低燃費は時代の要請ではあるが…シルキーシックスの価値を再考する

現代は国産車だけではなく、欧州車も燃費の良いクルマが売れる傾向が強くなっています。その中でBMWも1シリーズなどに見られるダウンサイジングしたエンジンをターボで回す工夫や、ハイブリッドのオプションを増やすなど燃費対策をしっかり行っており、強い魅力を放っています。しかし、燃費の問題がクルマ選びにおける重要な要因にまで登りつめるという状況はいつから起こったのでしょうか?

グローバルな燃費問題

日本国内の戦後史を追えば、公害問題で大変だった高度経済成長期よりも、オイルショックでガソリンの値段がどうなるか分からなかった頃よりも、むしろ今この時代において最も燃費に敏感になっているというのはちょっと理屈にあわない気がします。つまり国内問題というよりはグローバルな問題であるということが考えられます。

グローバルに考えた場合、この燃費問題は2つの観点から見ると状況がよく分かります。それは環境問題と経済問題の2つです。

「地球環境を守ろう」という考え方は20世紀終わり頃から高まりを見せ、いまだに議論はあるものの温室効果ガス(二酸化炭素など)や窒素酸化物による大気汚染の問題は自動車メーカーにとっても重要な課題になりました。とりわけ二酸化炭素については国家レベルで「排出権」なるものが真剣に売買されるほどに政治的にも重要な問題でもあります。自動車メーカーはエンジンのダウンサイジングとターボチャージャーでエンジンをぶんぶん回すことによってこの問題を解決する方向に動き、電気自動車やハイブリッドの工夫も行われ、日本においてはハイブリッド型エンジンが先行する形で環境対応する流れが作られました。

同時に、21世紀初頭に起こったリーマンショックなどの金融恐慌は日本でも大きな爪あとを残し、クルマの購買検討の際に「燃費」という問題は重要な経済的因子として扱われるようになりました。そして「カタログ燃費」が重要な要素になっていったのです。

名作エンジン「シルキーシックス」

画像引用:https://www.bmw.co.jp

日本の高級車は従来、機能や燃費、アクセサリーを充実させる方向に進化していき、ハイブリッドの進歩も日本の風土に合ったものでした。ドイツ車の場合、フォルクスワーゲンはエンジンのダウンサイジングにいち早く取り組んだイメージがありますが、BMWの1シリーズなども負けず劣らず燃費向上の努力を続けており成果をあげています。

しかし、歴史的に見てドイツ車の魅力は燃費向上と方向性の違うところにあったのもまた事実です。やはりアウトバーンの制限速度なしの直線路をいかに快適に走ることができるか、ということがドイツ車にとっての命題の1つとしていつの時代も掲げられています。その目的を果たすために様々な工夫、とくにエンジンの開発競争が繰り広げられてきました。

いわゆる「名作エンジン」と呼ばれるものがクルマの歴史上いくつもありますが、BMWが誇る直列6気筒エンジン、「シルキーシックス」は間違いなくその歴史に名を残すエンジンの1つでしょう。技術的なことになりますが、完全バランス(理論上、慣性力振動も偶力振動も発生しない)エンジンは直列6気筒エンジンかV型12気筒エンジンの2つしかありません。

エンジンはピストンが上下運動することでクランクシャフトを回転させ、動力化します。複数あるシリンダー、ピストン、それぞれの爆発間隔によって振動が発生するわけですが、直列6気筒とV型12気筒の爆発間隔はそれぞれの発生する振動を打ち消しあうため、バランサーなどを使わなくともスムーズな走りが得られるというわけです。

ただし、直列6気筒は全長が長くなることで捻じれ剛性や慣性管理が難しくなることと、最近の安全性確保のためのクラッシャブルゾーンの必要性から淘汰される傾向にありました。その状況に追い打ちをかけたのがまさに排ガス・燃費の問題です。

M3のE46(3代目)は、最後の自然吸気直列6気筒エンジンであることが評価されているため、希少価値があります(推定国内残存台数は数十台程度と言われています)。「シルキーシックス」と言う場合、自然吸気のもののみを指す「(狭義の)シルキーシックス」であることがBMW愛好家の中では主流だと思われており、価値が生まれています。また、ターボチャージャーがついた直列6気筒エンジンとは一味違い、自然吸気のほうがエレガントな走りとされています。

進化と淘汰の時代だからこそ

画像引用:https://www.bmw.co.jp

ターボ直列6気筒エンジンを搭載したモデルは最近少なくなってきています。クルマは時代の変化に合わせて多様な進化をとげ、淘汰され、また進化して、を繰り返すものですが、時代の中に埋もれていく名作エンジンは惜しいものです。できることであればBMWにはシルキーシックスも作り続けてもらいたい、そしてそれをいつの時代でも乗り続けたいものです。

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