MINIの原点は3ドア、そう思っていても家族が増えるとやはり5ドアの必要性を実感する機会が増えるでしょう。
そんな時、まず候補に挙がるのがMINIの5ドアとステーションワゴンのクラブマンです。見た目では近い印象のあるこの2台ですが、実はクルマの基本となるプラットフォームが異なるので大きな違いがあります。リアドアのあるMINIに乗りたいけれど、どちらを選べば良いのか、それぞれの特徴や違いを解説していきます。
MINIの原点は3ドアだけれど
現代の2BOXカーの原点ともいえるクラシックMINIですが、荷室は通常のトランクでハッチバックではありませんでした。初代MINIはクラシックMINIのイメージを引き継いでいましたが、利便性を高めるためにリアにハッチバックを備えた3ドアでデビューしたことから、MINI=3ドアというイメージを持っている方も多いでしょう。スポーティで軽快なイメージの3ドアを気に入って購入された方でも後席を使用する機会が増えてくるとやはり不便を感じることも多々あるでしょう。
とくに小さなお子様がいる場合、3ドアだと助手席を前に出して子どもを抱えながら後席に乗り込んでチャイルドシートに座らせるといった一連の作業はなかなか骨が折れるものです。しかも3ドアはリアシートにアクセスする関係でドア自体が長いので狭い駐車場などでドアを開けて後席に乗り込むときなどにはかなり気を使います。
MINIのデザインは気に入っているけれど、やはり後ろのドアも欲しい…となると選択肢として挙がってくるのがMINI5ドア、クラブマン、そしてクロスオーバーでしょう。この中でクロスオーバーはヘッドライトも丸形でなくタフなSUVイメージで、3ドアとはテイストが異なることから5ドアとクラブマンを比較する方が多いのではないでしょうか。
この2台、とくに斜め前から見るとデザインがよく似ています。しかし実は基本設計から大きな違いがあります。
5ドアとクラブマンではプラットフォームが異なる
単体で見ていると5ドアは3ドアにリアドアを追加したもの、クラブマンでさらに荷室部分を延長したもののように見えます。
それでは実際のサイズを3ドアも含めて比較してみましょう。
全長 (mm) | 全高 (mm) | 全幅 (mm) | ホイールベース(mm) | 荷室容量 | |
3ドア | 3,835 | 1,430 | 1,725 | 2,495 | 211L |
5ドア | 4,000 | 1,445 | 1,725 | 2,565 | 278L |
クラブマン | 4,275 | 1,470 | 1,800 | 2,670 | 360L |
(公式カタログ表記より)
一見すると似ている5ドアとクラブマンですが、クラブマンは一回り大きいことが分かります。これは3/5ドアとクラブマンではクルマの基本となるプラットフォームが異なっているためです。プラットフォームとは各メーカーで若干定義が異なる部分もありますが、一般的にはフロアパネル、エンジンとキャビンを隔てるバルクヘッド、エンジンを収める部分の横に伸びるサイドメンバーなどを指します。
このプラットフォームが決まれば搭載するエンジンやサスペンションの取り付けもおのずと決まってくるという意味でクルマの基本骨格といえる大事な部分です。3/5ドアに使用されているプラットフォームはUKL1、クラブマンに使われているプラットフォームはUKL2でクロスオーバーと共通です。
実はこのUKL2はBMWのFF車にも用いられていて、新型1シリーズ、X1、X2、2シリーズアクティブツアラー及び2シリーズグランクーペもクラブマンとプラットフォームは同じです。クラブマンと2シリーズグランクーペのベースが同じと聞くと驚かれるかもしれませんが、それだけ拡張性があってポテンシャルの高いプラットフォームといえるでしょう。
先代クラブマンは3ドアの後部を延長したカタチだったので、成り立ちから考えれば先代クラブマンの後継車は5ドアのほうといえるかもしれません。
ゴーカートフィーリングの5ドア、落ち着いた印象のクラブマン
プラットフォームの違いが顕著に表れるのは両車の走りです。クラブマンは車幅が広く、ホイールベースも長いことから安定志向になり、足回りのセッティングも落ち着いた乗り心地にセッティングされています。
高速道路を使ってロングツーリングをするような使い方では高い直進安定性が安心感につながり疲労度は少ないでしょう。大人になったMINI、とも言えますがMINI=ゴーカートフィーリング、と思って乗ると少しおや?と思わされるかもしれません。
一方、5ドアのほうはあのゴーカートフィーリングが健在です。先代MINIや3ドアに比べるとボディは大きくなっていますが、全長は4,000㎜と現代のクルマとしてはかなりコンパクトな部類に入ります。3ドアよりもホイールベース、全長とも若干伸ばされているのですが走りのテイストは共通です。交差点の角を曲がっただけでもあのMINIらしいきびきびとしたフィーリングが味わえるのでMINIファンなら思わずニヤリとしてしまうのでは?
MINIらしい走りを求めるならやはり5ドアが正解でしょう。
小さなお子様がいるならクラブマン
よく、「新型のMINIは大きくなって全然MINIじゃない」という方もいらっしゃいますが、MINI5ドアの最小回転半径は5.4m、クラブマンは5.5mです。確かにボディは大きくなりましたが街中などでの取り回しについてそれほど心配する必要はないでしょう。両車とも全高は1,155mm以下なので機械式駐車場も問題なく利用できます。
その上でもし小さいお子様がいるのであればクラブマンをおすすめします。ホイールベースが異なることから各ドアの大きさも違い、5ドアに比べてクラブマンのほうが大きくなっています。このため乗降性という面ではクラブマンの方が上です。
大人の方が乗り降りする分にはそれほど影響はないと思いますが、とくに後席にチャイルドシートを設置してお子様を乗せるような場合にはクラブマンのほうがやりやすいはずです。チャイルドシートはかなり幅を取るのでリアシートの幅が広いクラブマンのほうが後席に座る方はゆったりできるはずです。
もちろんお子様だけではなく介護の必要がある方などを乗せる場合にもクラブマンの大きく開くドアは便利でしょう。
荷室容量はクラブマン、使い勝手はイーブン
荷室の容量は車体の長さを活かしてクラブマンのほうが大きくなっています。お子様が小さい頃はベビーカーを積んだり紙おむつなどを買い出しにいったりと、なにかと荷物が増えるものです。こういった使い方ではやはりクラブマンのほうが有利でしょう。とはいえ5ドアもサイズを考えれば278Lという容量は決して小さくはなく、またシートを倒せば941Lまで拡大することができます。
また両車とも荷室のフロアは丈夫なラゲッジボードとなっており、ボード下にも小物を置くことが可能です。普段は使わない子どもの遊び道具などをしまっておくのに便利ですね。さらに、このラゲッジボードを外せばより高さのある荷物も載せることが可能です。
この2台の大きな違いはハッチバックの方式です。5ドアの方は一般的なハッチドアですが、クラブマンは先代同様にスプリットドア(観音開き)が採用されています。通常のハッチドアと異なり、狭いスペースでも開きやすいというメリットがあります。ただ、リアガラスの真ん中に分割線ができるため、少し後方視界が気になる、という方もいらっしゃるかもしれません。先代のクラブマンよりも分割線は細くなっていますが、念のため試乗の際にはバックミラーや目視でチェックしておくことを忘れないようにしましょう。
一方、5ドアのハッチドアは跳ね上げれば雨除けになるので、雨の日に荷物の積み下ろしをしなければならないときには意外にありがたいものです。
なお、クラブマンにはオプションですがバンパー下に足を入れることでハッチが自動的に開くコンフォートアクセスが設定されています。一度足をかざすと右側のドアが、もう一度足をかざすと左側のドアが開きます。両手がふさがっている時などにかなり便利な装備なのでクラブマンを購入するなら装着をおすすめします。
リアドアは欲しいけれど、走りの楽しさは忘れたくない、という方におすすめなのがJCWクラブマンです。「ミニクーパー」の由来となった伝説のエンジニア、ジョン・クーパーの名前を冠したホットモデルです。専用のチューンが施された2L直列4気筒ターボエンジンは最高出力306PS、最大トルク450Nmとクラスを超えたハイパワーを叩き出します。それをしっかりと受け止めるためにスポーツサスペンションが組み込まれ、19インチの大径ホイールの裏側にはチリレッドにペイントされた4ポッドの強力なブレーキキャリパーが顔をのぞかせているのも迫力を感じさせます。
駆動方式にはALL 4(四輪駆動)システムが採用されています。ALL 4は雪国などでの使用を前提にしたいわゆる生活四駆ではなく、ツインパワーターボエンジンの強力なパワーを確実にロードに伝えるためのスポーツ4WDです。MINI JCWは世界一過酷と称されるダカールラリーにもクロスオーバーで出場し輝かしい戦績を収めています。モータースポーツで培った技術はJCWクラブマンにもしっかり受け継がれています。
それでいてクラブマン本来の使い勝手の良さは一切犠牲になっていないので普段使いでも困ることはありません。
残念ながら5ドアにJCWは設定されていないので走りを求めるならJCWクラブマンが一択となります。
魅力的な2台、こんな風に選んでみては?
5ドアもクラブマンもいずれも魅力的なクルマに仕上がっていて、それぞれに違った魅力があることがお分かりいただけたでしょうか。もちろん2台まとめて購入できれば良いのですが、さすがにそれは現実的ではないですね。
選び方の一つの基準としてMINIのきびきびした走りが気に入っていた方であればよりMINIの風味が濃い5ドアを、MINIのデザインが気に入っていてさらに利便性を優先したいというのならクラブマンを、と考えていますが皆様はいかがでしょうか。