ブームを通り越して、すでにクルマ選びのスタンダードになってきたSUV。2000年にデビューした初代X5でいち早くSUV人気の基礎を築いたBMWも、現在は数多くのXシリーズをラインナップしています。しかし、魅力的なモデルが多すぎて、どれを選べば良いのか迷っている方は多いのではないでしょうか。今回はBMW Xシリーズの特徴について解説していきます。きっとあなたにぴったりの一台が見つけられるでしょう。
Xシリーズは全7車種
BMWでは車名について、セダン系を奇数、クーペ系を偶数で表していますがXシリーズについても同様です。サイズや価格などをセダンSUV系とクーペSUVに分けてついて整理してみました。
セダンSUV系
車名 | 全長×全幅×全高 (mm) |
乗車定員 |
荷室容量 (ℓ) |
駆動方式 | 価格 (税込) |
X1 | 4,455×1,820×1,610 | 5名 | 505 | FF/4WD | 440万円~ |
X3 | 4,720×1,890×1,675 | 5名 | 550 | 4WD | 675万円~ |
X5 | 4,935×2,005×1,770 | 5名/7名 | 650 | 4WD | 938万円~ |
X7 | 5,165×2,000×1,835 | 6名/7名 | 750 | 4WD | 1,099万円~ |
クーペSUV系
車名 | 全長×全幅×全高 (mm) |
乗車定員 | 荷室容量 (ℓ) |
駆動方式 | 価格 (税込) |
X2 | 4,375×1,825×1,535 | 5名 | 470 | FF/4WD | 451万円~ |
X4 | 4,760×1,920×1,620 | 5名 | 525 | 4WD | 838万円~ |
X6 | 4,945×2,005×1,695 | 5名 | 580 | 4WD | 990万円~ |
クーペSUV系はやや荷室容量が少なく、また3列シートが省かれていますが、その代わりに車高が低く流麗なデザインとなっています。スタイリッシュなクルマが欲しい、というユーザーにはぴったりですね。もちろん、クーペSUV系であっても余裕のある荷室容量で分かるとおり、単体で見れば十分な実用性が確保されています。
さらにスポーツ性を高めた「M」も各モデルに用意されています。
Mモデル
車名 | 全長×全幅×全高 (mm) |
乗車定員 | 荷室容量 (ℓ) |
駆動方式 | 価格 (税込) |
X2M35i | 4,375×1,825×1,535 | 5名 | 470 | 4WD | 701万円 |
X3M | 4,760×1,925×1,620 | 5名 | 550 | 4WD | 1,298万円~ |
X4M | 4M4,945×2,005×1,695 | 5名 | 525 | 4WD | 1,330万円~ |
X5M | 4,955×2,015×1,770 | 5名 | 650 | 4WD | 1,859万円~ |
X6M | 4,955×2,020×1,695 | 5名 | 580 | 4WD | 1,899万円~ |
X7M | 5,165×2,000×1,835 | 6名/7名 | 750 | 4WD | 1,603万円 |
Mモデルに関してはいずれもノーマルグレードに対して強力なエンジンが搭載され、サスペンションも固められていますが居住空間などは一切犠牲になっていません。
都市でカジュアルに使うならおすすめはX2
Xシリーズで唯一全高が1,500mm台に抑えられているのがX2です。最低地上高を上げて大径のタイヤを装着するSUVでは、全高が1,600mm以上になることが多いのでX2の車高の低さは驚異的です。X2の1,535mmという全高はコンパクトカーと同じぐらいなので都市に多い機械式駐車場でも入庫を断られることもありません。X2はデザインがスタイリッシュというだけではなく、その取り回しの良さからも大都市で使うのにぴったりなSUVと言えるでしょう。
一方で窓が小さく、低いキャビン形状から、ひょっとして室内が狭いのでは?と心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には後席も成人男性がちゃんと座れる空間を確保し、前席下にもつま先を入れられるようになっているので見た目以上に使えるスペースがあります。
SUVとしては最低地上高が低いものの、乗用車に比べれば十分なクリアランスを確保しているので運転席はSUVらしいアップライトな着座姿勢が取れます。SUVというと街中での取り回しが大変、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には着座位置が高いことで周りの状況を確認しやすく、ボディの見切りも良いので狭い道でも意外に走りやすいのです。X2は全長も約4.3mと街中でも扱いやすいサイズなので、より小型のクルマからの乗り換えでも取り回しで苦労することはないでしょう。
ディーゼルエンジンを満喫するならX3 20d
SUVならディーゼルが必須、と考えている方もいらっしゃるでしょう。ボディが大きい上、4WDを採用することで重くなりがちなSUVには、低速から大トルクを発生させるディーゼルは最適なパワートレインです。燃費も良いので航続距離が長く、また軽油を使用することで経済性も高いことからファンが多いのもうなずけます。とくにディーゼルとの相性がよいのがミドルクラスのSUVで、各メーカーはそれぞれ商品力の高いモデルをリリースしてしのぎを削っています。そんな競争の激しいミドルクラスのSUVの中でもX3は2003年にデビュー、ディーゼルの搭載も2012年からと、いち早くブランドイメージを確立しました。
X3 20dに搭載される2Lのディーゼルターボエンジンはわずか1,750回転から400Nmというトルクを発生させます。ディーゼル特有の味わいを感じながら高速道路をゆったりと流し、ここ一番で加速が必要なら右足に軽く力をこめるだけ。もしオフロードに持ちこんでも路面の状況を心配することなく安心して走行できる頼もしさがあります。
さらに刺激が欲しい方に向けてM社が手掛けたX3 M40dも用意されています。伝統の3L直列6気筒ツインパワーターボは最高出力326PS、緻密な8速ATと固められた足回りも相まって、その気になればスポーツカー顔負けの走りも満喫できます。
グランピングに行くならX5
これまでにない贅沢なアウトドア体験として注目を集めたゴージャスなキャンプ「グランピング」、日本でもすっかり定着してきました。
グランピングではキャンプで使用するギアの一つ一つが厳選されたものであることが求められます。せっかくグランピングに行くなら、その往復に使うクルマにも実用性だけでなく高い性能とラグジュアリーさが求められるのでやはりX5をチョイスしたいところです。X5はSUVブームの先駆けとなった初代から数えて4代目、SUVの王道とも言えるクルマです。高い機能性を備えた基本設計とそれを包み込むスタイリング、その気になれば本格的なオフロード走行もこなす走破性は初代から受け継がれてきなX5の美点です。それでいて乗り心地はセダン並みの快適さ、室内空間も余裕があり、さらに日本初のハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能も装備されています。これならどんな遠くのキャンプ場であっても率先してドライバーズシートに座りたくなるでしょう。
もちろん通常時で650ℓという大容量のラゲッジがあればどんな遊び道具でもちゅうちょせずに積み込めるのもグランピングでは見逃せないポイントです。また、X5にはサードローシート(3列目シート)仕様なら、現地で温泉に皆で行く、といった場合に2台ではなくX5 1台でも対応できるので便利ですね。
SUVなのに走りはスーパーカー?X6 Mコンペティション
かつてはスポーツカーに乗っていたけれど、今はいろいろな事情で実用性も重視しなければならないのでSUVを選ぶ、という方も少なくないかもしれません。そんな走りを忘れない「熱い大人」にはスーパーカー顔負けのパフォーマンスを秘めたSUVはいかがでしょうか。X6には高性能バージョンの「M」が設定されています。そのMをさらに高性能に仕立て上げたのがX6 Mコンペティションです。
エンジンは4.4L V型8気筒ターボで最高出力はなんと625PS!さらに750Nmという強大なトルクを1,800回転から発生させるという強烈さです。車重は2,370㎏と重量級のボディをわずか3.8秒で100km/hまで加速します。
なんとランボルギーニ・ガヤルド(2010年)が3.9秒、フェラーリ・カリフォルニア(2012年)が、3.9秒と少し前とはいえスーパーカーよりも速い!それでいて大人5人が快適に移動できる豪華な居住空間とたっぷりのラゲッジルームを備えているのだから無敵です。
「M」の名前を掲げる以上、X6 Mコンペティションはパワーだけの単なる直線番長ではありません。4WDシステムもM社が独自に開発した「M xDrive」が装備されています。あらかじめ設定されている走行モードの中からスポーツモードを選ぶと、まるで後輪駆動のようなふるまいをみせるようになります。腕に覚えのあるドライバーなら積極的に車体を操りたくなるに違いありません。左右後輪にハイパワーを余すことなく適切に振り分けることでワインディングではその車体を感じさせない俊敏さをみせます。このパワーを吸収するためにタイヤは295/35 ZR21 107Y(前) 315/30 ZR22 107Y(後)を採用、もちろんブレーキも強化されています。それに併せてフェンダーも拡大しているのでルックスからもただものではない感じが漂ってきます。
Xシリーズのルーツは2代目3シリーズだった?
Xシリーズの始まりは2002年登場の初代 X5です。BMWではSUVではなくSAV(スポーツアクティビティービークル)と呼んでいますが、このネーミングも初代X5から始まりました。高級サルーンの5シリーズと共通部分も多く、世界的に大人気となっているプレミアムSUVの元祖とも言われています。
さらにそのルーツをさぐっていくと二代目3シリーズ(E30)に追加された4WDバージョンの325iXにたどり着きます。1985年に登場した325iXはプラネタリー式センターデフを装備したBMW初となる量産4WD車でした。シルキーシックスと呼ばれた2.5L6気筒エンジンを搭載した高級セダンと4WDの組み合わせは珍しく、発売時には大きな話題となりました。ヨーロッパよりも北米とカナダの寒冷地でその多くが販売されたようです。4WD車の車名に「X」を付けるのもこの325iXが初です。通常の3シリーズと見た目の差別化は行われておらず、見分ける方法はエンブレムのみというさりげなさでした。
325iXが登場した当時、BMWはM3でWRC(世界ラリー選手権)にエントリーしていました。そこでM3の4WDバージョンを開発していたのでは?という噂がありました。実際にBMWではプロドライブ(M3でラリーを戦っていたラリーチーム)に325iXを使ってラリーマシンを試作するよう依頼したそうです。プロドライブはオーダーに応えラリー仕様の325iXを製造したのですが、結局このマシンがレースにデビューすることもなく、M3に4WDバージョンが登場することもありませんでした。ラリーのデビュー戦で優勝をさらってしまうほどポテンシャルの高かったM3、その4WDバージョンが幻に終わってしまったのは残念です。歴史にIfは存在しませんが、4WD仕様のM3がラリーでデビューしていたらWRCの歴史は今と違ったものになったかもしれません。
なお、3シリーズはやはりFR(後輪駆動)のイメージが強かったためか、後継となる3代目(E36)及び4代目(E46)には4WD仕様が設定されませんでした。5代目(E90)以降は4WD仕様が用意され、現行型にはスポーツモデルの「M」にもラインナップされています。
ライフスタイルに合った一台を
BMW Xシリーズについて各モデルやルーツについて紹介してきました。ご自身のライフスタイルに合った一台は見つかりましたか?輸入車プレミアムSUV部門でNo.1のBMW Xシリーズ、いずれのモデルを選んでも最高のパートナーとなることは間違いないでしょう。