ほんとに無料でいいんですか?スズキの聖地、スズキ歴史館に行ってみよう

浜松市、スズキの本社に隣接してスズキ歴史館という施設があるのをご存知でしょうか。その名の通り初代アルトを始め、スズキファンならおなじみの名車がその時代の雰囲気に合わせて展示されたり、現在のクルマづくりの工程がわかる展示がされたりと、子どもから大人まで楽しめる施設となっています。スズキファンなら絶対、ファンでなくても自動車、バイク好きなら楽しめること間違いなしのスズキ歴史館について解説していきます。

大人の社会見学? 開発から生産までスズキのクルマづくりも学べる

画像引用:https://www.suzuki-rekishikan.jp

スズキ歴史館の1階には現行の車種が展示されており、ちょっとしたショールームのような雰囲気です。新車については実際に運転席に座ったりすることも可能なので気になっている車種があれば、「ディーラーだとちょっと気が引ける」という方も遠慮なくチェックしてみてはいかがでしょうか。デビューしたばかりの新型のハスラーも展示されていますよ。

バイクの展示はクルマとは打って変わって、歴代のレーシングマシンがずらりと並べてあります。もちろん触ったりまたがったりすることはできませんが、間近でしっかりディテールも確認できるのでマニアにはたまらないでしょう。

スズキのオリジナルグッズも販売されていますが、こちらはショップではなく、なんと自動販売機です。種類も豊富で価格もさほど高くないものが中心なので、ちょっとしたお土産にいかがでしょうか。

2階に上がると、そこはスズキ車の生産工程を体感できるフロアになっています。ここではクルマづくりの始まりとなる企画会議の段階からデザイン、設計や生産などの工程がコンパクトにまとめられて展示されており、地元の子どもたちも社会見学で訪れることが多いとのことです。普段はなかなか見ることのない衝突実験の様子や、通常は見えない車体に施された安全装置についても詳しい解説がビジュアルつきで表現されているので、大人が見ても新たな発見があり楽しめるのではないでしょうか。

もちろん実際の開発・生産の現場に比べればコンパクトな展示となっていますが、その中でも部品の鋳造・機械加工や樹脂パーツの成形、そしてそれらが生産ラインで組みづけられてエンジンが搭載され、シートやドアを取りつけて新車が完成するまでの流れが、要領よくまとめられています。実際の生産ラインは長く、しかも基本的にはパーツの組づけだけになってしまうので、そのパーツがどのようにつくられているのかまでの展示をする例は多くないので貴重です。

知っているようで知らないスズキの歴史

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3階はスズキの歴史を年代別に振り返るフロアになっています。「創意」(1909~1945年)、「開拓・勤勉」(1946~1963年)、「実行」(1964~1977年)、「革新・貢献」(1978~1985年)、そして「挑戦」(1986~現在)とそれぞれの年代にタイトルがつけられています。

まずは始まりの「創意」のコーナーから見ていくことにしましょう。現在の社名はスズキ株式会社ですが、1990年10月に改名されるまではスズキ自動車工業株式会社、そしてそれ以前、創業時にさかのぼると社名は鈴木式織機株式会社でした。トヨタ(豊田自動織機)と同じく、スズキも創業者の鈴木道雄氏が自動織機のメーカーからスタートして、現在の自動車産業に発展していったのです。3階に上がるとすぐに、創業当時につくられた自動織機などの製品を目にすることができます。

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その次は「開拓・勤勉」のコーナーになります。1950年代に入り、自動織機で培われた技術を活かし、私たちにもなじみのあるスズキのバイクがいよいよ登場します。クルマのフレームにエンジンをくくりつけたような1952年の「パワーフリーE2」から始まり、現在のスズキバイクのオリジンとも言えるコレダ(もちろん由来は「これだ!」から)といった創業期の貴重な車両が展示されています。しかも展示されている車両の種類が非常に多いことから、どんな風にスズキのバイクが発展していったのかが一台一台を眺めているとよく分かるでしょう。

四輪車の登場もこの頃です。日本で最初の本格的な軽四輪自動車と言われるスズライトSS(1955年)ももちろん展示されています。この年代のバイクやクルマはもともとの生産量も少なく、現存しているだけでも貴重なのですが、スズキ歴史館では徹底的なレストアにより、まるで新車のような状態にまで復元されています。

高度経済成長期を迎えユニークな車種が続々登場!

「実行」のコーナーではまさに日本が高度経済成長期を迎えた頃にあたり、私たちにもなじみのあるクルマが増えてきます。バイクでいえばGT380(1972年)やGS400(1976年)といった、現在ではプレミアム価格で取引されるバイクも多数展示されています。中でも見どころは、国産車唯一となるロータリーエンジンバイクRE-5でしょう。ロータリーというとマツダのイメージが強いですが、この時代には各社が新世代のエンジンとしてロータリーの市販化にチャレンジしていました。

そんな中、スズキは軽量コンパクトなロータリーの特性に目をつけ、クルマではなくバイクでの市販化を実現したのです。ただし、直後に起こったオイルショックや、燃費や熱といった現在でも完全には解決できないロータリーの弱点が問題となって、わずか1年で生産中止となった悲劇のモデルです。

同時期の自動車に目を移すと高度経済成長期を迎え、それまでの実用一辺倒から少し進んで遊び心を加えた軽自動車が登場してきました。横から見ると前後が同じデザインというユニークな軽バンのキャリイや軽でありながらウェッジシェイプで低いフォルムのフロンテクーペがその代表格です。

この2台、実はイタリアの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ氏がデザインを手掛けているのです。ちなみにロータリーバイクのRE-5もジウジアーロのデザインだったことから、当時からスズキはデザインにかなり力を入れていたことがよく分かります。

なお、新型が大人気のジムニーも初代が1970年に登場しています。スズキ歴史館では初代の前期(LJ10)、中期(LJ20)及び後期(SJ10)のクルマを並べて展示しているのでジムニーファンなら見逃せないですね。

「アルト47万円」の初代アルトは給料4ヵ月分

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次は「革新・貢献」のコーナーです。革新といえば思い起こされるのが1979年登場の初代アルトで、販売価格が全国統一で47万円だったことには誰もが驚きました。スズキ歴史館にはもちろん初代アルトも展示されていますが、「アルト47万円と比べてみよう」ということで当時のラジカセなどの家電製品やLP、雑誌が並べてディスプレイされています。それによるとテレビは14万円、ビデオデッキは28万9千円なので、テレビとビデオを同時に購入すると初代アルトの価格に近くなります。

同時代の他のクルマの価格も表示されていますが、当時のベストセラーカーだったトヨタ・カローラ(1.5L 4ドアセダン)が92.4万円、リッターカークラスのトヨタ・スターレット(1.3L 3ドアハッチバック)が82.3万円、そして軽乗用車のスズキ・フロンテ(0.55L 2ドアセダン)が65.5万円だったことから、いかに初代の「アルト47万円」が衝撃的な価格だったかがお分かりいただけるのではないでしょうか。

厚生労働省の統計調査で当時の大卒の平均初任給を調べてみると、109,500円でした。当時の大卒者だと、カローラなら税金なども含めると購入資金をためるのに10ヵ月かかりますが、アルトなら4ヵ月ちょっとで購入できることになりますね。

そしてこの時期は空前のバイクブームとも重なります。展示されているバイクもレーサーレプリカブームの先駆けとなった初代RG250γ(1983年)やGSX-R(1984年)といったアラフィフの方なら胸が熱くなるような名車が展示されています。そして先頃復活したカタナの元になったGSX1100Sカタナももちろん展示されています。デビューは1981年ですが展示されているのは2000年のファイナルエディション(最終生産バージョン)です。

クルマ以上に移り変わりの激しいバイク業界にあって、なんと20年以上にもわたり途中休止期間を挟みながらも生産されてきたことになりますが、その理由はなんといってもこのデザインでしょう。最初に発表されたケルンモーターショーでは、あまりの斬新さに「ケルンの衝撃」とまで謳われたカタナのデザイン、今見てもその魅力は色あせていません。

スズキの挑戦はつづく

画像引用:https://www.suzuki-rekishikan.jp

最後のコーナーには「挑戦」(1986~)と名づけられています。現在のハイトワゴンの始まりとも言える初代ワゴンRや世界戦略車の初代スイフトといった市販車や燃料電池車(ワゴンR FCV)など今も続くスズキのチャレンジスピリットを思い起こさせる展示となっています。

挑戦といえば、スズキ歴史館に展示されているのは初代アルトや初代ワゴンR、カプチーノといった今も名車と呼ばれるクルマはもちろんですが、マイティボーイやX90といったどちらかと言えばマイナーな車種も展示されています。

そういった世間的には知名度の低い車たちもしっかりときれいにレストアされて展示されています。確かに市場には受け入れられなかったものの、それぞれ新しい発想で開発されてきたもので、そういった意味では初代アルトや初代ワゴンRと同じです。アインシュタインの名言に、「失敗したことのない人間というのは、挑戦をしたことのない人間である」というのがありますが、こういったマイナーなモデルの展示もスズキのチャレンジスピリットの表れ、というと少し大げさでしょうか。

なお、このコーナーには珍しいビターラ(初代エスクード)の1997年にドイツで発売された限定モデルも展示されています。なんと有名なロックスターのエルトン・ジョンとのコラボモデルで、本人のサインも入った貴重なものです。ちょっとさりげない展示なのでファンの方はお見逃しなく。

すべて無料!電車でも便利なアクセス

画像引用:https://www.suzuki-rekishikan.jp

大事なことを伝え忘れていましたが、スズキ歴史館の入館料などはすべて無料です。ただし事前の予約は必要なので、行く前には必ずスズキ歴史館のwebにアクセスしてください。予約については6ヵ月前から受けつけています。営業時間は9時から16時半まで、休館日は毎週月曜と年末年始、夏季休暇の日もあるので確認をお忘れなく。

スズキ歴史館へのアクセスですが、電車ではJR東海道本線の高塚駅から徒歩10分となっています。こういったクルマ関係の施設は一般的に駅からは遠い場所にあることが多いので公共交通機関が利用しやすいのはありがたいですね。

クルマを利用する場合には東京方面からだと東名高速浜松ICから約30分、名古屋方面からは東名高速浜松西ICから約30分となっています。カーナビで設定する際には隣接するスズキ本社(静岡県浜松市南区高塚町300)を入力すると良いとのことです。駐車場も無料ですが、数に限りがあることから予約の際には駐車場の予約も併せて行っておくと安心ですね。

スズキ歴史館の周辺には自衛隊の航空機などを展示した、こちらも入場無料のエアーパーク(航空自衛隊浜松広報館)やマリンスポーツやサイクリングも楽しめる浜名湖、三ヶ日温泉などもあります。

また、うなぎや日本で1位2位を争うという浜松の餃子、静岡でしか味わえないというハンバーグで有名なレストランなど、地元グルメも豊富です。

今度の休日、ちょっと足を伸ばしたドライブプランを立ててみてはいかがでしょうか。

スズキ歴史館オフィシャルサイト

 

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