カブリオレ、ロードスター…オープンカーの名称がさまざまな理由について解説

BMWではカブリオレとロードスターという2種類のオープンカーをラインナップしています。またBMWグループのMINIにもオープンカーが用意されており、こちらはコンバーチブルと呼ばれています。セダンやクーペはどの国、どのメーカーでも共通なのにオープンカーにはさまざまな名称があるのはなぜなのでしょうか。

カブリオレはドイツ語・フランス語

画像引用:https://www.bmw.co.jp

BMWの4シーターオープンカーはカブリオレと呼ばれています。カブリオレは主にドイツ車やフランス車に用いられている名称です。より正確に発音すると、ドイツ語では「カブリオ」、フランス語では「カブリオーレ」となります。語源は古く、馬車の時代にまでさかのぼります。

もともとは一頭立て2人乗りの馬車を指す言葉で、屋根は簡単に開閉可能な幌で、そこから形が似ているクルマにも用いられるようになったものです。

BMWで初めてカブリオレの名称が用いられるようになったのは1971年にBMW1600をベースにドイツのコーチビルダー、バウア社が手掛けた1600-2カブリオレです。コーチビルダーとはボディの特殊架装専門のメーカーで、その中でもバウア社はオープンモデルを得意としていたことから、BMWが既存の1600ベースをオープンに仕立てる際に声がかかったのでしょう。

しかしこのクルマは完全なオープンモデルではなく、ピラー(柱)の部分を残したまま屋根が開く、いわゆるタルガトップと呼ばれる形式のものでした。本格的なフルオープンモデルが登場したのは2代目3シリーズからで1986年に追加モデルとして発表されました。こちらもオープンカーのノウハウに長けたバウア社の協力により開発されています。

ちなみにバウア社はオープンモデル以外にも、BMWがランボルギーニに生産を委託したものの、作業に大幅な遅れが生じていたスーパースポーツ、M1の生産を引き継いで受託するなどBMWとは何かと関係の深いメーカーです。

イギリスやアメリカではコンバーチブル

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ドイツ車およびフランス車に使われるカブリオレに対し、コンバーチブルはイギリス車やアメリカ車のオープンモデルによく用いられる呼び方です。

コンバーチブル(Convertible)とはもともと英語で「変換可能な」という意味を表す単語です。屋根を閉じた状態から開いた状態に変化するところからオープンモデルを指す言葉になったものです。もちろんイギリス車のMINIもオープンモデルはコンバーチブルと名づけられていますし、BMWもイギリスやアメリカで販売されているオープンモデルにはカブリオレではなくコンバーチブルの名称を用いています。

イギリスではドロップヘッドクーペという言葉もあります。こちらもカブリオレ同様にしっかりした幌をもち、閉めてしまえばクーペと変わらない快適な室内になることからつけられた名称で、ロールス・ロイスやジャガーといった高級車で使われています。

ちなみに「オープンカー」は和製英語なので英語圏の方に言っても通じないので要注意です。もともとオープンカーという単語自体がないのですが、あえてイメージするとドアを開きっぱなしにしたクルマを思い浮かべてしまうようです。

ロードスターは2シーターのオープン専用モデル

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ロードスターはもともと屋根のない幌馬車を指す言葉でした。現在はオープンカーの中でもスポーツタイプで2シーターのクルマに使われています。カブリオレやコンバーチブルが4シーターのクーペがベースで「屋根も開けられる」クルマだったのに対し、ロードスターは専用のボディをもち、オープンの状態が基本で「屋根を閉めることもできる」クルマです。かつて2代目MINIにもロードスターというモデルがありましたが、こちらも通常のコンバーチブルとは異なり2シーターで屋根を開いた状態を基本にしていました。BMWでは1988年デビューのZ1から始まり、現在のZ4までロードスターの車名には「Z」を用いています。

なお、ロードスターのつづりは「Roadster」で「Road Star」ではありません。おそらくスポーティなクルマが多く、道を流れ星のように走り去るイメージなのかもしれませんが、勘違いしている方も意外に多いのでは?

2シーターのオープン専用モデルを表す言葉としては他にも「スパイダー」や「バルケッタ」があります。スパイダーはもともと軽量の4輪馬車を指す「スパイダー・フェートン」でアメリカが発祥です。人とモノを運ぶ「メール・フェートン」とは異なり、こちらは遊びのための馬車として位置づけられていました。本国?のアメリカよりもイタリアのオープンモデルに採用される例が多くみられます。

一方のバルケッタですが、こちらはイタリア語で「小舟」を意味します。2シーターのオープンカーが屋根を開けた状態だと小型のボートのように見えることから来たネーミングですがなかなかおしゃれな感じですね。こちらもスパイダー同様イタリア車に用いられています。

進化したオープンカー、リトラクタブルハードトップはなぜ少なくなったのか?

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1996年にメルセデス・ベンツSLKに搭載されたことをきっかけに、布製の幌ではなく折り畳み可能なメタルルーフ機構を備えたオープンモデルが多数デビューしました。メーカーによってリトラクタブルハードトップやクーペカブリオレ、バリオルーフなど呼び名はさまざまですが、機構的にはいずれのメーカーも共通しており、ボタン1つで通常のクーペから屋根が折りたたまれてオープンモデルに「変身」するというものです。屋根を閉じていれば静粛性や快適性、耐候性の面で通常のクーペと変わらないという特徴があったことから、各社こぞって従来の幌仕様のオープンモデルに換えてラインナップに加えていきました。

しかし一時期あれほど人気があったはずのリトラクタブルハードトップですが、現在採用している車種は少なくなっており、BMWでも4シリーズのみとなっています。主な理由として考えられるのは次の3点です。

第1の理由として、折り畳み可能でコンパクトに格納できる布製の幌に比べてリトラクタブルハードトップの場合は分割して畳むとはいえ、かさばってしまいトランクスペースがかなり浸食されてしまいます。比較的トランクスペースを確保できる4シーターのクーペの場合はさほど問題でもないのですが2シーターのロードスターの場合にはネックになります。例えば、リトラクタブルハードトップを採用していた先代のBMW Z4はオープンにすると二人分の荷物を積むのにも苦労するほどにトランクスペースが小さくなってしまったのです。一方、幌を採用した現行のZ4ではオープンにしてもゴルフバッグを搭載できるほど実用的なスペースを確保しています。

第2の理由として、リトラクタブルハードトップの場合にはコンパクトに格納するためにフロントウインドウを伸ばしてルーフの部分が短くなります。そうするとフロントウインドウが眼前に迫ってくるため、屋根を開けたときの解放感もそがれてしまい、これならサンルーフと変わらないのでは?と感じさせる車種も少なくありませんでした。BMW4シリーズでは、これを避けるためにルーフを前後2分割するという複雑な機構を採用して対応しています。また、長く傾斜の強いフロントウインドウは乗り降りの際にもちょっと邪魔で、スマートな乗り降りが難しいのもユーザーからの評価を厳しくしました。

第3の理由として、機構が複雑でどうしても重くなってしまうことです。しかもその重量がすべて重心高の高さにつながるルーフの部分にくるのはスポーツカーとしては痛いところでしょう。

こういった理由以外に、幌の持つ独特の雰囲気を好む方が多いことも理由かもしれません。かつて自動車評論家の巨匠、故・徳大寺有恒氏はオープンカーの幌が雨に濡れているのを見るのが好きだ、と語っていました。雨が降っている中をあえてオープンカーで出かける、出かけざるを得ない事情があるのかもしれない。雨の中でたたずむオープンカーにはそんなドラマさえ感じさせる、と。オープンカーはエモーショナルな乗り物、利便性だけでは測れない何かがあるのでしょう。

ドイツ人はオープンカー好き?

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多くのドイツ車がオープンカーを用意していますが、中でもBMWは2シリーズ、4シリーズおよび8シリーズのいずれも偶数モデル名のクーペをベースにしたカブリオレが用意されています。さらに2シーターのロードスターZ4もラインナップに用意されるなど、特にオープンモデルが多い印象があります。

オープンカーの本場といえばアメリカというイメージがあるかもしれませんが、実はアメリカではオープンモデルの人気は年々下がってきており、車種も少なくなってきています。スポーツモデルには高い保険料が課されることやSUVのような頑丈でタフなイメージのクルマの人気が高まっていることが背景にあるとされています。

それに対しドイツではオープンカーに対し根強い人気があります。高温多湿でオープンにして楽しめる時期が短い日本と異なり、ドイツでは4月から11月までの長い期間オープンにして楽しむことができるからです。

日本だと屋根を閉じて走っているオープンカーが多いようですが、ドイツでは多少暑くても寒くても普段から屋根を開けたままで走っている車が多く、中には小雨程度なら開けたまま走るという猛者の方もいらっしゃるようです。

湿度も低く夏は快適なドイツですが、10月のサマータイムを過ぎて冬が訪れると日照時間が極端に短くなります。午後4時にはすでに外が暗くなり、太陽がのぼり明るくなるのは朝8時過ぎです。12月の東京の日照時間(影ができる程度の直射日光がある時間)が平均160時間程度なのに対しドイツのデュッセルドルフは平均なんと40時間!11月から2月までは平均で100時間を超えることはありません。
ちなみにデューリンゲン州の山間部では1965年12月になんと「0」時間を記録したこともあるそうです…。

冬は曇りや雨の日も多いのでどうしても気持ちがブルーになりがち、だからこそ太陽が出ているときにはその陽光を思う存分楽しみたい、という気持ちがオープンカーに向かうのかもしれませんね。生真面目でお堅い印象のあるドイツでオープンカーのラインナップが豊富なのはそんなドイツのお天気事情も大きく影響しているのでしょう。

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