ガレージを開けて、愛車のBMWを連れ出してみる。ふと見上げれば、青い空と白い雲。あ~なんて今日は絶好のドライブ日和なんだろうか。直径8㎝ほどの愛おしいボンネットエンブレムをジャケットの袖で軽くぬぐい磨いてみる。———— さてさて、クルマにあまり詳しくなくても、このエンブレムを見れば、それがドイツの自動車メーカーBMWだとわかる人も、少なくないのではないでしょうか? ということで今回は、BMW社の歴史とともに歩み続けた、青と白のコントラストが目に焼き付く、あのエンブレムについてのご紹介です。
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BMWの社名は、そもそもエンジン屋という意味
まずは、BMW。皆さん「ビー・エム・ダブリュー」と読んではいるものの、よ~く考えてみれば、アルファベットを発音しているだけですね。もともとBMWという社名は、B=バイエリッシェ(州名)、 M=モトーレン(モーターと同義語)、W=ヴェルケ(製造会社)。つまり、Bayerische Motoren Werke=バイエルン発動機製造会社の略で、そもそもは名前からしてエンジン屋という生い立ちなのです。
その発端は、航空機エンジンメーカーからの出発
BMWの始まりは、1916年まで遡ります。グスタフ・オットー氏が、BFW社(Bayerische Flugzeug-Werke=バイエリッシェ・フルークツォイク・ヴェルケ)として、航空機用エンジンのメーカー (バイエルン航空機製造会社)を設立。今の母体となる会社が誕生し、翌年に名前をBMW社に改め、現在の形となりました。社名を改称するとすぐに航空機用エンジンを本格的に開発しましたが、ドイツは第1次世界大戦の敗戦国となり、その後はオートバイ用エンジンの製造に着手、1932年に四輪車の生産を開始しました。航空機用エンジンの製作に端を発するだけに、エンジンに対する思い入れはめっぽう強く、今までもBMWは直列6気筒にこだわり続けています。ターボチャージャーを欧州車で最初に採用したのも、航空機で培った技術があってのことでしょう。
このロゴマークのデザインは、歴史の推移とともに今まで何度か変更はされてはいますが、基本のデザインとなる二重の同心円ラインと、BMWのフォント、交互に色分けされた青と白のイメージカラーはほぼ変わっておらず、常にBMWの象徴として長い間今も輝き続けています。
宣伝広告による、青と白とプロペラの組み合わせ
このシンプルで印象深いロゴマークは、BMW社の前身である航空機メーカーのBFW社に由来していると言われていました。鮮やかな青と白で交互に4等分された真円のデザイン。2つのカラーは、飛行機が飛ぶ青い空と、バイエルン州の空に浮かぶ白い雲を意匠化。縦横の十字は三枚羽や四枚羽ではなく、複葉機の二枚羽を表現し、プロペラが回転している残像の様子を表したというのが、長い間エンブレムの由来だと思われていました。
しかしながら、もともとのデザインはバイエルンの州旗をもとにしており、青と白のチェッカー柄がロゴマークに反映された話が知られることとなり、二枚羽のプロペラ由来説は、1929年に行われた自社のロゴマークと飛行機のプロペラを重ねて扱った、当時の宣伝プロモーションだと今では考えられています。
※バイエルン州の州の紋章
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BMWが生まれたミュンヘンは、明るく開放的な街
いわゆるBMWが誕生したバイエルン州は、リヒテンシュタイン公国、オーストリア、チェコ共和国と国境を接するドイツ南東部の州。州都はミュンヘン。この街の空気は、確かに私たちが考えるドイツ=暗いお堅いイメージとは少しかけ離れているかもしれません。有名なビアホールで大きなジョッキを傾け、人懐っこく、明るく陽気に騒ぐミュンヘンっ子たち。青空の濃い色も、太陽から注ぐ光のシャワーも、柔らかくて暖かく、街全体に流れる熱気で満ちあふれています。
「青空に回転するプロペラ」もしくは、バイエルンの州旗を意味する「青空に白い雲」を表現したデザイン。そのどちらの説であっても、クルマは生まれ育った風土に色濃く反映されるもの。ストイックな理詰めの緻密さだけではない、妥協を許さない熱き資質がBMWの原点を象徴していそうです。さてと、この続きは、愛車のBMWを連れ出し、爽快な青空と白い雲と共にドライブに出かけましょうか。風に乗るように、道に乗る。そぅBMWの新しい歓びを、ぜひ、あなたにも。