航空機に使われていたウイングレットという名称をドゥカティが用いたことにより定着しました。主にレース特有のスピードの速さによってウイリー走行のようになってしまうことを防ぐ役割があり、低中速状態ではブレーキングの補助としても使われています。

これにより、トラクション・コントロール制御の介入を最小限に留めた分だけ、加速力が増してラップ・タイムの短縮につなげるという狙いもあります。M1000 RRでは、クリアコートが施されたカーボン製となっており、操舵性に与える影響も最小限に留めるよう配慮されていることも特徴です。

性能につながるスピーディーなデザイン

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M1000RRで気になるのはなんといっても、まさにレーシングバイクと一目で分かるようなデザイン。ベースとなっているS1000 RRを踏襲しながらも、前述したウイングレットがよりワイドな印象を感じさせてくれます。

そんな足元をしめてくれるのが“M”という文字が刻印された、ブルーアルマイト加工のブレーキキャリバーです。このブレーキキャリバーはレース仕様となっており、Mモデル特注のカーボンホイールと合わさることで高い制動能力を実現しています。さらに、リアキャリバーはクイックリリースにも対応しており、レース中のホイール交換も迅速に行うことができるなど、見た目以上の実力を秘めています。

ブレーキキャリバー部分にもMの文字
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また、ホイールも“Mカーボンホイール”と呼ばれるMモデル特注のものとなっており、約1.7kg軽くなっています。横に伸びるフロントフォークは45mm径のブラックアルマイト加工で、スタイリッシュな雰囲気を醸し出しています。

さらに、リアサスペンションも新しく専用設計された“フルフローター・プロ・キネマティクス”というもので、スイングアームピポットを1mm幅(-2mm~2mmの範囲)で調整可能です。

ほかにも、M1000 RRの上級グレードとなるMコンペティションパッケージも用意されており、カーボンパーツが増えるだけでなく、アルムニウム削り出しや軽量化など細緻な工夫が各パーツに施されます。

S1000RRから継承した使いやすさ

センターコンソールで集中管理を行いやすく
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M1000 RRの装備を見ているとレースに最適化されており、普段のツーリングや公道走行には適さないのではと思われるかもしれません。しかし、細かな部分の使いやすさというところは無くさずに、しっかりとS1000 RRから引き継がれています。

例えば、5AhのUSB電源ソケットやグリップヒーターなど、ツーリングには嬉しい便利機能が搭載されています。ほかにも、ライディングモードを5つ(レイン、ロード、ダイナミック、レース、レースPro)から選択できる電子制御も採用。電子スロットルやABS、ASCといった安全性能に直結する部分も細かく設定することが可能です。

S1000 RRのプラットフォームを踏襲しているため、ハンドルバー右側にあるモードボタンから選択操作できることになるでしょう。とくに、R1200 GSにEnduro Proモードが用意されたように、M1000 RRにはライディングモードやABS、ASCに関しても専用のプリセットが用意されるのではないかと予想されます。

ほかにも、RDC(タイヤプレッシャーモニタリングシステム)による空気圧の常時監視などによって、レース以外のシーンでも使いやすさや安全性を提供してくれることでしょう。

日本での販売が待ち遠しい一台

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ここまでM1000 RRのスペックやデザインを確認してきましたが、すでに圧倒的なパフォーマンスを発揮する一台に仕上がっていることが伝わったかと思います。ただ、気になるのは販売時期や価格です。

現時点(10月末執筆)では、2021年初夏販売予定とだけアナウンスされており、正確な販売時期は明かされていません。また、価格については500万円と先行販売される海外よりも少しだけ高い価格設定になっています。

また、日本モデルとして販売される際に、スペックが制限されることがあることも留意しておかなければなりません。

ただし、これらの不確定要素があったとしても気にならない程に、特別な一台に仕上がっているM1000 RR。販売予定の来夏までは時間がありますが、今は続報を楽しみに待つこととしましょう。

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