空前のSUV人気 BMW X5は王者となれるか?

近年、街中でも大きなクルマを見かけることが多くなってきました。おおよそ1990年代には、ステーションワゴンのブームが到来していて、スバルやボルボのステーションワゴンタイプの車を多く見かけることができました。しかし、2000年代に入ってからは日本のみならず、世界的なSUV人気に火が付くことになります。そのきっかけの1つともいえる車種が、「BMW X5(E53型)」の登場です。

そして、昨年には第4世代としてモデルチェンジされた「BMW X5」が発表され、2019年2月に販売されました。果たして、この新モデルの「BMW X5」は熾烈なSUV競争で王者となれるのでしょうか。他社の動きと併せて検討していきたいと思います。

新型「BMW X5」は“本格的”なSUVへ

「BMW X5」というと、「ラグジュアリーな街乗り志向が強いSUV」というイメージが強いという人も多いのではないでしょうか。恐らく、そのイメージは初代モデルが「5シリーズ」をベースにしているため、その影響が強く出ていると思われます。とくにベースとなったのは、日本人のカーデザイナーとしても有名な永島譲二氏が手掛けた「5シリーズ(E39型)」であり、そこへランドローバー的なエッセンスが加えられた結果として「BMW X5(E53型)」が誕生しています。そこから20年が経過している現在までに、BMW市場でも稀にみる台数を販売しSUV史に残るロングヒットとなっています。

そんな人気のあるモデルが満を持して、第4世代として昨年のパリモーターショーで披露されました。
なぜこのタイミングで?と疑問をお持ちの方も多いかもしれませんが、Xシリーズの生産拠点はドイツではなくアメリカにあるため、現地開催となったデトロイトモーターショーで先行して「BMW X2」を発表し、同年のパリモーターショーで「BMW X5」を目玉の1つとして発表したと思われます。この発表において、BMWは新型「X5」では“オフロード性能”に重点を置いた開発をしたと述べています。たしかに一見するだけで、これまでの「BMW X5」よりも頼もしい外観が目を惹くデザインとなっています。

踏破性を高める設計へ

これまでに「BMW X5」シリーズに乗ったことがある方や見慣れている人にとっては、その全体的な重量感に圧倒されるかもしれません。前モデルと比較すると、全長が25mm、全幅は65mmも増しており、ユーザーの居住空間とラゲッジスペースも広くなったように感じられます。これらの変更は走りに大きく寄与するというよりも、安全面を重視した結果の変更と説明されています。とくに日本よりも安全性基準が厳しいとされている欧州において、BMWは独自の厳格な検査を設けることで試験を通過しています。今回のボディサイズの変更も、それらの安全性検査を通過するための方策と考えられます。

大きな外観を感じられるのは単純なボディサイズの変更だけでなく、グリルやアルミ製の装飾によるところも大きいです。まず、目を惹くのがフロントに備えられた巨大なキドニーグリルとアルミ製の装飾ではないでしょうか。キドニーグリルといえば、もはやBMWの顔としても定番と言えるもので、新型の「X5」では前モデルよりも大型化されていることが分かります。とはいえ、重くなり過ぎないためにパーツの多くでアルミ素材を採用していて、エアサスペンションが車体を支えているため、それらの恩恵を走りの面でも受けることができるようになっています。つまり、オフロードの踏破性を考慮しながらも、都会的なラグジュアリーさも洗練されているデザイン設計と言えます。

最新OSでよりデジタル化

画像引用:https://www.bmw.co.jp

BMWの新世代モデルに採用されているのが、「BMWオペレーティングシステム7.0」と呼ばれているシステムです。ドライバーシートに腰を掛け、エンジンをかけると目に留まるのが完全デジタル化されているディスプレイ。情報が集約され、ドライバーへ提示するためのヘッドアップディスプレイは次世代のクルマを感じさせるシステムではありますが、主要なコントロールには物理的なスイッチが用いられています。また、スマートフォンとの連携も強化されており、鍵の代わりにスマートフォンを設定して施錠も可能になっています。

オフロードの踏破性を追求するという側面が強く出ている新型「BMW X5」では、オフロード走行時のタイヤコンディションや状況をモニターに表示することができます。つまり、どのような悪路であっても瞬時にモニターから状況を確認し、適切なハンドリングができるのです。

ライバル車との差別化は?

新型「BMW X5」には特徴的な機能や外観など、刷新される部分が多くありましたがライバル車との差別化は図れているのでしょうか。
「BMW X5」のライバル車として挙げられることが多いのは、「アウディ Q7」や「メルセデス・ベンツ GLS」です。価格やクロスオーバーSUVという共通点も勿論のこと、日本人にとっては馴染みのある外車という点でも比較対象とされやすいようです。細部まで比較していくと多くの差異が見えてきますが、走行性能や燃費性能では大きな差が付きにくいと言えます。

ただし、「BMW X5」はエンジンに関しては前モデルを継承していますが、制御システムを改善していることと環境性能に関しても一層の配慮がなされているという点に関しては、頭1つ抜きんでているといえるでしょう。

一方で、車体の大きさは前モデルまでは「BMW X5」が小さかったのですが、今回の新型からは同等の大きさということもあり、外観からもライバル車に負けない重量化を得ています。また、最新の室内環境を鑑みても競合が少ないクラスにおいて、「BMW X5」はトップといえるクルマに仕上がっています。

日本のSUV市場に食い込めるか

画像引用:https://www.bmw.co.jp

日本では顕著にSUV人気を感じることができますが、ラグジュアリーな価格帯というと日本車でライバルとなり得る車種は少ないと言えます。一方で、その大きさや維持費の高さから”あえて国産SUV”を選択する層も増えています。そのように考えたときに、「BMW X5」は日本市場でどれだけ覇権を握ることができるでしょうか。

「BMW X5」が日本市場で王者となるためのポイントとして、いくつかの条件が挙げられます。その中でも重要なことが、高価格帯のSUVでも“遊べる高級車”という感覚を浸透させることが課題としてあります。日本で売れているSUVといえば、「BMW X5」と同価格帯のものは少ないだけでなく“軽SUV”が歓迎されている潮流も見て取れます。また、「BMW X5」の価格帯には魅力的なセダン型の車種も多くあるため、そちらを購入する人も多いのです。これらのことから、「BMW X5」を購入できる層は、遊ぶためのクルマと街乗りの高級車を分けて所有している傾向にあると言えます。

つまり、「BMW X5」こそが、両方のニーズを満たしたクルマであるということを強く打ち出していくことが日本市場で王者となるためのポイントです。とくに、日本市場において高級SUVという市場はニッチであるために、BMWがこれまで以上に市場を開拓していき新たな顧客層を獲得できれば、日本のSUV市場で覇権を握ることができます。とくに、今回の新型「BMW X5」はラグジュアリーさを強めている一方で、アウトドアでも遊べるクルマというコンセプトで開発されています。この唯一無二のポイントを訴求していくことで、まだ開拓されていないSUV市場の一角を独占することができることから、まだまだ日本市場でシェアを拡大することができる可能性があると考えられます。

発売が待ち遠しいクルマ

ここまで紹介してきた新型「BMW X5」は、日本での発売は2019年度と見込まれています。そのため、欧米仕様の新型「BMW X5」と日本販売モデルでどのような差異があるかも注目が集まっていて、多くのユーザーの期待感を高めているクルマとなっています。同カテゴリーのライバルと比較しても、性能や外観でも勝てる一台となっている「BMW X5」。この唯一無二の個性を持った「BMW X5」が、日本で販売される日を楽しみに待つこととしましょう。

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