グランクーペにクーペSUV、ところでクーペっていったいどんなクルマ?

BMW2シリーズグランクーペがデビューし話題を呼んでいますが、「クーペ」と名づけられているものの4枚のドアを備えています。クーペって2ドア車のことでは?と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。それ以外にも近年はX6のようにSUVクーペと呼ばれる車種も人気を呼んでいます。今回はクーペの起源からバリエーションが広がった現在までBMWのクーペモデルを例に解説していきます。

クーペはもっともクラシックなクルマのスタイルの1つ

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クーペ(Coupe)はその語感からもなんとなく分かるかもしれませんが、もともとは英語ではなくフランス語で「切られた(もの)」という意味になります。

その起源はクルマ以前の馬車にまで時代がさかのぼります。普通の馬車が2列シートだったのに対し、2列目を切って1列シートに仕立て上げたものをクーペ(正確な発音はクペ)と呼んでいたものがクルマにも使われるようになったのです。このことから、当初は前席のみ、もしくは狭い後席を備えた2ドアのクルマがクーペと呼ばれていました。自動車メーカーでは実用性を重視した4ドアのセダンよりもクーペを1ランク上の贅沢なクルマとして位置づけていました。スタイリングの自由度も4ドアよりも上がるので、より洗練されたデザインを採用することができたのでユーザーにとってクーペは憧れのクルマとなったのです。また2ドアにすることでボディの剛性が上がるので、より高性能なエンジンを搭載していたこともクーペ=高性能なクルマというイメージを強く印象づけました。現代でもロールス・ロイスのような高級車では4ドアのセダンよりも2ドアのクーペのほうが高価で、より高級な仕立てとなっており、その伝統は生きています。

もっともクーペらしいモデルといえば、よく挙げられるのがBMWの初代6シリーズです。1978年に登場した初代6シリーズは3.5Lの直列6気筒エンジンを搭載し、余裕のある動力性能にスポーティなハンドリングを備えていましたが、最大の魅力はそのデザインでしょう。繊細なピラーで構成された富士山型の小ぶりなキャビンにワイド&ローのボディの組み合わせは、当時「世界1美しいクーペ」と言われたほどですが、その評価は決して誇張ではないでしょう。

トヨタ「ソアラ」や日産「レパード」といった国産ラグジュアリークーペのデザインにもその影響が見られるほどで、まさにクーペのお手本のようなデザインです。現在でも、クルマ好きの方に「クーペってどんなクルマ?」と聞けば初代BMW 6シリーズを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

クーペと2ドアセダン、どこが違うの?

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現在ではクーペは必ずしも2ドアだけではなく4ドアやハッチドアを備えた3ドアや5ドア、さらにはクーペSUVと呼ばれる車種も登場しています。それではクーペって何?となりそうですが、1番の特徴はルーフのラインでしょう。セダンなどに比べて低く、流れるような優美なルーフラインをもつクルマをメーカーではクーペと呼ぶことが多いようです。

ところで、今はすっかり見かけなくなりましたが、かつては2ドアセダンと呼ばれる車種が存在していたのをご存知でしょうか。国産車にも多くの2ドアセダンがラインナップされており、昔は比較的ポピュラーなスタイルだったのです。ちなみに初代BMW3シリーズやその原型とも言えるBMW 2002にも4ドアセダンは存在せず、2ドアセダンのみでした。

2ドアセダンは基本的に4ドアセダンと同じボディからドアを2枚減らしたもので、居住空間は変わりませんが、ドアが少ない分ボディを軽く強く仕上げられるというメリットがあります。また、価格を安く設定できることから、4ドアセダンの廉価版的扱いの車種も少なくありませんでした。

2ドアセダンとクーペの違いですが、2ドアセダンは4ドアセダンがベースとなっていることからルーフラインもセダンと同じなので後席の広さも同じです。それに対してクーペは流麗なルーフラインを採用する代わりに後席のヘッドルームは狭くなります。さらにクーペではよりスポーティに仕立て上げるためにホイールベースを短くすることも多かったので後席は大人にはやや窮屈な空間となっていました。

明確な定義はありませんが2ドアセダン=実用性重視、2ドアクーペ=スタイル優先と考えるのが1般的のようです。

クーペSUVを発明したのはBMWだった

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BMWが2008年に初代X6をデビューさせた時、大きな反響が巻き起こりました。BMWではX6はSUVではなく、Sports Activity Coupe(スポーツ・アクティビティ・クーペ)と呼び、本格的な4WDシステムを備えたSUVでありながらクーペのような流麗なルーフラインを備えていたからです。

まだまだSUV=オフロード性能を重視した実用的で四角いクルマというイメージが強かったことから、「こんなクルマはSUVではない」といった拒否反応も強く、賛否両論が巻き起こったのですが、結果的にX6は大ヒットを記録しました。X6の成功を受け、BMWではよりコンパクトなサイズのX4とX2を追加しており、いずれも車名にBMWのクーペモデルを示す偶数のナンバーが与えられています。

当然、他社もX6の成功に指をくわえて見ているわけではなく、レンジローバー・イヴォークやメルセデスベンツGLE、といったX6と同じコンセプトのクルマが次々に登場しました。ついにはスポーツカーメーカーのポルシェでさえもSUVのカイエンにクーペモデルを用意するほどで、すでにユーザーにはSUVクーペが新ジャンルとして認識されています。

BMWの販売台数でも3割以上をSUVが占めるなど、すでにSUV自体が特別なモデルではなくなっていることもあり、SUVなのにクーペ?と疑問に思う方は少なくなっているかもしれませんね。

4ドアクーペは日本の発明だった…けれど

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日本では1980年代にクーペのブームがありました。トヨタソアラやホンダプレリュード、そして日産シルビアといったクルマが、バブル景気の追い風もあり若い層を中心に人気を博しました。そんな中、1985年に突然変異的に登場したのが初代トヨタカリーナEDです。カリーナEDは4ドアでありながらクーペのフォルム、とCMでも謳われたとおりセリカをベースに4ドア化したクルマでした。全高は1,310㎜と異様に低く、居住空間は到底セダンに及ばないほど狭かったのですが、流麗なデザインで大ヒットとなりました。他の国産メーカー各社も日産「プレセア」やマツダ「ペルソナ」といった低いルーフにサッシュレスドアを採用した同じようなクルマが次々にデビューしました。

しかしこれらの車は、見た目にはスタイリッシュだったものの、実際に乗ってみると室内は狭く、車高も低いことから乗降性も褒められたものではありませんでした。キャビンを極端に小さくしたため、フロントガラスが小さくなり、相対的に運転している人の顔が大きく見えてしまう、という苦笑せざるを得ないようなデメリットもありました。

同じようなスタイルのクルマが2匹目のどじょうを狙ってたくさん誕生したことから、すぐに飽和状態となって数年後にはいずれもラインナップから消滅しています。そしてその反動からか、日本ではミニバンを始めとした居住空間の広いクルマが人気を集めていくのです。

しかし日本国内ではあだ花となってしまった4ドアクーペというコンセプトが2000年代になってヨーロッパで復活し、BMWを始めとした各メーカーは4ドアクーペのラインナップを増やしていくのだから面白いものですね。

BMWでクーペのラインナップである2、4、8シリーズにグランクーペと呼ばれる4ドアクーペを用意していますが、それらと消えていったかつての国産4ドアクーペでは何が違っているのか、最新の2シリーズグランクーペを例として次項で見ていくことにします。

BMWの4ドアクーペは1枚上手

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BMWの最新モデル2シリーズグランクーペは3代目1シリーズ同様、前輪駆動方式の4ドアクーペです。ワイド&ローなフォルム、後方に向かってゆるやかに傾斜するルーフライン、窓枠のないサッシュレスドアを採用したサイドビューなど、1見するとかつての国産4ドアクーペと同じように見えます。

しかし、実際は全高420mmとトヨタ初代カリーナEDに比べ100㎜近く高いこともあり、フロントガラスが眼前に迫ってくるような狭苦しさはありません。十分な室内高を確保しながらも低く構えたように見えるのは、デザインの工夫によるものです。大型のキドニーグリルはクーペモデルに共通する末広がりタイプでバンパー形状も開口部が大きく3分割されたものを採用し、視線を低いほうに誘導します。

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リアに回るとコンビネーションランプには、1シリーズ同様のL字型をモチーフとしたものですが、より上下の高さを抑えた横長の形状がワイド感を強調しています。

ゆるやかに下るルーフラインを見ると後席のヘッドルームが苦しいのでは?と思うかもしれません。しかし、実際にリアシートに座ってみるとリアシートにまで伸びる大型のパノラマガラスサンルーフのおかげで外光が入ってくるので視覚的な解放感があり、狭い空間に閉じ込められている感がありません。リアガラスの面積も大きい上、1番後ろのピラーにもサイドウインドウを備えた6ライトと呼ばれるデザインを採用しているのもリアシートの解放感につながっています。

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足元の空間も前輪駆動を採用したことから余裕のあるものとなり、これなら家族や友人を後席に案内しても苦情はでないでしょう。

それでいてトランクの容量は430Lという大容量を確保しており、さらにリアシートの背もたれは3分割して倒せるのでスキー板やIKEAの組み立て家具などもちゅうちょせずに放り込めるといったステーションワゴン的な使い方もできるなど、高い実用性も確保しています。

クーペ=スタイル優先で実用性は2の次、という先入観は2シリーズグランクーペを前にすると簡単に裏切られるはずです。

かつての国産4ドアクーペはスタイルを優先して細かい部分の詰めが甘かったことから、あっという間にユーザーから飽きられてしまったのに比べるとBMWはやはり1枚上手だったようです。

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