まるで走るオアシス MINIは次世代車の回答を表面積に求める

BMWが未来のクルマの在り方を提案している「#NEXTGen」は、2019年に新たなコンセプトカーや展望を多く発表したことで話題を呼び、大盛況のうちに幕を閉じた人気のイベントです。そして、2020年「の#NEXTGen」は、新型コロナウイルス感染症予防の観点からもオンラインでドキュメントを中心に公開されています。

その中で、MINIはインテリア空間とクルマを組み合わせた、 MINI「Vision Urbanaut(ビジョン・アーバノート)」という全く新しい形のコンセプトカーを発表しました。そのエクステリアデザインはもちろん、クルマという概念を取り払った内装が目を惹くものとなっています。はたして、どのようなコンセプトで設計され、どこへ向かっているのか。今回は、未来のMINIを見ていきたいと思います。

近未来の技術で支えるインテリアデザイン

画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

そもそも今回発表された MINI「Vision Urbanaut」とは一体何を指しているのか。一言で言うならばクルマに対する新たな空間の提案をコンセプトカーで表現したものといえるでしょう。 BMWグループ デザイン部門統括責任者のエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、「MINIブランドは、常に『空間の巧妙な利用』を象徴してきました。私たちは、MINI Vision Urbanautにおいて、私的空間を公共領域にまで拡大し、まったく新しい充実した体験を生み出します」と語っています。

この全く新しい体験を一番味わうことができるのが、 MINI「Vision Urbanaut」のインテリアデザインです。なんと言っても目を惹くのが現在のクルマで一般的なシート配置ではなく、まるで家のリビングルームをそのままクルマの中に持ってきたようなシートデザインを実現している点です。

扉を開いた瞬間に目に飛び込むのは、横並びになったモダンデザインのシートとカーペット敷きの床面。実は、このシートは数回の手順でフロントガラスに向いた通常のシート配置から、リビングルームのような配置へと変更することができるように設計されています。また、ダッシュボードにあたる部分は停車中にデイベッドへと変えることができ、フロントウインドウも上部開口することでストリート・バルコニーの空間をつくることができると言います。

デイベッドへと変更されたダッシュボード
画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

また、後部座席の暗い環境は落ち着いたコジー・コーナーとしても活用でき、入口と反対側に備えられたテーブルと植物が明るい空間を演出してくれるなど、1つの車内空間の中でもハッキリと利用用途やシーン毎に適切な空間演出が実現できることを目指していることが分かります。

とはいえ、乗るたびにライトやシートなどを設定しなければいけないのは手間がかかって面倒だと思われた方もいるかもしれません。そこで、新しいアイテムとして用意されているのが「MINIトークン」です。

これは、車内に設けられているテーブルにある専用のスロットに差し込むための鍵のようなもので、あらかじめ設定されている3種類の「MINIモーメント(Chill、Wanderlust、Vibe)」を起動することができます。これにより、香りやアンビエントライト、音楽などクルマに搭乗する人に合わせた好みの設定をすぐに呼び出すことができるようになっているのです。

車内空間を自在に調光可能
画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

また、 MINI「Vision Urbanaut」におけるインテリアの意義を「 旅行に出かけるための理想的な環境を提供するだけではなく、それ自体が旅行の目的にもなる。選んだ目的地に到着すると、MINI Vision Urbanautは、ほんの数回の簡単な手順でリビングルームに変わることができる」としているように、日常的な移動手段としてのクルマだけではなく、長距離ドライブにも快適性を提供しながらリビングルームとして日常的にも楽しむことができます。そんな、クルマに乗ってどこかへ行くという、手段さえも目的となる新しい在り方を提案しているのです。

高水準の自動運転を想定

今回のMINI「Vision Urbanaut」における特徴的なリビングルームを支えているものの1つが、自動運転機能です。コンセプトカーのため実現できていない完全な自動運転機能が一般的になっているという仮定の下ではありますが、 MINI「Vision Urbanaut」では自動運転と手動運転の2種類のモードを切り替えることができるとしています。

自動運転モードでは、MINI特有の丸形メーターを空間に浮かび上がらせ、そのインターフェース上に目的地までのルートをアニメーション表示しながら観光名所など多くの追加情報を表示させることができます。そのためシートでくつろぎながら目的地の情報を収集するなど、これまでの旅行とは異なる新しい体験を味わうことができるのです。

ステアリングホイールでの手動運転も可能
画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

また、手動運転モードへと切り替えたい場合は、インターフェース上でロゴをタップすると格納されていたステアリングホイールとペダルが現れ、ルート案内などのドライビング・ディスプレイが表示されます。つまり、自動運転モードの場合はダッシュボードからはドライビング・ディスプレイが消え、手動運転モードにしない限りはステアリングホイールやペダルが操作できないため、身体が当たってしまったり子どもが間違って触ったりという事故へつながるリスク低減も考慮されているのです。ちなみに、自動運転モードか手動運転モードなのかは、フロントマスクのグラフィックス表示で他のクルマや通行人にも分かるという工夫も施されています。

車内の快適空間を実現させたエクステリアの工夫

画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

これだけの快適な車内空間を実現するためには従来のクルマとは異なる、全く新しい設計思想が必要です。そこで、MINIはクルマの表面積を活用することで広い車内空間を確保しようと考えました。

パッと見た瞬間にクルマと分かる構造は残しながらも、その継ぎ目のないデザインに驚いたかと思います。実は、「マルチカラー・ダイナミック・マトリクス・デザイン」というものが採用されており、様々な色のグラフィックスを表示させることができます。例えば、従来はヘッドライトが埋め込まれていましたが、このシステムにより点灯時だけヘッドライトが浮かび上がるようになっています。

リア部分も表情のあるウインカーランプを実現
画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

また、より進化したピュアEV車ということで現在のような大きなモーターは必要ないため、その大きさの分だけ居住空間に割り当てることができると言います。また、ボディ上部はガラスのような透明な素材で構成されており開閉も可能なため、圧迫感を感じることのないようなデザインになっています。

広い開口部でバルコニーのような楽しみ方も
画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

つまり、MINIはモーターが小型化し自動運転が当たり前になったら、ボディの表面積を増やし、そこにヘッドライトや情報を表示させることで必要な機能は搭載することができるとしています。また、ボディ表面にヘッドライトなどを表示させることによって物理的なスペースを新たに確保でき、それを居住空間に割り当てることで快適性を向上させているのです。

MINIが実現したい未来とは

画像引用:https://www.press.bmwgroup.com

今回見てきた MINI「Vision Urbanaut」は、すべてが革新的だったのではないでしょうか。 MINIのデザイン責任者であるオリバー・ハイルマー氏は「私たちは、MINI Vision Urbanautにおいて、車内の利用可能な表面積を占有面積との関連で見直し、さらに増やすことができました」と述べているように、それら革新的なデザインや機能性を実現するための答えを表面積の有効活用に求め、より快適な空間をつくり出すことに主眼が置かれています。

そして、家のリビングをそのまま持ってきたような空間は、都市空間における移動という概念を楽しみへと変えようとしています。とくに、完全な自動運転が実現した際には、移動手段であったクルマを、癒やしや楽しみを生み出すオアシスのような存在へと転換させる未来を描いているのです。

もちろん、コンセプトカーの域を出ないため、なかなか現実的な想像がつかないという人も多いと思います。とはいえ、ピュアEVや自動運転が普及し始めている中で、MINI「Vision Urbanaut」は、決して遠い未来の話ではないのです。MINIが目指している新たなクルマの在り方に、あなたもぜひ触れて未来のカーライフを想像してみてはいかがでしょうか。

関連記事

月別アーカイブ

ページ上部へ戻る