私たちの生活は時代とともに豊かになり、便利になっています。その一方で地球の環境を破壊し、悪影響を及ぼしている事実もあります。その結果、近年では多くの自然災害が発生し甚大な被害をもたらしています。私たちは自分たちだけでなく地球に対しても優しくあらねばならないときに差し掛かってきているのではないでしょうか。そんな環境保護の観点からBMWの取り組みや考え方を見ていこうと思います。
時代を先取る「Efficient Dynamics」
BMWは1990年代から「efficient Dynamics」をかかげ、燃料消費量と排出ガスを最小限に抑え、走る歓びを最大限に向上させるという戦略をとってきました。まだ市場がサステナビリティを意識するような時代ではなかった頃からの取り組みで、まさに時代を先取る企業と言えるでしょう。このサステナビリティは持続可能性という意味で、環境・経済・社会のバランスをとることで、世の中を持続可能な状態にしていくことを目的にしています。この3つの側面から事業活動を考え、経済的な利益を出しつつも、環境保全や社会貢献に取り組んでいくという思想です。
BMWの環境への取り組み
BMWの取り組みとして、米国サウスカロライナ州のスパータンバーグ工場では、2003年に埋め立て処分場で発生するメタンガスを回収・浄化・圧縮するプログラムを本格始動しました。同プログラムにより工場のエネルギー需要全体の実に50%以上を賄っています。2009年には追加投資を行い、この埋め立て処分場によるCO2排出削減量は年間約9万2000トンに及びます。さらに工場内の材料輸送には水素燃料電池運搬機を使うという徹底ぶりです。その甲斐もあってBMWはダウ・ジョーンズ・サステイナビリティ・インデックスで世界で最もサステイナブルな自動車メーカーに選定されています。また、2017年以来全ての欧州拠点では再生可能エネルギーからの電力購入を行っています。
クルマだけにとどまらない幅広い取り組み
持続可能性という観点からリサイクルにも積極的に取り組み、クルマのリサイクル・プロセスを開発し続けています。また、「リサイクルを前提とした設計」という方針の下、ライフサイクルが終わった部品を再利用できるようにするための研究開発に取り組んでいます。BMWの素晴らしいところは、環境への取り組みがクルマの製造工程だけにとどまらず、部品の輸送から納車までの重要な役割を担っている海運物流に関して、とくに船舶リサイクル・プロセスにも目を向けているところです。BMWは自動車メーカーとしては世界で初めて「船舶リサイクル透明性イニシアティブ」に参加しています。船舶リサイクルの多くが南アジア諸国で沿岸部の干満差を利用し行われ、解体作業時に発生する残油・汚水などにより環境破壊や人体健康被害が発生しています。「船舶リサイクル透明性イニシアティブ」では国際規制が存在しない船舶リサイクルにおける今後の課題を洗い出すとともに、船舶リサイクルの推進と現状の透明化を図ることを目的として行われています。
忘れていない「駆けぬける歓び」
BMWは環境への配慮だけで満足はせず、顧客への配慮も忘れていません。BMWならではの「駆けぬける歓び」を毀損せずにサステイナビリティを実現させています。それが「Efficient Dynamics」の理念に基づいた革新的な技術であるBMW eDriveテクノロジーです。その構成要素は電気モーター、高性能リチウムイオン・バッテリー、インテリジェント・エネルギー・マネジメント・システムの3つです。これら3つの要素が連携し「Efficient Dynamics」を実現可能にしました。
BMW eDriveテクノロジー
電気モーターとツインパワー・ターボ・エンジンを組み合わせることで、電気モーターがエンジンの駆動力をアシストし、ダイナミックな加速性能を実現しています。高性能リチウムイオン・バッテリーは冷却システムの利用により優れた耐久性を実現しています。さらに、クルマで使用された後、再生可能エネルギーの中間貯蔵を可能にし、住宅や商業施設などのエネルギー効率を高めるために再使用できます。このバッテリー技術はグリーンエネルギー移行への重要な役割を担っています。また、ドイツの船外機メーカーではBMW i3のバッテリーを従来のボートの動力源に代えて使用するなど、幅広い分野での活躍が期待されています。そして、電気モーターやエンジンなどの駆動系統をインテリジェント・エネルギー・マネジメント・システムが制御することによって高いエネルギー効率を実現しています。また、ブレーキ・エネルギー回生システムによって、アクセルを踏み込んでいない間や、ブレーキをかける際に生じる運動エネルギーや熱エネルギーを電力に変換し、バッテリー充電量を最大50%まで増やすことを可能にしています。
電気自動車拡大による成果
このような取り組みによって、BMWは2018年、1995年以降のヨーロッパにおける量販車の平均CO2排出量を42%以上削減することができたことを発表しています。BMW AG取締役会会長のハラルド・クルーガー氏は「この進歩は、当社のeモビリティ戦略が成果を上げていることを示しています。私たちは電気駆動の量販車の拡大を徹底して推し進めています。同時に、従来の駆動技術でも引き続き燃料を節約する革新技術に取り組んでいます」と述べました。2017年の時点でBMWグループでは電気駆動車を10万台以上販売し、ヨーロッパにおける電気駆動車の新規登録割合の21%を占めています。
揺るがぬ姿勢
2017年6月1日トランプ大統領はパリ協定をからの離脱を表明しました。これに対しBMWは長年にわたって温室効果ガス排出量削減にゆるぎない取り組みを行っていること、環境と経済的繁栄を守ることは将来的に不可欠であること、地球温暖化に立ち向かうには、国、地域、政府、民間すべてのプレーヤーの協力が必要であることを示し、引き続き温室効果ガスの削減と地球温暖化対策促進に取り組んでいくという姿勢を明らかにしました。
勇気を与えてくれる企業、BMW
グローバル企業ともなると、その国ごとの法律、規制、文化的特色などの面からも戦略を立てることが必要で、地球全体に対する責任も生じてきます。1つの変化を起こすことで、さまざまな側面に影響が及ぶことになるので、変化に臆病になり安定を求めてしまいがちになります。しかし、BMWは現状に甘んじてしまうような緩やかな衰退を選択せず、果敢に変化を求め、バランスをとりながらも発展を遂げてきました。その姿勢は私たちにも変化を恐れない勇気を与えてくれます。