街中を走っているクルマを見てみると、“SUV”タイプのクルマが増えていることに気がつくと思います。日本だけでなく世界中でSUVブームが十数年前から到来していると言われており、現在ではあらゆるメーカーがしのぎを削っています。
一方で、日本で長きにわたって愛されているカテゴリーに“軽自動車”が存在します。小さなボディに多くの機能性を追加したものが多く開発されており、現在では普通車よりも軽自動車を選択する人が数多くいるほど人気が高くなっています。
そんな“SUV”と“軽自動車”を掛け合わせたデザインで人気を呼んでいるのが「スペーシア ギア」です。スズキから2018年12月20日に発売された「スペーシア ギア」は、独自のデザインと機能性から、多くのメディアで取り上げられるなど話題を集めています。今回は、そんな人気の「スペーシア ギア」の魅力と性能について見ていきたいと思います。
インパクト大の外装
「スペーシア ギア」の特徴として真っ先に挙げられるのは、ベース車となっている「スペーシア」とは全く異なる外装ではないでしょうか。ファミリーカーとしての軽トールワゴンらしさが意識された「スペーシア」とは対照的に、SUV風の外装とディテールが目を惹くデザインになっています。スズキが“遊びゴコロと機能性が融合したスタイリング”と銘打っているように、街乗りとアウトドアフィールドの両方で映えるような意匠が強く反映されています。「スペーシア」をベース車としているため、スチール製パーツの多くがそのまま流用されていますが、樹脂製パーツのデザインを大きく変えることでSUVのような見た目を実現しています。
車体前後には大型のバンパーが装着されており、フロントグリルも独自の大型化したデザインに変更されています。とくに、ベース車の「スペーシア」と差別化を図っているのがヘッドライト。同社のジムニーやハスラーを彷彿とさせるような丸目デザインになっていますが、これらランプ類にはジムニーのユニットが流用されています。一見すると「スペーシア ギア」専用の設計に見えますが、外側のデザインを変更することでジムニーのユニットを流用できるようにし、SUVの雰囲気が感じられるフロントデザインとなったのです。
また、軽トールワゴンのため高さがある設計となっていますが、ルーフレールやガーニッシュによって、「スペーシア」よりも全高があるように感じます。このルーフレールによって、アウトドアフィールドでの使用では利便性が増しており、荷物などを多く積むことが可能になっています。
このように、「スペーシア ギア」ではベース車の「スペーシア」と大きく異なる外観が特徴となっており、実用面でも利便性が増しているのです。
「スペーシア ギア」の原点を感じるオプション
2018年末に「スペーシア ギア」が販売されましたが、なぜ「スペーシア」にSUVデザインのモデルを追加したのでしょうか。
スズキには、ジムニーやハスラーといった”軽SUV”と呼ばれるモデルが出ていましたが、ファミリー向けの”軽SUV”という位置づけに適した車種がありませんでした。
そこで2018年の東京オートサロンで公開されたのが「スペーシア トールキャンパー」という、現在の「スペーシア ギア」の原型となるモデルです。この「トールキャンパー」への反響が多く、「スペーシア ギア」の開発に至っているため、オプションとして用意されているアクセサリー類にも「トールキャンパー」を意識したものが多く用意されています。
たとえば、真っ先に挙げられるのは“カモフラージュ柄のデカール”です。これは、「トールキャンパー」に使用されていたものと、ほぼ同様のデザインとなっており「スペーシア ギア」に装着するだけで雰囲気を変えることができます。また、アウトドアフィールドでの使用を念頭に置いていることから、キャンプに適したアクセサリーも多く用意されています。
中でも注目を集めているのが「ogawa」とコラボレーションした”カータープ”です。ogawaといえば、”小川テント”として知られている日本の有名アウトドアメーカーであり、高い品質とデザイン性から、数多くのキャンパーが愛用しています。そのogawaとコラボレーションしたのが”カータープ”というアクセサリーであり、「スペーシア ギア」のルーフサイドに取り付けることによって”タープ”として使用できるという商品になっています。
他にも”バックドアネット”や”リラックスクッション”、”プライバシーシェード”なども併せて販売されているため、これらを揃えるだけでオートキャンプが手軽に行えるというコンセプトになっているのです。
ファミリー向けの軽トールワゴンとしての利便性は失わないまま、本格的なオートキャンプを楽しむことができるのも「スペーシア ギア」の魅力と言えます。
内装も充実
SUVテイストの外装が特徴的な「スペーシア ギア」ですが、内装もベース車とは大きく異なっています。まず目に飛び込んでくるのは、インパネに設置されているアッパーボックス(小物類を収納するためのスペース)。ガンメタリックカラーで塗装されており、デザインもツールボックス風になっています。また、スピードメーターもオレンジ色を基調としたアウトドアウォッチ風の盤面となっており、視認性が高いだけでなく遊び心溢れるデザインが施されています。シートにもオレンジ色のステッチが使われており、撥水加工も施されています。そのため、水や汚れを気にせずに使え、アウトドアフィールドだけでなく日常的なシーンでも手入れが簡単です。
一方で、リアシートは座面を倒した使用方法が多用されることが想定されており、ラゲッジルームまで防汚加工が施されています。たとえば、リアシートを倒すと自転車を積むことも可能であり、運転席以外を倒した場合はサーフボードなどの長いものも収納可能になっています。さらに、フルフラットにした場合は、家族3人が寝そべることができるほど、車内空間のスペースが確保されています。
スズキならではの安全技術
「スペーシア ギア」は、ファミリーカーとしての側面も強いために安全面が気になる人も多いと思います。そのため、スズキでは“セーフティサポート“機能によって、家族やドライバーの安全を保つ工夫がなされています。
たとえば、車線逸脱やふらつき警報機能だけでなく、誤発進抑制機能などによって、アウトドアを満喫して疲れた後の運転でも的確にサポートしてくれます。さらに、全方位モニター用カメラや後退時ブレーキサポートで運転や駐車が苦手な人でも、安心して日常的に乗り回せるようになっています。
大人気のジムニーに追いつけるか
軽SUVが欲しいとジムニーやハスラーを検討している人の中にも、「スペーシア ギア」が気になるという人も多いと思います。
大ヒットをとばしているジムニーは、SUVとしての側面が強いため、家族がいる場合はメインカーとして購入することに抵抗があるかもしれません。つまり、「軽SUVは欲しいけど、日常的な使い勝手も失いたくない」といった需要に「スペーシア ギア」が応えることによって、大ヒットをとばしたジムニーの人気にも追いつけると考えられます。とくに、「スペーシア ギア」はスライドドアや車高などに変更がないため、子どもがいる家庭でも日常的な利便性は失われていません。また、休日などにアウトドアを楽しむという提案を「スペーシア ギア」がしてくれることによって、ユーザーの行動範囲を広げてくれることも期待できます。
このように、「スペーシア ギア」は日常的な利便性を失わずに、アウトドアフィールドでも活躍できる“SUVテイストの軽”として、市場でますます存在感を増していくことが予想されます。「スペーシア ギア」がジムニーの大ヒットに続き、スズキというブランドをさらに高めてくれる一台となる日も近いと言えるでしょう。