自ら変革を起こす企業!BMWの販売戦略

BMWグループ全体の2018年世界新車販売台数は過去最高の249万664台となりました。前年比では1.1%増、なんと8年連続で前年実績を上回っています。BMWブランド車では212万5026台を販売し販売台数の過去最高記録を樹立しました。BMWと言えばすでに確立されたステータスを持った企業というイメージですが、現状維持にこだわらずに自ら変革を起こして果敢にチャレンジしていく企業です。だからこそ、このような数字を実現できるのではないでしょうか。そんな、BMWの変革を伴う販売戦略を見ていきたいと思います。

2018年のBMW販売台数

BMWグループの主要地域における2018年 12月/累計販売台数

画像引用:https://www.press.bmwgroup.com/japan/article/attachment/T0290383JA/422843

 

BMWグループの2018年 12月/累計販売台数

画像引用:https://www.press.bmwgroup.com/japan/article/attachment/T0290383JA/422843

地域ごとの内訳を見ていくと、欧州での販売台数が最も多く109万7654台ですが、前年比0.3%減と5年ぶりのマイナスとなりました。しかし、3年連続の100万台超えを達成しています。アジアでの販売が87万4828台と好調に推移していて、中でも中国での伸びが大きく63万9953台と前年比で7.7%も伸びました。アメリカの販売台数は欧州・アジアに比べると低く45万6325台ですが、前年比では1.4%増と好調であることが分かります。また、EVにも力を入れていて、2018年の販売目標の14万台を上回り14万2617台を販売しています。これは前年比38.4%増となる大幅な伸びを記録しました。

最大の売り上げを誇る欧州市場

欧州市場では新しい燃費試験「WLTP」の導入による影響がでました。WLTPは従来の新欧州ドライビング・サイクル(NEDC)よりも実際の状況が反映されるように設計された試験です。この対応に遅れた他社では、保有するクルマの在庫処分を余儀なくされました。さらに、大幅な値下げをしたため相場が崩れ、BMWも巻き込まれるかたちで利益を削ることになりました。欧州市場はアジア市場に比べると販売台数の伸び率は低いものの、BMWにとって売り上げの多くを占める重要な市場であり、10億ユーロ(1300億円)を投じ新工場をハンガリーのデブレツェンに建設することを発表しています。年間の生産能力は15万台、1000人以上の新たな雇用を創出するという大規模なものです。生産開始時期は未定で、2019年後半から2020年とみられています。

本国ドイツを上回る大きな市場へと発展しつつある中国市場

画像引用:https://www.bmw.com.cn/zh/index.html

2018年販売台数で大幅な伸びを見せた中国を見ていきましょう。中国で外資メーカーがクルマを単独生産することは認められていないため、中国企業との連携が必要になってきます。BMWは2003年にブリリアンス・チャイナ・オートモーティブ・ホールディングスとの合弁会社「BBA(BMWブリリアンス・オートモーティブ)」を50%の出資比率で設立します。この出資比率は、中国の自動車事業に対する外資規制に従ったものです。しかし、中国政府が2018年4月に同規制の乗用車分野での出資規制を2022年までに緩和すると発表したため、BMWはBBAに対する出資比率を75%へと高めるようです。さらに、2019年以降、瀋陽市(遼寧省)における2工場の生産能力増強により、年間販売台数を52万台に引き上げる計画を立てています。BBAでは中国で販売されるBMWのすべてのモデルを生産していて2017年度、中国で販売された車両の3分の2はBBAによって生産されたものでした。

中国のNEV規制

BMWはさらに、中国自動車民営大手、長城汽車との合弁会社を設立しMINIブランドの電気自動車の量産に乗り出しました。中国でのMINI生産は初めてで、これまでは欧州から輸入していましたが、プラットホームを共同開発し中国向けだけでなく世界への輸出も視野に入れています。また、中国のNEV(新エネルギー車)規制で、同国における生産台数の10%以上を電気自動車(EV)や50㎞以上EV走行できるプラグインハイブリット、または燃料電池車にするよう義務づけされました。この規制もあって、一定量のEVなどの販売を確保するために、安価なクルマづくりを得意とする長城汽車との提携が必要でした。このように、その国ごとの規制や法律、文化などに応じた柔軟な戦略をとらなければならないときもあります。しかし、その一方でBMWにはしっかりとしたブランドコンセプトも存在しています。

キャッチコピーから見るブランドコンセプト

画像引用:https://www.bmw-wagner.de/unternehmen/standort-wasserburg/

変革を起こし前進していくには、しっかりとしたブランドコンセプトが必要で、それがなければ目的もなく彷徨ってしまいます。ブランドコンセプトは航海をする上での舵の役割をしており、企業という大きな船が彷徨わないためにもとても重要なものになります。「Freude am Fahren(駆け抜ける歓び)」または「The ultimate driving machine(究極のドライビングマシン)」というキャッチコピーは現在も使われているブランドコンセプトです。BMWのセールスポイントである性能の高さや、ドライビングの面白さを簡潔に表現しています。これらのキャッチコピーで顧客はBMWを購入することのメリットが「走り」にあることを明確に認識し、ブランドイメージとしても頭に残すことを可能にしています。

BMWのブランディング

BMWはブランディングの成功例としてよく挙げられることがあります。ブランディングの大切な要素としてあるのが、ブランドの持つイメージを顧客がどれだけ強く頭の中でイメージできるかです。BMWでは「走り」というイメージと結びつけることに成功しています。またそのイメージを実現するだけの技術力も備えています。このブランディングの一貫性を図るため、FR(フロントエンジン・リアドライブ)という駆動方式を長年にわたり採用してきました。しかし、大きな変革と共に私たちを驚かせたのが、FF車の投入でした。

BMWブランド初のFF車

画像引用:https://www.bmw.co.jp/

BMW japanのペーター・クロンシュナーブル社長は自らのミッションとして日本で変革を起こすためにやってきたと語り、10年前には業界の覇者だった会社がビジネスと組織を変革しなかったために急速に衰えた事例を挙げ、変革の重要性を説いています。2014年の就任時には、期を同じくして本国でBMWブランド初のFF車「2シリーズアクティブツアラー」が発表されています。ペーター・クロンシュナーブル社長はこのFF車を日本市場に投入する時の陣頭指揮を執り、「全く新しい顧客のグループを狙っていく」と言明しました。

日本での戦略

画像引用:http://www.jcoty.org/record/coty2015/

日本は世界でも珍しいミニバンが主力となる市場で、従来の小型車では訴求不足だったファミリー層に狙いを絞り投入されたのが、BMW初のFF車「2シリーズアクティブツアラー」です。開発に際し、ミュンヘン本社では「どんな形状や駆動方式でもBMWらしい走りを実現しなければならない」とのルールの元、ブランドイメージの維持に努めたとドイツ本社の開発担当者は語っています。努力の甲斐もあって、ブランドイメージは損なわれず、2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいて、輸入車の頂上となる「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得します。高いレベルの「駆け抜ける歓び」を実現したことを評価されての受賞です。変革を伴いながらも、その根底に備わるBMWの「走り」は変わらずに根づいています。

変革と伝統の調和

いかがでしたでしょうか。国ごとに様々な人が住み、違った法律や規制または特色があります。この変化に富んだ世界を駆け抜けるためには、柔軟な対応が必要です。それに加え、こだわりがなければ良いものは作れません。しかし、それに執着しすぎてしまえば、変革を起こすことができなくなります。BMWには変革を起こす勇気と「走り」へのこだわりがあります。この変革と伝統とも言えるこだわりを調和させることで、時代の変化に合わせた新たなBMWを見せてくれるのではないでしょうか。

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