BMWが次世代車を大幅値下げ 新グレード誕生の背景とは

いまや環境問題に関心のない自動車メーカーは世界中を探しても存在しないと言えるほど、地球環境に配慮されたクルマづくりが当たり前となっています。ヨーロッパはもちろんのこと日本でも公害問題が取り上げられ京都議定書が制定されて以降、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)を排出しないエコカーが誕生。エコカー減税や補助金などの制度が拡充されている現在では、自動車市場の主力はガソリン車から電気をメインとしたPHEVやEVに変わりつつあります。

そのような状況で存在感を強めているのが、高級車メーカーとして日本でも根強い支持を得ているBMWです。そして、高級車路線をとっているBMWが2020年5月2日から開始したのが「EDITION JOY⁺」という名の新グレードを設け、次世代車を最大約60万円もの値下げに踏み切るという大胆な戦略です。この思い切った判断の背景には何があるのでしょうか。そして、何よりも気になるのは「EDITION JOY⁺」という新グレードはどのようなスペックになっているのか。気になるポイントを見ていきたいと思います。

なぜこのタイミングで新グレードを追加?

画像引用:https://www.bmw.co.jp

今回の「EDITION JOY⁺」は2020年5月2日から適用されたのですが、そもそもなぜこのタイミングで値下げとなる新グレードを追加したのでしょうか。そもそもBMWは環境問題に対する危機意識が高く取り組みに熱心なメーカーで、意欲的に環境性能を意識した次世代モデルの開発を行っています。例えば、2014年に市販化している「BMW i3」はもちろんのこと「BMW Vision iNEXT」や「BMW コンセプト i4」といった”ピュアEV”と呼ばれるモデルを多く開発しています。

BMW独自のクリーン・ディーゼル技術
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また、ヨーロッパを中心に根強い人気のあるディーゼルエンジンを搭載したモデルについても一定の環境性能を満たしている「BMWクリーン・ディーゼル」を採用することで、問題となるNOxやPMを吸蔵し有害な物質を排出しないように工夫が施されています。

このようにガソリン車と電気自動車の両方で環境性能に配慮したモデルを開発しているBMWですが、将来的にはガソリン車よりもPHEVやピュアEVのラインナップを増やすことを度々明言しています。このような背景もあって、BMWは2020年4月11日~4月12日に「次世代車に関する意識調査」というアンケートを実施しています。

価格、燃費、ボディタイプ・サイズを重視するという結果に
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これは1カ月に1度以上クルマに乗る、20歳~69歳の男女600名を対象に行われており、世代間の意識の違いや価値観が反映されたユニークな結果が報告されています。例えば「次にクルマの購⼊・買い替えをするときに重視するのはどのような点ですか?」という質問に対し、「価格、燃費、ボディタイプ・サイズ」を優先するとの結果が集まりました。

世代によって求めているものが異なることが判明
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一方で、年齢別に同じ質問を分析すると若年層はデザイン性を、年齢が高くなるにつれて安全性能と環境性能の両方を重視しているということが分かったのです。

次世代車最大のネックは車両本体価格という声が多数
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さらに「価格を気にしなくてよいとしたら、環境にやさしい⾞と⼀般的なガソリン⾞のどちらが欲しいと思いますか?」という別の質問では、約7割が“環境にやさしいクルマ”を求めているという結果に。これに加えて、「次世代車に乗らない理由はなんですか?」という質問では約半数以上が“車両本体価格が高い”と感じているという課題もあらわになりました。

また、2020年第一四半期の日本における販売台数が前年比でマイナスとなっている中で、PHEVやEVモデルだけは前年比プラスとなっているという現状もありました。そこで、BMWは環境性能の良い次世代車が欲しいが価格がネックになっていることを解消するために、大幅な値下げをした「EDITION JOY⁺」という新グレードを設ける経営戦略を採ったのです。

「EDITION JOY⁺」で何が変わるのか

モデル名 「EDITION JOY⁺」価格 従来価格 差額
i3 499万円 554万円 55万円
330e M Sport 617万円 667万円 50万円
530e M Sport 822万円 872万円 50万円
745Le xDrive M sport 1,529万円 1,584万円 55万円
745e M sport 1,296万円 1,346万円 50万円

価格改定が行われるモデルを抜粋

新たな「EDITION JOY⁺」というグレードは、従来モデルよりも価格が低く設定されていることが最大の特徴です。実際に上記のラインナップを見てみると、「EDITION JOY⁺」の対象はクリーン・ディーゼル搭載モデルとPHEV・EVモデル、環境性能の良いものに限られているものの、最大で約55万円の値下げが行われていることが分かります。ただし、「X5 xDrive45e」や「i8」については、今回の「EDITION JOY⁺」が適用されていないため価格等は据え置きとなっています。

ここで気になるのは“値下げにより装備の質が下がっていたり、標準装備のものがオプション装備になっていたりするのではないか?”という点です。多くの人が気になっている点でもあると思いますが、なんと大幅な値下げが行われているのにも関わらず「EDITION JOY⁺」の全モデルにおいて、従来どおりのスペックと装備から変更はありません。

つまり、従来モデルを「EDITION JOY⁺」と変更することで価格は下げながらもクオリティは維持する。そうすることで、BMWの環境性能に配慮した次世代車を多くの人が購入しやすく、且つ体感できるクオリティは変わらないということを実現しているのです。

ライフスタイルに楽しい変化を


価格は下げながらもクオリティは変わらない「EDITION JOY⁺」ですが、購入したオーナーのライフスタイルに楽しい変化をもたらしてくれることでしょう。とくに、初めてPHEVやEVモデルに乗ってみると、ガソリン車にはない電気で走る楽しさと利便性の高さを感じるとこができます。

例えば身近な買い物やお出かけをするにしてもガソリン車に乗っているときには、ガソリンの残量や燃費を気にする人も多いのではないでしょうか。とくに、近・中距離は燃費も上がりにくくガソリン代を考えると、バスや電車を使ったほうが安上がりな場面も意外と多いものです。そんなときでもPHEVやEVモデルならガソリンを消費することなく電気だけで賄うことができるため、近くの買い物やちょっとしたドライブでも燃費やガソリン代を気にすることはなくなります。

また、PHEVモデルの場合は長距離ドライブでも燃費が高くなる高速道路ではガソリンを使い一般道では電気を使って走行するなど、ガソリン車の場合よりも経済的な走り方も可能なため環境にやさしいだけでなくお財布にも優しいクルマなのです。

一方でEVモデル「i3」の場合はガソリンを併用して走ることはできませんが、アクセルとブレーキを1つのペダルで操作することができることを忘れてはいけません。「i3」を実際に運転したことがない人にとっては驚きの技術かもしれませんが、なんと「ワンペダル・フィーリング」と呼ばれるアクセルとブレーキを1つのペダルで操作できる機能が搭載されているのです。運転をしているときの感覚は、一般的なエンジンブレーキを想像すると良いかもしれません。ペダルを踏めば加速をし、離すとブレーキをかけながらバッテリーへ充電もできるという一石二鳥の利便性の高い機能を実現しています。もちろん、最初のうちは慣れが必要ですが、一度味わうと一般的なアクセル操作に戻れなくなるような未来のドライブを楽しめるのも次世代車ならではの醍醐味です。

「EDITION JOY⁺」が指し示す未来

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今回の「EDITION JOY⁺」は次世代車の普及につなげる役割があるだけでなく、BMWが目指す未来のクルマの在り方を多くの人に知ってもらうという役割も担っているのです。2001年以降のBMWはサスティナビリティな戦略目標として掲げている“ゼロ・エミッション”(CO2の排出を一切行わないこと)なクルマを実現するために、PHEVやEVモデルの開発と普及に邁進しています。

そして、その先にはあらゆる場面ですべての人が自分らしくドライブを愉しみながらも、環境と調和する世界の実現を目指しています。新しく導入された「EDITION JOY⁺」は、新たなる時代の「駆け抜ける歓び」を目指すための大きな一歩となることでしょう。

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