MWの技術と歴史の粋を集めた車椅子が私たちの期待を上回る走りを魅せつけた!

BMWといえばすぐに思いつくのが高級車のイメージではないでしょうか。しかし、元は航空機エンジンの生産からはじまりました。BMWが産声を上げたのは、戦争の最中の激動の時代でした。そんな時代を駆け抜けながら、バイク、クルマへと生産体制をシフトしていきます。

現在の姿からは想像がつかないかもしれませんが、時代の変化とともに一歩一歩を踏みしめながら、ひたむきに製品開発を行ってきた不屈の情熱を内に秘める企業です。

生産する動力源はエンジンだけにとどまらず人力のクルマも開発しています。それが、車椅子です。2016年リオデジャネイロ・パラリンピックでは米国の陸上チームと共同で車椅子を開発しました。車椅子でも私たちの期待を超えるような結果を残してくれています。そんな、BMWの車椅子に焦点をあててお話ししていきたいと思います。

トラックの平坦部では時速30km、マラソンコースの下り坂では70km近いスピードが出ることも!

画像引用:http://dealer-blog.bmw.ne.jp/keiyo-bmw/2016/09/-bmw-2016-bmw-3t545000m115407/

車椅子陸上競技で使われる車椅子は「レーサー」と呼ばれ、その形状をIPC Athletics(国際パラリンピック委員会陸上競技部門)競技規則によって「車いすは最低でも2つの大きな車輪と1つの小さな車輪で構成され、小さな車輪は車いすの前方になければならない、後輪、前輪の直径は十分に空気を入れたタイヤを含んでそれぞれ70cm、50cmを超えてはならない」と厳密に設定されています。

トラックの平坦部では時速30km、マラソンコースの下り坂では70km近いスピードが出ることもあるので、レーシングカーのようだと形容されます。このような高速走行を可能にするためにも後輪は内側に傾斜し、安定性が確保されているのです。また、選手の座る部分には背もたれがついていません。

リオデジャネイロ・パラリンピックでその技術力を魅せつけたBMW Designworks

画像引用:http://www.bmwgroupdesignworks.com/

 

このような、車椅子のレーシングカーを米国陸上チームと共同開発したのが、BMW Designworksです。BMW Designworksとは、アメリカカリフォルニア州ニューベリーパークに拠点を置きます。ドイツのミュンヘンと中国の上海にスタジオをもち、1972年デザイナーのCharles Pelly によってDesignworksUSAという名で設立されました。その後1995年にBMWの子会社となります。

2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックではBMWDesignworksのエンジニアたちが設計した車椅子が米国陸上チームと協力して金メダル3個、銀メダル3個、銅メダル1個を獲得しました。

 

パラ陸上最強女王タチアナ・マクファデン×BMW

画像引用:http://dealer-blog.bmw.ne.jp/keiyo-bmw/2016/09/-bmw-2016-bmw-3t545000m115407/

その中でも異彩を放ったのが、タチアナ・マクファデン選手でした。1989年、先天性の二分脊椎症によって腰から下がマヒした状態で生まれたマクファデン選手は、長くは生きられないという医師の診断もあり実母が手放したため、孤児院に預けられることになります。

その後、なんとか一命をとりとめることができ、1994年にアメリカの保健局の障がい者担当官デボラ・マクファデンさんに引き取られます。6歳でアメリカに移住し、デボラさんのすすめもあって、マクファデン選手は車椅子スポーツを始めるようになりました。

その中の1つである車椅子陸上競技と出会い、そのスピード感に夢中になり、2002年米国ジュニア選手権で年齢別の世界記録を更新して優勝し、頭角を現していきます。

リオデジャネイロ・パラリンピックでマクファデン選手はBMWとタッグを組み、3つの金メダルを獲得し、女子T54クラスの5000Mレースでは11分54.07秒のパラリンピック記録を打ち立てる偉業を達成しました。

 

タチアナ・マクファデン選手も魅了されたスピード感をもたらす「レーサー」とは

画像引用:http://running.pocketoutdoormedia.com/bmw-designs-advanced-racing-wheelchair-for-team-usa_149432

6人の米国選手のために開発された「レーサー」は、車体のベースとなる「シャーシ」と呼ばれるフレームに従来のアルミニウムの代わりにカーボンファイバーを使用しました。カーボンファイバーはアルミに比べ剛性が6倍も向上し、衝撃吸収性に優れ適度にしなることによって選手に伝わる衝撃を緩和します。さらにフレームの剛性が高いことでエネルギーが効率よく使われます。軽さはもちろんのこと、強度の面でもアップしました。

「レーサー開発は選手がトレーニングを行う様子を観察することから始まる」とBMWDesignworks副責任者のブラッド・クラチオーラは語ります。まず、選手の3Dスキャンを作成し、最も空気抵抗を受ける箇所を特定します。その結果、空気抵抗を受けるのが、車椅子ではなく選手の体によるものだったと判明しました。選手はそれぞれが、競技中に特定の姿勢をとる傾向があるため、選手独自の操縦席が必要になってきます。また、競技中に選手の体の位置がずれることによる空気抵抗を避けるために、車椅子にしっかりと固定する必要がありました。それに加え、使用するグローブや体形といった様々な面から収集したデータに基づいて設計されています。

こうしたさまざまなデータに基づいた創意工夫の積み重ねにより、レース中に選手が受ける空気抵抗を約10~15%も減らすことができました。

実際に使用した選手たちは、BMWの「レーサー」の後ろではドラフティングがとても難しいと話しています。ドラフティングとは、前を走る選手の後方につけることで、空気抵抗を小さくできるので、体力を温存しながら走行し、タイミングを見計らって追い抜くことをいいます。ドラフティングが難しいのは、BMWの「レーサー」が周囲の空気を効率よく流すので、背後にいる選手はその空気まで押し分けて走行しなければならなくなるためです。

そもそもドラフティングは、プロペラを使用する航空機の後方に発生する空気流であるスリップストリームを利用した抜き去りの技術で、主にモータースポーツなどで用いられる用語です。BMWがもっとも得意とする分野であり、プロペラはBMWのエンブレムの元となった象徴でもあります。

また、最初は航空機のエンジンを生産していたことも考え合わせると、BMWの技術と歴史の結晶といっても過言ではありません。それを証拠にパラリンピックの裏舞台は、メーカー同士がしのぎを削っての技術競争を行う場として見ることもできます。

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会での活躍も期待される

画像引用:https://tokyo2020.org/jp/games/emblem/

2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックでBMWの担当者は東京オリンピックでは表彰台を独占できるように、さらに技術力を高めたいと話していました。

決して冷めることのない不屈の情熱を持った選手と、不屈の情熱とともに歩んできたBMWが交われば、ピンチをチャンスに変え感動という名の化学反応を起こしてくれます。BMWのエンブレムを見たときに、あなたの心の中にも情熱の炎を点火させてくれるのではないでしょうか。

いよいよ迫ってきた東京オリンピックでは、メーカー同士の裏舞台の競争も考え合わせながら観戦すると、よりオリンピック・パラリンピックが楽しめることでしょう。

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