【Harley-Davidson】ハーレーダビッドソン「津波バイク」の物語

津波で打ち上げられたハーレーダビッドソン

ハーレーダビッドソンの「津波バイク」の物語、ご存知ですか。1台のハーレーダビッドソンにも、様々な思いが込められているというお話です。

朽ち果てた1台がハーレーダビッドソンの聖地に

アメリカ中西部の都市ミルウォーキーにあるハーレーダビッドソン・ミュージアム。110年以上の歴史を持つハーレーダビッドソンの博物館に相応しく、第1号から最新のモデルまで数百台ものモーターサイクルが陳列されている広大な展示スペースの中で、ひときわ異彩を放っているバイクがあります。

ハーレーダビッドソンのFXSTBナイトトレインというモデル。クリアケースの中に大切に保管されているものの、エンジンは朽ち果て、足回りはボロボロ、ハンドルもヘッドライトも原型を留めていません。このバイク、実は宮城県のある日本人がかつて保有していたバイクなのです。日本から6000キロ以上離れたかの地に、なぜ展示されているのでしょうか。

6000キロ離れた博物館にたどり着いた「奇跡」

このバイクのかつての所有者は宮城県在住の横山育生さん。ナイトトレインをコンテナに保管し、大切に乗っていました。しかし2011年3月11日、東日本大震災が起こります。津波によりナイトトレインはコンテナごと流されてしまいました。横山さんの街は大変な被害を受け、横山さん自身も家族を失います。

そのコンテナが、太平洋を横断し、1年後にカナダ・ブリティッシュコロンビア州のグレアム島に流れ着きます。発見した島民のピーター・マイクさんは、コンテナの中のナイトトレインを発見、ナンバープレートから津波によって流された日本人のバイクではないかと推測し、テレビ局にコンタクトを取って、横山さんがオーナーであることを突き止めました。

ハーレーダビッドソン社はその事実を知って、このナイトトレインをすべて修理してお返しすると、横山さんに申し出ます。これだけでもとても心の温まる話ですね。ところが横山さんは、この申し出を断ってしまいます。横山さんの思いは、こうでした。

「自分の周囲にいる方々も、東日本大震災により大切なものや人を失った。自分だけがこの恩恵を受けるわけにはいかない」。

――そして横山さんは、ミルウォーキーにあるハーレーダビッドソン・ミュージアムに寄贈してほしいと頼みます。こうして横山さんのナイトトレインはかの地に展示されるようになりました。

「たった1台のハーレーダビッドソン」にめぐり会う

ハーレーダビッドソン・ミュージアムを訪れた多くの人が、この「津波バイク」に感銘を受けています。「あの地震から約1年の歳月をかけて流れ着いた姿を見ると胸が熱くなりました」、「ハーレー好きには涙がこみ上げてくる感じでした」などなど。

観た人の胸を熱くさせる理由は何でしょう。それはきっと、大切なものが居たたまれない姿になっても愛し続け、保存し続けることで、「物語」を語り継ぐ、その心意気でしょう。そのハーレーダビッドソンは、何千台ものうちの1台かもしれません。しかしオーナーにとっては、たった1台のハーレーダビッドソンです。オーナーの思いを、物語を紡いだ1台なのです。

この博物館は「ハーレー好き」の聖地で、駐車場にはたくさんのハーレーダビッドソンが停めてあります。その数も圧巻です。しかしその1台1台に、オーナーの思いが込められています。

あなたも「たった1台のハーレーダビッドソン」にめぐり会ってみませんか。

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