ヒストリック・カー(注1)ファンにはお馴染みのレトロモービルが今年(2019年)も開催されています。世界中にヒストリックカーのイベントはあれども、フランス・パリというまさに絢爛な都市で行われているレトロモービルだからこそ、世界的に影響力があるのです。
注1:ヒストリックカーとは、定義としては諸説ありますが、国際自動車連盟が定めたところによると、1990年代までに生産された車を総称してヒストリックカーと呼んでいます。
毎年開催されているこの祭典、今回で第44回目の開催となり、世界中から650社を超える企業が集結。そんな歴史ある名車たちが勢ぞろいするイベントにBMWが参加することに。
レトロモービルとは?
レトロモービルは、「パリをカーコレクターの都にする」をコンセプトにしていて、ヒストリックカーに興味のあるすべての人のためのイベントです。例年、パリにある国際展示場の「ポルト・ド・ヴェルサイユ」で開催されていて、広大なエリアには、600台以上ものヒストリックカーが展示されています。前年の2018年は、600万人以上の来場者を記録していて、例年とても人気の展示会の1つなのです。
レトロモービルは、伝説的なヒストリックカーをダイナミックにディスプレイで紹介しているため、雑誌でしか見たことのないような車を間近で鑑賞することができる、マニアにとってはたまらないイベントなのです。これまで、購入するまでには至らなかったような車が展示されていることが多いので、優れたモデルやコレクションを再発見することができる新しい機会です。
また、レトロモービルが人気の理由は、ただ国際的に有名だからというわけではありません。コレクターのためにオークションも開催されていて、3200万ユーロもの記録的な売り上げを達成したオークションハウスであるArtcurialを含んでいる、世界の3大オークションハウスが一堂に集う機会でもあるのです。そのため、毎年世界の国々から、ヒストリックカーコレクターが集まってきては、オークションに出された車をオークションで購入していきます。
BMWが掲げるのは「BMWロードスターの歴史」
今年のレトロモービルは、2019年2月6日〜10日の間で開催中です。BMWグループ・クラシックは、BMWフランスとフランスのBMWクラブと協力することで、BMWの歴史を紐解く貴重な車両をこのイベントに送り込んでいます。
今回のレトロモービルでの展示でBMWが掲げたテーマは主に以下の3つです。
- BMWロードスターの歴史
- ラグジュアリーセグメントにおけるBMWの伝統
- 過去40年間にわたるBMWとモータースポーツ
レトロモービルでは、車体だけではなく、ヒストリックカーのパーツを販売していたり、BMW製のヒストリックバイクも公開されるため、非常に多くのBMWコレクターから支持を得ている展示会でもあります。2月のレトロモービル開催に先立って、BMWが所属するヒストリックコレクションを管理する部門である「BMWグループ」は、フランスのヒストリックカーオーナーへのサービスを開始すると発表しています。
これは、フランスでも「BMW認定クラシックパートナー」が適用されることを意味していて、自動車の購入販売に関するアドバイスや、修理・部品供給の分野でサポートを行ってくれることを明示しています。
参加予定のBMW車は?
BMW M1
BMW M1は、BMWが1970年代にモータースポーツでの活躍を期待したことに端を発している、スーパーカーです。生産に至るまでには、当時同じく自動車メーカーとして活躍していたランボルギーニと提携して製造に着手し始めていましたが、この際にランボルギーニ側と揉めてしまい、発売が遅れてしまったという逸話があります。
その後ドイツのバウアに委託先が変更され、他の塗装や、シャシー(車の外枠のこと)がイタリアに送られて、最終的にはBMWモータースポーツによってサスペンションなどが組み込まれることで、完成までこぎつけました。1978年秋のパリサロンにてBMW M1として発表されたのですが、製造の拠点を一括で管理出来ていない複雑な生産工程だったため大変効率が悪く、週に2台に設定されていた生産ペースは遅れて、月3台前後がやっとであるという状態になってしまいました。
このままレースに出ないと終わってしまうことを危惧していた本社では、プロカーレースを企画し、当時のF1トップクラスレーサーだった、ニキ・ラウダやネルソン・ピケなどのドライバーが成功を収めたため、それなりに人気が出たモデルでした。
BMW 507とスピードボード
1955年には、今や伝説ともなっているモデルが鮮烈なデビューを果たしていました。おしゃれで高級感のあるオープンスポーツカーの「BMW 507」は、1955年のフランクフルトモーターショーで発表されていました。この507に由来するのがスピードボードの存在です。1957年にBMWは、ウェルフト・ランベック造船所に、自動車のデザインを取り入れたスピードボードの設計を依頼しました。このスピードボードは、自動車エンジンをベースとした、「BMW 401マリン」が搭載されていて、これはBMW507に搭載されたものを完全に一致するようにできています。
ボードはつい最近発見されたもので、元あった造船所によって一旦修復が施された後、完全な状態で保存されています。今回のレトロモービル2019年では、BMW507とスピードボードの楽しさを受け継いでいる存在として、BMW8シリーズのコンパーティブルが同じところに展示されています。
BMW Z1
オープンタイプである、「BMW Z1」は、今から30年くらい前の1989年に発売されたモデルで、いわば2000年代に発売され爆発的な人気を得たZ4の始祖的なモデルです。
Z1は1986年に初めてマスメディアに公表されてから、凄まじい人気を誇っていて、生産前から5,000台以上の注文を受けて、1988年には35,000台分の注文を受注していると発表していました。シャシー(車体のフレーム)がスチール製だったり、上下に昇降するドアや、プラスチックボディパネルを取り付けることができたりと、革新的なアイディアがいくつも投入されて、当時としては革新的なアイディアがいくつも投入されていたため、重宝されていました。ただ、Z1はその後急速に勢いを落としていて、1991年には生産がストップしてしまったことでも知られています。これは、この時期メルセデスベンツが市場に参入してきたことなどが人気を落とす原因になり得たのではないかと言われています。
今年の2019年のレトロモービルでは、1991年までに生産された8000台のうち1台が公開となり、希望者に向けて販売されています。
この他にも、1970年〜1980年代にかけて活躍した「BMW320ターボ」やヒストリックバイク「BMW R51/3」だったり、「BMW R 60/5」などが展示して販売されています。
2019年のレトロモービルもヒストリックカーファンにはたまらない!
現在、第44回レトロモービルが、フランス・パリにて開催されています。44回目の今年は、BMW以外にもプジョーが時代を彩った名車を5台ほど出展することを決めていたり、シトロエンが誕生100周年を記念する特別展示を行っています。また、ヒストリックカーを多数出展していることに加えて、「過去から未来に繋げる」という狙いもあり、最新のコンセプトカーとして『eレジェンド・コンセプト』も出展しています。eレジェンド・コンセプトは、自動運転、電動化、コネクテッド化をコンセプトにした車で、近年の車に求められるものを備えた車のことを指しています。
各メーカーの過去のレジェンド車だけではなく、未来の革新的な車も見ることができるレトロモービル。今年もこのイベントから目が離せません!