初の電動グランクーペ「BMW i4」に求められるものとは

未来的なルックスと実用的な機能性から支持を集めている「BMW i3」、スポーツカーの未来をPHEVという形で示した「BMW i8」。これら先進的な”iシリーズ”に新たな仲間が加わることになりそうです。

2020年3月3日にBMW初となるEV(電気自動車)グランクーペのコンセプトモデル「BMW コンセプト i4」が公開されました。「BMW i3」の成功を受けて開発される「BMW i4」。その前段階として公開された「BMW コンセプト i4」は、どのような性能を秘めているのでしょうか。

コンセプトながらも高い完成度

公開されている「BMW コンセプト i4」の紹介動画

世界中で感染が拡大している新型コロナウイルスの影響を受けて中止となった”ジュネーブモーターショー2020”で発表予定となっていた「BMW i4」は、急遽BMW本社のあるドイツ・ミュンヘンからオンラインで発表されました。

ジュネーブモーターショーで発表する内容をコンパクトに詰め込むような形となりましたが、クルマだけでなくバイクや経営戦略についてもしっかりと示すことのできたワールドプレミアとして無事に閉幕。しかし、未だに熱が冷めやらないというファンも多いのではないでしょうか。とくに、多くのサプライズがあった中で最も多くの人を惹きつけたコンテンツが、「BMW コンセプト i4」の世界初公開です。

BMW初のピュアEVとなった「i3」の発表から約7年の月日が経った今、新たなピュアEVをグランクーペクラスで開発し販売するという内容に、ファンやプレスも多くの議論をインターネット上で交わしています。今回発表されたのは名前の通りコンセプトモデルとなっており、実際に販売する「BMW i4」のイメージや具体的な性能を発表するためのものです。そして、BMWは2021年を「BMW i4」を目途に生産開始することを目指しているため、コンセプトモデルとはいえ多くの部分で実売モデルと共通になることが予想されています。

なぜこのタイミングで発表するのか?

画像引用:https://www.bmw.co.jp

高い完成度をもって公開された「BMW コンセプト i4」ですが、なぜ2020年のジュネーブモーターショー開催のタイミングで発表を予定していたのでしょうか。

そこには、BMWが構想する”EVモデル”の経営戦略が深く関係しているのです。2013年に発表された「BMW i3」を皮切りに、BMWのピュアEV(電気だけを使用する電気自動車)の歴史が始まったことは記憶に新しいと思います。これに続くように発売された「BMW i8」は、ピュアEVではなくPHEV(家庭用電源から給電可能で、ガソリンを用いた内燃機関も併用したクルマ)という形を取りながらも次世代のスポーツカーというものを現実的に落とし込んだモデルとなりました。日本では燃費性能の面からPHEVの人気が高まっていたため、これまでにない本格的なPHEVスポーツカーは多くの人たちに歓迎されました。

一方で”iブランド”の選択肢としてはコンパクトな「BMW i3」とスポーツカーに近い「BMW i8 クーペ(ロードスター)」しかなく、通常のラインで主力であるセダンやグランクーペ、SUVタイプの開発が急がれています。実際に今回はグランクーペタイプの「BMW コンセプト i4」が発表されましたが、以前には2018年の北京モーターショーでは「BMW iX3」というコンセプトモデル、同年のロサンゼルスモーターショーでは「BMW Vision iNEXT」が発表されています。

「BMW iX3」と「BMW Vision iNEXT」はともにピュアEVの”SAV”(スポーツ・アクティビティ・ビークル)として発表されており、「BMW iX3」の市販車画像は「BMW コンセプト i4」と共に新たに公開もされています。とくに、「BMW iX3」は2020年内の発売を目指しているため、「BMW i4」よりも先行して発売される見込みです。

つまり、BMWのフラグシップモデルであるグランクーペをピュアEVでも販売するためのロードマップとして、コンパクトな「BMW i3」とPHEVの「BMW i8」を開発・販売したノウハウで「BMW iX3」と「BMW i4」を市場に送り出したいのです。そのためには、2020年内販売を目標にしていた「BMW iX3」の市販車生産の体制が整わなければならないタイミング、つまりジュネーブモーターショー2020が開催されるタイミングで2021年発売を目標としたプロトタイプである「BMW コンセプト i4」を披露する必要があったのです。

BMWの先進技術を詰め込んだ性能に

画像引用:https://www.bmw.co.jp

一般的な名称であるSUVをあえて使わずに“SAV”と呼称した「BMW iX3」やスポーツタイプの「BMW i8」の開発を優先したことからも、BMWが“走りを楽しむクルマ”を作っているということが伝わってきます。とくに「BMW i4」においては、グランクーペの名を冠していることから“走る楽しさ”と“快適な居住性”を両立しなければなりません。それに加えて、自動運転技術レベル3(緊急時以外はシステムが運転を実施)かつピュアEVで設計すると発表しているため、開発自体が非常に難しいものであることが分かると思います。

トヨタやメルセデスベンツをはじめ各社が積極的に実験していますが、BMWも早い段階で先進技術の開発に取り組んでいます。そのため、自動運転技術レベル3の走行実験については他社をリードしており、当面の課題は公道での実証実験とEV車にどのように取り込んで設計するかが他社と差別化を図るための鍵となっています。

一方で、EV車開発に関しては前述したように「BMW i3」や「BMW i8」、「BMW iX3」で積み上げてきた経験とスキルが活かされるため、これまで以上に先進的で使いやすいものに仕上がることが期待されます。事実、先日の発表で公開された動画の多くでは、これまでの開発を活かしたデザインが見受けられます。

特徴的なフロントデザイン
画像引用:https://www.bmw.co.jp

ベースデザインは4シリーズの4ドアクーペを踏襲しており、顔ともいえるフロントデザインはiブランド特有の吸気口がないキドニーグリルが採用されています。通常のエンジンは冷却の必要があるために吸気口を設けていますが、EV駆動のために完全に閉じたままのデザインで問題なく、グリル部分には各種センサーを設けた“インテリジェンスパネル”としての機能も新たに付与されています。また、ヘッドライト部分は4シリーズと変わらず4灯式ですが、周囲にはiブランドを示すブルーのアクセントラインが施されています。

空力性能が発揮される“iブランド“らしいデザインに
画像引用:https://www.bmw.co.jp

一方でリア部分も4シリーズを感じさせる優美なデザインとなっており、フロントからリアまで空力性能が考慮されています。決定的に異なるのはマフラーがあるディフューザー部分で、4シリーズのようにマフラーを主張させずにEV車らしくブルーラインと空力性能を考慮したダイナミクスな設計が見て取れます。

すべての操作を効率的に
画像引用:https://www.bmw.co.jp

「BMW コンセプト i4」ではインテリア部分もしっかりとつくりこまれており、“BMWカーディスプレイ”と呼ばれるコンパネと情報部分が一体となったタッチパネルがメーターパネルの代わりに採用されています。すでに搭載されている音声コントロール機能も進化した形で搭載されるため、以前のようにスイッチ類を操作するというよりも必要最小限の操作で、必要な情報を映し出すという未来的で利便性の高いものに仕上がる予定です。

グランクーペに相応しい居住空間
画像引用:https://www.bmw.co.jp

肝心の動力スペックは最大出力530hpを予定しており、現行の新型8シリーズにも搭載されている4.4リッターV8ターボエンジン相当のパワーをEV車でも再現するようです。これに比例するように蓄電容量も80kWhと大容量になり、最大600km相当の航続可能距離が期待できます。

ハイデザイン高スペックでEV市場の覇権を狙う

画像引用:https://www.bmw.co.jp

ピュアEV車でこれだけのスペックを有しているクルマは現に存在しないと言えますが、気になるのはライバルメーカー“テスラモーターズ”の存在です。欧州をはじめとしてEV車の覇権争いに大きな影響を与えているのが「テスラ モデル3」です。当然ながら発売予定の2021年には「テスラ モデル3」もアップグレードしたモデルを投入することが予想されるため、「BMW i4」にとっては覇権を握るための障害となりうるでしょう。

とはいえ、BMWは長年にわたって積み上げてきた安全性能とドライブフィーリングの良さを実現する走行性能。EV車に搭載するだけの確かな技術を有しています。まだまだコンセプトの段階ですので、これから実売に向けてよりパフォーマンスを向上させた形で「BMW i4」が市場に投入されることは間違いありません。もう少し先のお話ですが、今のうちからBMWが描く新たな未来に想像を膨らませてみるのも良いでしょう。

関連記事

月別アーカイブ

ページ上部へ戻る