真冬にバイクでツーリング、というと「それは何かのガマン大会ですか?」、という先入観を持つ方も多いはずです。しかし、冷たい風を防ぐ大型のカウリングやグリップヒーターなどの快適装備満載のBMWバイクなら真冬でも快適なツーリングが楽しめるのです。今回はBMWバイクで快適に冬のツーリングを楽しむ方法を解説していきます。
実は夏よりも快適?冬のツーリングがおすすめな理由
冬のツーリングをおすすめする理由ですが、まず何と言っても大気が安定して晴れた日が多く、空気が澄んでいることが挙げられます。
日本の夏は突然の雨も多く、湿度も非常に高くなります。また、最近では台風が上陸する機会も増え、今年の夏もツーリングを予定していたけれど泣く泣く中止にした、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。
それに比べて冬は高気圧が張り出すことにより、とくに太平洋側では晴れの日が多くなります。また湿度も低く、からっとしているのが特徴です。
また草木も冬には落葉するので夏場はうっそうと茂っていて景色が見えなかった場所でも視界が開けて景色が楽しめる場所も増えます。とくに海辺などでは顕著ですが、各観光地も夏場に比べて観光客が少なくなりストレスなく観光を楽しむことができるでしょう。
何より、最近の夏の暑さではもはや屋外での活動は危険と言っても良いレベルです。何しろいったんは決定していた2020東京オリンピックのマラソンと競歩を直前になって札幌に変更するほどです。
装備やウェアである程度温度調節が可能な寒さと異なり、暑さの場合は温度調節が非常に困難です。とくにバイクの場合にはあまり薄着になってしまうと走行中の風圧で疲れやすくなりますし、転倒時のリスクも高くなります。
バイクといえば夏、というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、むしろ現在では夏のほうがバイクに乗るには厳しいシーズンになっていると言えるかもしれません。
BMWバイクなら冬でも快適な装備が満載
BMWバイクは冬場でも快適に長距離を走行できる装備が充実しているのをご存知でしょうか。
例えば大型のフェアリングは、もともとライダーを高速走行時の風圧から守るために装備されたものですが、BMWの生まれ故郷ドイツには速度無制限のアウトバーンがあります。ビキニカウルやフェアリングをBMWが量産市販車で初採用したのもアウトバーンでの走行を考えてのことでした。アウトバーンで鍛えられたBMWバイクのウインドウプロテクション性能については、他メーカーからもお手本とされるほどです。
とくにフェアリングの中でも防風効果の面で大きな役割を果たすウインドウスクリーンについてはモデルごとにシステムは異なりますが、角度を変えられることで快適なライディングができるよう工夫されています。
中にはR1200RTのようにハンドルに設けられたスイッチを押せば無段階でウインドウスクリーンを調整することができるモデルまであります。走行中でも気軽に速度や風向きにあわせて角度や高さを変えられるのは便利ですね。
ネイキッドタイプのR1200Rなどでもメーターの前に小ぶりなウインドウスクリーンが装着されており、高速時にはこれが見た目以上にウインドウプロテクション効果を発揮します。ウインドウプロテクションに関してBMWは相当のノウハウを蓄えているに違いありません。
またほとんどの車種に標準もしくはオプションでグリップヒーターが装着されるのも見逃せません。ここまで積極的にグリップヒーターの標準装備化を進めるメーカーはBMW以外には見当たらないほどです。何といっても手はバイクの操縦に直接かかわる部分なので、かじかんでしまって動かない、となるとバイクを楽しむどころの話ではなくなってしまいます。
さらにR1200RTなど一部の車種にはシートにもヒーターが内蔵されています。まるで四輪の高級車のようですね。これなら冬場、シートに腰を下ろした瞬間に、「寒っ!」となることもないでしょう。
また、高速道路ではクルーズコントロールを活用することで疲労の軽減を図ることができます。単に一定の速度をキープするだけでなく、スイッチ1つで1km/h刻みで速度を設定できるなど、きめの細かい配慮が行き届いているのはさすがアウトバーンで育ったバイクと感じさせます。
ライダー自身が操作するよりもスロットルを一定に調節することができるので低燃費も期待できるクルーズコントロール、積極的に使わない手はないでしょう。
高機能ウェアを選んで3レイヤードが基本
BMWバイクは冬のツーリングにも対応した装備が充実していますが、それでもライダー自身も寒さ対策を行う必要があります。
かつては革のジャケットが冬のライダーの正装、といったイメージがありましたが、革のジャケットでは真冬の寒さには力不足です。
また、冬には重ね着で寒さに対応しますが、単純にカジュアルウェアを重ねて着るだけでは着ぶくれして動きにくくなり、風でばたついて疲労の原因となることもあります。
冬のライディングではウェアはベースレイヤー、ミッドレイヤー、そしてアウターレイヤーの3層レイヤーが有効と言われています。
一番下で肌に触れるベースレイヤーはいわゆるアンダーウェアですが、単に暖かいだけではなく、汗を吸い上げて蒸発させる機能が求められます。実は冬場であってもライダーは汗をかいており、汗をうまく逃がさないと汗冷えを招くことになります。
ベースレイヤーの上に着るミッドレイヤーには暖かい空気の層を作り出す機能が求められます。最近は軽量でも薄くて暖かいダウン素材でスリムなフォルムのものが主流となっています。
一番外側のアウターレイヤーには、ベースレイヤーとミッドレイヤーで作り出した暖かい空気を逃がさず風を防ぐ機能が求められます。ベースレイヤーとミッドレイヤー用のウェアはアウトドア用のものでも良い製品があり、そちらを活用するのも手ですが、アウターレイヤーについてはやはりバイク用にデザインされた専用品のものをおすすめします。最新型のバイク用アウターウェアは軽くて防風機能の高い素材を使用しているのはもちろん、立体裁断によりバイクに乗った時の姿勢にフィットするよう作られているからです。一見、同じようなデザインであってもアウトドア用のウェアではバイクに乗って前傾姿勢をとることを想定していないため意外に窮屈だったということもありえます。
また首、手首及び足首の3ヵ所はしっかりガードしておくと体感温度がかなり違います。逆に夏場はこの三ヵ所を冷やせば体感温度を下げることができることもあわせて覚えておくと良いでしょう。
冬のツーリング、ここは気をつけて!
冬のツーリングには、季節ならではの注意点もあります。まずはタイヤ選びについてです。
冬場は路面の温度が低いのでタイヤが温まりにくく、タイヤ本来のグリップ力を発揮できる温度まで達するのに時間を要することは知っておいたほうが良いでしょう。
とくにS1000RRのようなスーパースポーツ系の場合には、いわゆるハイグリップと呼ばれるタイヤが装着されているため、その傾向が強くなります。
一方、スポーツツーリングタイヤの場合にはタイヤが温まっていない状態でもグリップ力の低下はハイグリップタイヤほどではありません。さらにスポーツツーリングタイヤは排水性の高いトレッドパターンを採用しているので、晴れた日でも朝晩は霜で濡れていることも多い冬の路面でも安心です。
とはいえ、冬場には昼間でも山間部の日陰では路面が凍結している場合もあるので、いくらBMWが安定したバイクだからといって飛ばし過ぎには要注意です。とくに気をつけたいのは橋の上で、地面からの熱がないので路面温度が極端に低下しやすく、橋にさしかかった瞬間タイヤがスリップしてあせった…という経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
冬のツーリングでもう1つ気をつけたいのが強風です。典型的な冬型の気圧配置では風が強くなる傾向がありますが、とくに強風時の横風には注意が必要です。いかに直進安定性が強いBMWバイクといえでも簡単に車線オーバーしてしまうほどの強烈な横風が吹くこともあります。風の強い時には必ず車線の中央をキープして、突然の強風に備えるようにしましょう。
とくに気をつけたいのが路面の凍結と同じく橋の部分です。高速道路の橋梁は高い場所にあることも多く、前後左右からの風の影響を受けやすい箇所です。
また、トンネルも要注意です。トンネルの中はもちろん風の影響を受けませんが、そこで油断してしまうと出た直後に強烈な風にあおられて危険な状況になることも考えられます。トンネルの出口が見えてきたら再度しっかりとニーグリップをして下半身をホールド、車体と気持ちを引き締めるようにしましょう。
気軽なワンデイトリップもおすすめ
冬場は寒くてなかなかツーリングの計画も立てられず、せっかくのBMWバイクもほこりをかぶったまま…という方、いらっしゃいませんか?
そんな方には気軽なワンデイトリップをおすすめします。朝は無理に早起きせず、日が昇ってから出発して、帰りは夕方までには自宅着といったスケジュールでも高速道路を使えば片道100km~150kmのコースは簡単に組めます。
ワンデイトリップなので目的は欲張らず、地方の美味しいラーメンを食べる、温泉に入る、あるいはSNSで見つけたお洒落なカフェでパンケーキにコーヒーといったものでも良いでしょう。
BMWバイクのオーナーの方はロングツーリングが趣味の方が多いので、「それはツーリングと呼べるの?単なるおでかけじゃない?」と思われる方も中にはいらっしゃるかもしれません。
でもワンデイトリップにはワンデイトリップならではの無理をしない楽しさもあります。どうしてもバイクに乗るのがおっくうになる冬場こそ、気軽にBMWバイクにまたがって出かけてみるのはいかがでしょうか?