MINIだけのレースがある?MINI CHALLENGE JAPANについて紹介!

BMW MINIだけを使ったワンメイク・レースがあるのをご存知でしょうか。MINI CHALLENGEといって本国イギリスでは2002年から開催されており、日本でも2017年からスタート、現在はJAF公認レースとなり富士スピードウェイなどを舞台に全9戦の熱いレースが繰り広げられています。2019年からはいよいよ正式にBMWジャパン公認レースとなったMINI CHALLENGEについて紹介していきます。

BMW MINIだけのレースがイギリスで2002年から開催!

画像引用:https://www.minichallenge.co.uk

BMW MINIだけのワンメイク・レース、MINI CHALLENGEがMINIの生まれ故郷、イギリスで始まったのはBMW MINI誕生の翌年、2002年のことでした。

もともとクラシックMINIを単なる大衆車ではなく、高性能なクルマとして印象づけたのはサーキットでの数々の活躍でした。イギリスにはモータースポーツ文化が根づいており、クラシックMINIもそんな文化の中で性能を磨いてきたので、BMW MINIとなって復活したのに合わせてレースが開催されるのは自然な流れなのかもしれません。

イギリスでのMINI CHALLENGEはMSVR(モータースポーツヴィジョンレーシング)主催でMSA UK(モータースポーツアソシエーションUK)公認で行われています。

毎年参加者も増え、現在は40台以上が出走するなど、BTCC(イギリスツーリングカー選手権)に次ぐ人気シリーズとなっています。

出走するクラスは3部門に分かれています。トップクラスと位置づけられているのがJCWクラスで、現行BMW MINI(F56)のJCWを使用します。クルマはノーマルではなく、レース専用にモディファイされたカップカーが販売されており、参戦するためにはそれを購入することになります。

それに次ぐのがクーパーSクラスで先代のR56 クーパーSで争われるクラスですが、マシン自体はF56JCWが登場するまでのカップカーです。ワンメイク・レースの場合、マシンが旧型になってしまうとレギュレーションに合致しないため出走できなくなってしまいます。レース用マシンは高価なのでアマチュアドライバーはなかなかすぐに買い替える、というわけにはいかないのでMINI  CHALLENGEのようにその受け皿をちゃんと用意している点は素晴らしいですね。

入門レース部門として位置づけられているのがクーパークラスでこちらは初代BMW MINIを使用します。

3部門すべてに共通するのは改造の範囲が極端に狭く、ほぼイコールコンディションでレースが行われる点です。決勝は20分間のスプリントレースということもあり、毎回白熱したレースが展開されています。

日本では2017年から開催

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このMINI CHALLENGEはMINI専門のカスタマイズブランドのジオミックが立ち上げた「ジオミックモータースポーツ」が主催となってMINI CHALLENGE JAPANとして2017年から日本でも開催されており、現在はJAFの公認レースになっています。

主催者によれば、MINI CHALLENGEを導入しようとした動機として、レーシングスリックタイヤを履いたレース専用車で行う本格的なスプリントレースが日本にはほとんどなかった点を挙げています。ポルシェやフェラーリといったクルマを使ったレースはありますがクルマ自体も高価ですし、クルマが速すぎて入門者には敷居が高いことから、比較的参戦しやすいMINI CHALLENGEは非常に魅力的だったようです。

2019年は6月9日に岡山国際サーキットで開催された初戦から11月30日に富士スピードウェイが開催された最終戦までの全9戦行われました。

レースの形式ですが、予選とレース1及びレース2という3部構成となっています。
予選で20分間のタイムアタックが行われ、その順位でレース1のスタートポジションが決定しレース1の決勝が行われます。
ユニークなのはレース2で、レース1の順位で1位から6位までを逆の順番でスタートポジションにするリバースポジション方式が取られています(7位以降の順位はかわりません)。
ワンメイク・レースでマシン自体の性能差はほとんどないことから、レース1の結果が今1つだったとしても、レース2では大逆転、ということもあり得るのが面白いところです。

それぞれのレースでは優勝者に30万円、2位に10万円、3位に5万円、また予選でポールポジションをゲットすると5万円が賞金として用意されており、またシーズンを通してポイント獲得最上位のドライバーにはそれ以外にも賞金をはじめさまざまな特典が用意されています。

また、参加するドライバーだけでなく応援者も楽しめるよう、応援専用の設備もあり、ケータリングによるホスピタリティサービス(有料)も用意されています。レースに合わせてMINIファンのイベントも同時に開催されるなど、まさにMINIファンのためのフェスですね。

レースというと、日本ではストイックなイメージがありますが、MINIの本場イギリスではピクニックがてらレース観戦するなど、もっとフレンドリーで誰でも楽しめる雰囲気があります。日本のモータースポーツ文化をもっと広めていくにもMINI CHALLENGE JAPANのこうした取り組みは大事ですね。

そして2019年にはBMW JAPAN公認大会となったことから、来年以降はさらに盛り上がりそうですね。

レース仕様のJCW MINIはシーケンシャルミッションの本格派

画像引用:https://www.minichallenge.co.uk

レースで使用されるBMW MINIですが、3ドアのJCWをベースにMINI CHALLENGE UKが制作した「MINI F56 JCW CHALLENGE CAR」をそのまま輸入しています。

見た目にも専用のワイドボディ仕様となっており、ベースとなったBMW MINI JCWの雰囲気は残しつつも迫力ある仕上がりとなっています。

エンジンは基本的にはノーマルと同様ですが、専用のECU社を装着、ターボチャージャーはイギリスのターボチャージャーメーカーであるOwen Developments製に交換され、インタークーラーも大型化、吸排気系も専用のものが奢られています。

面白いのはセッティングでアクセルをオフするとわざとアフターファイア(マフラーからの炎)が出やすくなっていることです。これはアクセルをオフにした時に燃料供給をカットするタイミングをわざわざ遅らせるセッティングになっているためで、「かっこいいから」(!)という理由で採用されたとのことです。まるでかつて日本で人気のあったスカイラインのシルエットフォーミュラカーのようで、確かにビジュアル的にも映えそうです。

ノーマルのJCWと最も異なるのがトランスミッションで、イギリスのパーツメーカーであるQuaife(クワイフ)社製の6速シーケンシャルドグミッションが採用されています。通常のMTと異なり、オートバイのように1速から6速が直線状に並んだギアを前後に操作するもので、スピーディな変速が可能な上、高い剛性と動力伝達効率を誇り、アクセルペダルを踏んだままクラッチを切らずにシフトアップすることも可能です。

レースではゼロ発進の時のみクラッチ操作を必要としますが、それ以外はほぼクラッチを踏むことがないのもまるでフォーミュラーカーのようです。

もちろん足回りも固められており、ナイトロン社製3WAYのレーシングダンパーが奢られ、ブレーキもリアは純正ですがフロントにはアルコン社製の4ピストンキャリパー、大径ブレーキディスクが装着され強力なストッピングパワーを発揮します。

タイヤは245/620-17のレーシングスリックタイヤが装着され、イギリスでのダンロップ社製から日本ではピレリ社のワンメイクに替えられています。

車重はなんと1,070㎏に抑えられており、ノーマルのJCWから200㎏近く軽量化されていることに加え、レーシングスリックタイヤを履いていることから走りの印象はまさにレーシングカーそのもの。

気になる価格は890万円、市販のJCW MINI(450万円:8AT仕様)に比べれば高価ですが、レース用のシーケンシャルミッションだけでも3ケタ万円はすることやスリックタイヤを履いた本格的なレーシングマシンがこの価格で購入できることに、専門家からは「バーゲンプライスだ」との声が上がっています。

なにより、メカについては基本的にタフな仕上がりで、他車との接触などによるクラッシュを除けばレースで壊れることはほとんどない、とのことです。

ちなみにエントリーフィーは1大会25万円、シーズンエントリーは112万5千円(アーリーエントリー割引も有り)なので初年度の参加費用はクルマを含めてもおおよそ1,000万円となります。もちろん高価には違いないのですが、追加費用もほとんど不要なことを考えれば、本格的なレースにかかるコストとしては非常にリーズナブルと言えるのではないでしょうか。

MINI CHALLENGE JAPANから将来有望なドライバーが生まれる?

画像引用:https://www.minichallenge.co.uk

ワンメイク・レースの面白さといえばなんと言ってもイコールコンディションで行われるため、極端に言えば勝つも負けるもドライバーの腕次第、というところではないでしょうか。

マシンの性能差がなければ誰が一番速いの?というのは誰しも興味を抱くことのようで、プロのレーサーでもエキシビジョンマッチと名づけて同一のマシンで競うような大会も開催されています。

とくにMINI CHALLENGE JAPANの場合は改造が厳しく規制されており、使用するタイヤまで共通となっていることから一層その傾向が強いでしょう。

実際にMINI CHALLENGE JAPANの予選ラップタイムを見ると最終戦の富士スピードウェイでもトップと最下位の差は2.881秒に過ぎません。コーナーで少しブレーキングが早かった、少しふくらんだ、シフトアップのタイミングが少し遅れた…などほんの少しのミスが天国と地獄を分けてしまうのです。

有力チームがぶっちぎりで優勝、というのではなく、一瞬たりとも気を抜けない戦いが20分間続くことになり、それが白熱のレース展開を生むのです。

そして改造ができないということはコストがかからないということにもつながります。MINI CHALLENGE JAPANの場合もマシンは確かに高価ですが、それでも他のレース用車に比べればリーズナブルで、追加費用もかかりません。これはモータースポーツへのハードルを大きく下げることにもつながり、活性化にもつながるでしょう。以前、とくにバブル景気まっさかりの頃には日本の各自動車メーカーも〇〇カップと名づけて自社のクルマを使ったワンメイク・レースを開催していました。

しかし現在は経営上の判断や、あるいは自社のラインナップにワンメイクレースに適したスポーティなモデルが無いなどの理由でレースの数は少なくなっています。しかし、かつてはワンメイク・レースをステップ台にして、そこから本格的なツーリングカーレースやフォーミュラに羽ばたいていった若いドライバーも数多くいたことを思えば非常に残念な状況と言えるでしょう。

そう考えると、日本でもMINI CHALLENGE JAPANが開催され、さらにBMW JAPAN公認の大会となるということは、やや大げさかもしれませんが日本のモータースポーツシーンにとっても意義のあることでしょう。

MINI CHALLENGE JAPAN出身のドライバーが日本のトップレースや、さらにはF1にデビューも?MINI CHALLENGE JAPANはそんな可能性も感じさせるレースイベントではないでしょうか。

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